細金奈奈・生田憲正,「摂食障害の薬物療法」,『こころの科学 No.116』2004.7,64-7.
摂食障害に対して薬物療法を用いる場合、以下の目的に応じた効果が期待される。①摂食障害の症状そのもの、つまりAN*1に対しては摂食量を増加させ体重を正常範囲内に回復させる、BNに対しては過食のエピソードをなくすなど、食行動に直接働きかける、②不眠、不安、抑うつ気分、強迫症状などの精神的な随伴症状や合併症を改善させる、③治療関係を促進し、精神療法や行動療法への導入を容易にする、などである。摂食障害において①の目的において日本で承認されている薬物はなく、主に②と③の目的で薬物療法が行われているのが現状である。
しかし、AN*2の薬物療法に関する対照化試験はいくつか行われているが、いずれもANへの効果は期待できないという結論であった。
−−Attia, E., Haiman, C., Walsh, B.T., et al. :Does fluoxetine augment the inpatient treatment ofanorexia nervosa? Am. J. Psychiatry, 155: 548-551, 1998.
フルオキセチンは無効であったと結論づけている。
APA*3の摂食障害の治療ガイドラインでも有効な薬剤はないとしている。他の治療法によって、できる限り早期に栄養状態の改善や体重を増加させるほうが効果的であると思われる。
拒食症には効く薬はないとのこと。
BN*4に関する向精神薬療法の研究は多い。また、AN*5と異なりBNにはいくつか有効とされる薬剤が存在し、日本ではBNの治療薬として承認されている薬剤はないが、諸外国では、フルオキセチンが承認されている。
わが国で使用可能かつ効果の示されているSSRIがフルボキサミンであるため、現時点のBNの治療では第一選択薬になると言える。
過食症には効く薬がある。日本ではフルオキセチンが良いが認可されていないので、フルボキサミンが次善策。
まとめ。