井出草平の研究ノート

「「やりたいこと」二分法によるフリーター観」

鵜飼洋一郎「「やりたいこと」二分法によるフリーター観」
http://risya.hus.osaka-u.ac.jp/research/ch9.pdf(PDF)

2004年度の大阪大学によるフリーター調査の報告書の1章。


この論文の位置づけとしては、質的調査に基づいた先行研究である下村英雄 「フリーターの職業意識とその形成過程」の量的実証である。


下村論文のインプリケーションの確認。

  1. フリーターの多くは世間の厳しい視線を意識しているが、反発も抵抗もせず、それを甘受している。
  2. 世間のこのような「フリーター観」に対応する形で自らもネガティブな視線を「フリーター」に向けている。
  3. その上で、「そんなフリーターばかりではない」事を指摘して、ネガティブなフリーター観を相殺しようとする傾向がある。その際に特徴的なのが「良いフリーター」と「悪いフリーター」という二分法でフリーターを捉える視点である。その際、分水嶺となるのは「やりたいことがあるか否か」である。


この先行研究の実証が鵜飼論文ではなされている。

以上、「良いフリーター」「悪いフリーター」をめぐる二分法について分析と考察を加えてきた。大方の結果は下村論文の仮説をなぞるものになったが、それに加えて、この二分法が必ずしもフリーター独特のものではなく、似たような形で世間一般に共有されている


驚くほど、きっちりと明確な結果が現れている。また、

「派遣・契約」の男性の就労者に関しては正規雇用の就労者に近い意識を持っている可能性があることが確認された。


パートアルバイトに比べて、派遣・契約の男性社員は正規雇用の就労者に近い意識をもっている。ジェンダー差があられれているのは非常に興味深い。


鵜飼洋一郎さんはmixiでこんなコミュもやっておられる。

下流社会』はトンデモ本http://mixi.jp/view_community.pl?id=454992


コミュの管理人として非常に活躍されてれてる。複数のコミュの管理人&立てた後は放置の自分としては見習いたいところ。「統計エンターテイメントだから、データは適当でもかまわないのでは?」というトピックとかガチ。ちなみに、「下流化は全く進行していない」というのは三浦展が使ってるデータそのもので三浦の立論を一部は反証可能だ(id:iDES:20060221)。


内閣府の調査設計もどうしたものかと思うけども、何にしろ「意識」項目は厄介厄介。