食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍

食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍 【大阪】 
朝日新聞1993年10月18日 朝刊

一方、神戸女学院大の生野照子教授(心身医学)は「今の若い人は、豊かな環境に甘えて『成熟拒否』の傾向が強い。でも、大人の『よい子にしていなさい』という要求にこたえ続けるストレスも大きい。リラックスできない分、お菓子を食べることでくつろぎを得ているのではないでしょうか」と話している。


「よい子にしなさい」のストレスをお菓子で発散している説。




食事代わりにお菓子 大学生協売り上げ、3年で1.5倍 【大阪】


 大学で「お菓子」が売れている。大学生協の菓子売り場は広がる一方で、ガムやアメを口にして授業を受ける学生も多い。ここ三年間で売り上げが一・五倍になった大学もある。「主食」感覚なのか、菓子で栄養を取ろうとする学生も多く、「栄養表示をして欲しい」という要望も増えている。
 
 東大阪市近畿大本部にある大学生協。昼過ぎ、ポテトチップスやアメ、ガムを並べた棚の前が、昼食を終えた学生でにぎやかになる。「それ甘過ぎるわ。こっちにしとこ」。ノートやフロッピーを買うついでにアメを取って行く学生もいる。レジに並ぶ学生の大半が菓子を手にしていた。
 「ちょっと口寂しいんで、その辺をブラブラしながら食べようと思って。買うのは週二回くらい」とラムネ菓子を手にした商経学部三回生の男子。「お金がないので、今日は食事代わり」と二回生の女子は「カロリーメイト」のフルーツ味を買った。
 この生協では今年、菓子用の棚を二列から三列に増やした。二百種類以上の菓子が並び、一日千個も売れる。「男の子も甘いものをどんどん買う。最初は不思議やったんですが」と峰垣多喜子副店長。
 昨春、大学の移転に伴って売り場を一新した大阪教育大生協(柏原市)では、菓子の棚を五倍に増やした。文房具の棚は一・四倍にしか増えていない。
 学生が菓子を食べながら授業を受ける風景も珍しくない。今春、関西学院大に入学した女子(一九)は「隣に座っている友だちからアメやガムをもらって食べる。入学したころはジュースやお菓子を堂々と食べている人に驚いたけれど、今は罪悪感もありません」。
 大学生協京都事業連合の統計によると、京都、滋賀、奈良にまたがる同事業連合加盟の十二大学で、菓子の売り上げは八九年の一億四千三百万円から九二年には二億一千七百万円に一・五倍以上に増えた。
 栄養補給を売りものにした「カロリーメイト」「ポケメシ」「ザ・カルシウム」などがよく売れ、同事業連合が設置している投書箱には「菓子の栄養表示をして欲しい」との要望が多くなっている。「CMの影響もあるのか、菓子で食生活の偏りを正そうとする傾向も見られる」と菓子の仕入れを担当している吉井規子課長代理は話す。
 女子栄養大の足立己幸教授(食生態学)は「ここ十年ほど、子供の間では『食事』と『おやつ』の垣根がなくなっている。その世代が大人になり始めた。食事は本来、いろいろな世代の人と交わる場だったはずだが、このような食生活では同世代の狭い人間関係しか持てなくなる」と指摘する。
 一方、神戸女学院大の生野照子教授(心身医学)は「今の若い人は、豊かな環境に甘えて『成熟拒否』の傾向が強い。でも、大人の『よい子にしていなさい』という要求にこたえ続けるストレスも大きい。リラックスできない分、お菓子を食べることでくつろぎを得ているのではないでしょうか」と話している。

1993年10月18日 朝刊 2社 024 01177文字