井出草平の研究ノート

ひきこもりの犯罪率

上山和樹さんが本田由紀さんの「ひきこもり」の扱いについて思うところをおっしゃっています(id:ueyamakzk:20060209)


ここでは補完的エントリを。

ひきこもり当事者の犯罪発生率は一般に比べて極端に低い


「ひきこもり」の犯罪については『ひきこもりガイドライン*1に参照できるデータがある。


ガイドラインによると、「ひきこもり」における非行・触法行為は全体の0.7%[n=23]であるという。「ひきこもり」と比べるデータは若年の犯罪率が良いような気もするが、最近は「ひきこもり」も高齢化しているので、全体データで比較してみよう。


警察庁警察白書』平成17年度版によると、刑法犯数は2186.6万人で、日本の総人口は127619万人であるので、犯罪率は1.7%ということになる*2。また、殺人以外の犯罪では「暗数」*3と言って犯罪が起こっていても、実際に事件にならないものが膨大に存在しているので、実際の犯罪率は、この数値よりもはるかに高い。


一般=1.7%
ひきこもり=0.7%


数字から「ひきこもり」と犯罪の関連性が非常に低いことがわかる。むしろ、なぜこれほどまでに低いか?ということが問われるべきであろう。

*1:厚生労働省『10代・20代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン』(2003年)

*2:一人で複数の犯罪を犯している者はここでは考えない

*3:殺人は死体が出るので実際に起こっている事件と警察が取り上げる事件の間に齟齬はあまり無い。一方、軽犯罪では事件化しないものが非常に多い