井出草平の研究ノート

亢進


「亢進」というのはあまり聞き慣れない言葉だ。大辞林によると「(感情・脈搏(みやくはく)・病状などが)たかぶり進むこと」となっている。

活動性亢進は、過食期よりも拒食期によく見られます。なぜ活動が亢進するのかといった理由には、次の三つの要因が考えられています。第一番目は、過剰な運動を自分に課することによって体重減少を目指すためです。食後に嘔吐したり、下剤を乱用する行動とよく似た面があります。このような行動は、〝食べ物で汚れた自分を浄化したい″という心理状態から生じるため、浄化行動(パージング行動)と呼ばれています。活動性亢進も一種のパージング行動と見なすことができます。
第二番目は、活動性亢進は低栄養状態によって引き起こされた身体症状の一つと考えられます。飢餓状態になると落ち着きがなくなり、動き回る傾向がでてくるのです。
第三番目は、心理的に焦燥が高まるため、じっとしていられないで活動性が亢進すると考えられます。たとえば、ある患者さんは「動き回っている時だけ、食べ物のことを考えずにすむから」と話しています。彼女の頭の中は食べ物のことでいっぱいですから、動き回って他に注意をそらすことが、食べ物から離れる唯一の方法となっているのです。(生野照子・新野三四子『拒食症・過食症とは―その背景と治療法 専門家・家族・本人の協力で克服へ』58頁)


摂食障害で言われる「亢進」は「活動が活発になる」という意味のようだ。「活動性亢進も一種のパージング行動と見なすことができる」というのは非常に示唆的。普通のアクティブになっているわけではなく、浄化せんがために脅迫的に活動が活発になっていると見なす必要があるとのこと。