井出草平の研究ノート

発達障害

アスペルガー症候群という用語はもう完全に捨ててしまうべきなのだろうか?

『総説 アスペルガー症候群』にあるウィングの論文の締めの部分。アスペルガー症候群の概念が広がるきっかけをつくったウィングが回顧をしている。 本章の初めに述べたことに今一度立ち戻るならば、皮肉な言いかたに聞こえるかもしれないが、1981年の論文で…

特別支援教育と広汎性発達障害のこれから

イベントの告知です。徳島大学で話をさせて頂くことになりました。 日 時 : 平成20年10月18日(土) 13:30〜15:30 場 所 : 徳島大学 常三島キャンパス 総合科学部 1号館 3階 301教室 講演者 : 井出 草平(いで そうへい)氏 コメン…

非言語性学習障害症候群の特徴

非言語性学習障害は概してアスペルガー症候群に似た特徴を持っている印象を持つが、アスペルガー症候群の臨床像とは異なっているのは音韻処理障害においてである。視空間認知スキルと身振りによるコミュニケーションには問題があるが、言語能力は比較的保持…

広汎性発達障害や自閉症スペクトラムは増えてはいない

広汎性発達障害と自閉症スペクトラムについて、世界各地で行われている疫学調査を年次を追う形でグラフ化*1。年を追うごとに、広汎性発達障害が増えている(支援制度が整ったのでどんどん発見されるようになった)ということが言われることがあるので、年次…

福岡・小1殺害 「育児に悩んでいた」

福岡・小1殺害は母親が犯人だったが、動機は「育児に悩んでいた」。そして、殺された富石弘輝くんは発達障害であったようだ。 弘輝君は軽度の発達障害があったとされ、小学校では特別支援学級に通っていた。同級生の母親は入学式の後のクラス懇談会で、あい…

山崎晃資「高機能広汎性発達障害の診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究」

広汎性発達障害と反社会的行動の科研報告書から。 山崎晃資「高機能広汎性発達障害の診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究」『高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成員の解明と社会支援システムの構築に関する研究』平成17年度 研究報…

国会議事録でのアスペルガー症候群の取り扱い

整理はまたのちほど。

自閉症は左脳、アスペルガー症候群は右脳の障害で連続的なものではない

自閉症は左脳の機能不全、アスペルガー症候群は右脳の機能不全。神経行動学上では同じ障害ではないと言われているようだ。このことは、自閉症からアスペルガー症候群などへ連続的に障害がつながると考える自閉症スペクトラムの考え方への反証になる。自閉症…

こういう状態であればアスペルガー症候群や自閉症を疑った方が良い

高機能広汎性発達障害―アスペルガー症候群と高機能自閉症作者: 杉山登志郎,辻井正次出版社/メーカー: ブレーン出版発売日: 1999/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (7件) を見る アスペルガー症候群や自閉症を疑った方がよい状…

最近読んだ本

ここ1週間ほどで読んだアスペルガー症候群関係の本。読んでも読んでも減らないのは気のせいか。ひきこもり本より多いのかもしれない。 アスペルガー症候群 教師として知っておくべきこと作者: マット・ウィンター,柏木諒出版社/メーカー: スペクトラム出版…

自閉症スペクトラム障害説は現実的ではないファンタジー

アスペルガー症候群歴史と現場から究める作者: 石川元出版社/メーカー: 至文堂発売日: 2007/09/26メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (3件) を見る 石川元氏・村田豊久氏・川原ゆかり氏の対談より。 石川 ウィング自体のアスペル…

軽度発達障害という言葉が広まるきっかけになった学会

杉山登志郎,2000, 「軽度発達障害」『発達障害研究』Vol.21, No.4 (20000331) pp. 241-251. 杉山登志郎,2000,「軽度発達障害」『発達障害研究』Vol.21, No.4 (20000331) pp. 241-251.(Webcat) 第34回日本発達障害学会研究大会報告 静岡大学教育学部 …

広汎性発達障害についての相談先

エイリアンの地球ライフ―おとなの高機能自閉症/アスペルガー症候群作者: 泉流星出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る 広汎性発達障害を抱える妻が、夫の視点から書いた本。1冊…

アスペルガー症候群の暴力性

この論文は、以前に発表された論文の中でアスペルガー症候群の暴力性を取り扱ったものである。 M. Ghaziuddin, Luke Tsai, N. Ghaziudd,1991, Brief report: Violence in asperger syndrome, a critique Journal of Autism and Developmental Disorders, Vol…

広汎性発達障害の有病率と英国自閉症協会(NAS)

Fombonneのコメンタリ。1997年の記事。NAS(英国自閉症協会)が声明として出した自閉症スペクトラムの有病率についての検討をしたもの。 Eric Fombonne Prevalence of Autistic Spectrum Disorder in the UK Autism, Vol. 1, No. 2, 227-229 (1997) http://aut…

ノースダコタの広汎性発達障害の疫学調査

アメリカのノースダコタの広汎性発達障害の疫学調査。 BURD, LARRY,FISHER, WAYNE,KERBESHIAN, JACOB,1987, Prevalence Study of Pervasive Developmental Disorders in North Dakota. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatr…

ICD-10 F84 広汎性発達障害

ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン作者: 融道男,小見山実,大久保善朗,中根允文,岡崎祐士出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2005/11/01メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 110回この商品を含むブログ (4件) を見る 世界保健機関(WHO…

岡島美朗「鑑別診断 人格障害」

岡島美朗,2007, 「鑑別診断 人格障害 (特集 アスペルガー症候群--病因と臨床研究)」 『日本臨床』65(3) (通号 910),502〜505. アスペルガー障害とパーソナリティー障害についての論文。 発達障害は発達が通常とは異なると言うことなので、発達段階をみて…

アスペルガー症候群の薬物療法

山田佐登留,2007, 「薬物療法 (特集 アスペルガー症候群--病因と臨床研究)----Pharmacologic treatment of Aspereer syndrome」 『日本臨床』65(3)(通号 910),522〜526 アスペルガー症候群への薬物療法についての論文。大筋では、これと言って有効な薬物は…

広汎性発達障害やアスペルガー症候群はいつから注目され始めたのか?

2000年に起こった豊川市主婦刺殺事件(17歳の犯罪。「人を殺してみたかった」と動機を述べた事件)を切っ掛けに、アスペルガー症候群という概念が広まったとされている。時期としては2000年に入ってからのことである。このことをグラフで示してみた。 …

オーストラリア版・アスペルガー症候群の診断基準

オーストラリア版・アスペルガー症候群の診断基準(『ガイドブック・アスペルガー症候群』−親と専門家のために− トニー・アトウッド著 東京書籍) DSM-IV-TRのアスペルガー障害の診断基準はこちら。オーストラリア版の方が問診に使いやすそうだ。ひきこもりと…

行政で「軽度」発達障害という用語が使われなくなった理由

軽度発達障害は「軽度」な訳ではない、本人の生きづらさは軽度ではない、というようなことから「軽度」発達障害という言葉は不適切であると言われることがある。行政が軽度発達障害という言葉を使わなくなった理由は、そういった批判が受け入れられたのかと…

少年は「アスペルガー症候群」 岡山駅突き落とし事件で簡易鑑定

少し前のニュース。 JR岡山駅のホームで岡山県職員、仮谷国明さん=当時(38)=が突き落とされ死亡した事件で、殺人と銃刀法違反の非行事実で家裁送致された大阪府大東市の少年(18)が、岡山地検の簡易精神鑑定で広汎性発達障害の一種「アスペルガー…

アスペルガー概念の余命は長くない

『発達障害という記号 (メンタルヘルス・ライブラリー)』における高岡健の発言より。 アスペルガー症候群が十分に確立された概念かどうかについては、学会の論理としては保留されています。私の予想では、この言葉は早晩、違う言葉に置きかえられるだろうと…

高校・大学における軽度精神遅滞・学習障害

メモ。報告書と論文1つずつ。 佐藤克敏 「軽度知的障害及び学習障害等のある生徒に対する後期中等教育段階の支援に関する研究」 http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-130.html http://ja-tec.com/C/C53/content66272.html 内野智之・ …

藤川洋子「少年犯罪と軽度発達障害--家裁調査官の視点から」

藤川洋子,2007, 「少年犯罪と軽度発達障害--家裁調査官の視点から」 『現代のエスプリ』(474),218〜224 広汎性発達障害と犯罪の関係についての論文。他の2本の要約。 少年犯罪の中における広汎性発達障害の割合である。 ・広汎性発達障害が診断、もしくは…

発達障害という記号

発達障害という記号 (メンタルヘルス・ライブラリー)作者: 松本雅彦,高岡健出版社/メーカー: 批評社発売日: 2008/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (7件) を見る 新刊。未読。注文中。

アメリカニュージャージー州の自閉症スペクトラムの疫学調査

J Bertrand, A Mars, C Boyle, F Bove, M Yeargin Prevalence of Autism in a United States Population: The Brick Township, New Jersey, Investigation Pediatrics, 2001 - Am Acad Pediatrics http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstra…

イギリス統計局による広汎性発達障害の有病率

Office for National Statistics, 2004, The Mental Health of Children and Adolescents in Great Britain.(PDF) イギリス国家統計局(Office for National Statistics)の報告書にある広汎性発達障害の有病率。この報告書では1万人に30人という有病率を示し…

不登校に含まれるアスペルガー障害の割合

塩川宏郷,2007, 「不登校と軽度発達障害--アスペルガー障害を中心に」 『現代のエスプリ』(474),205〜211. 不登校のうち6%にアスペルガー障害の診断名が付いたという論文。 また、アスペルガー障害の方を見ると、アスペルガー障害のうち3割が不登校状…