中井義勝「摂食障害全国疫学第二次調査と市民対象の頻度調査について」

中井義勝,
「摂食障害全国疫学第二次調査と市民対象の頻度調査について」,
厚生省特定疾患対策研究事業,
『中枢性摂食異常症に関する調査研究』平成11年度研究報告書

次に最近5年間に受診した摂食障害患者254例につき、その社会的地位を病型別に検討した(図2)。ANの50%は中学・高校生であった。一方BNの10%が中学・高校生で、残りは大学生および有職者または主婦であった。
しかし初発年齢を見ると、ANとBNいずれも12歳から増加し、そのピークは16歳であった(図3)。この結果から、ANは発症後比較的早期に病院を受診している。しかしBNは発症後病院を受診するまでに相当時間を経過していることか明らかとなった。その原因を明らかにする必要がある。



このデータでは16歳が発症のピークである。二峰性は確認できない。
詳細に読むと、拒食症(無排出)が14歳16歳18歳で多く最頻値は16歳。拒食症(過食)は16歳、17歳が多い。過食症に関しては18歳だけが異様に多い。
拒食(無排出)18歳と過食の18歳の数の偏りが気になる。この歳に特徴的なものが何か関わっているのかもしれない(特に過食に関して)。


それはさておき、DSM-IVには以下のような記述があった。

神経性無食欲症の発症時の平均年齢は17歳であるが, 14歳と18歳に二峰性のピークがあることを示すデータもある.この障害が40歳以上の女性に発症することはまれである.(DSM-IV)


該当箇所の英語記述(たぶん)

The mean age at onset for Anorexia Nervosa is 17 years, with some data suggesting bimodal peaks at ages 14 and 18 years. The onset of this disorder rarely occurs in females over age 40 years.


国際比較で現れ方が違うということになるのか、日本でも二峰性のピークを示すデータがあるのか。どちらにしろ興味深いので、引き続きデータ探しは必要。


英語文献だとこういうのが引っかかった。

Halmi K, Casper R, Eckert E, Goldberg S, Davis J. Unique features associated with age of onset of anorexia nervosa. Psychiatry Res. 1979;1 :209-215

The onset is most frequent during the adolescent years (bimodal distribution with peaks at 14.5 and 18 years
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/full/114/6/1574


DSMはsome data suggestと言っているのでこれ以外にも恐らくあるのだろう。


こんなのもひっかかった。

The prevalence of AN in the US is 0.5% to 1% among adolescents.[2] There is a bimodal pattern of onset, with peaks at 13 to 14 years of age, and then later at 17 to 18 years of age. In adolescents, the disease is observed almost exclusively among females (90%-95% of cases.[3] The incidence of BN is about 3% among adolescent girls and as high as 10% in college women.[4] The peak age of onset is between ages 13 and 20 years.

番号が振ってあるところがいまいちよく分からないが、該当論文はこれだろうか。

Bryant-Waugh R, Lask B. Annotation: Eating disorders in children. J Child Psychol Psychiatry. 1995;36:191-202.


上の数字と微妙に違う(14.5歳と13-14歳、18歳と17-18歳)けれども、二峰性を示していることは共通している。文献の年代が違うのが原因なのかもしれない(上は1979年、下は1995年)。とすると、低年齢化しているということなのか?


ともあれ、ウェブで二峰性についての記述が引っかかるというのは、アメリカではこの様態がわりと広く知られているのであろう。


中井義勝の論文に戻る。

 1970年代の患者は良家の子女で、母親の過保護・過干渉の結果、セルフ・アイデンティティが確立できず、食べ物を摂らないで極度にやせるAN、いわゆるclassical typeが中心である。1975年以降日本の経済力が飛躍的に向上した。この頃に、このclasscial typeのANは急に増加したが、その後このtypeのANは増加していない。
 1980年以後増加しているのは一つにはうつ病性障害、人格障幸、強迫性障害などの関連疾患comorbidityを有する摂食障害である。もう一つは、身体イメージ異常や食行動異常かANやBNとはいえず、健常人と境界不鮮明な摂食障害すなわち特定不能の摂食障害(EDNOS)の増加である。
 以上をまとめると私の診た摂食障害854例を検討した結果、最近の摂食障幸の特徴として、1.神経性大食症が増加している、2.comorbidityを有する摂食障害が増加している、3.非定型の摂食障害が増加していることの3点か挙げられる。


摂食障害と一口に言っても、現れ方が時代によって異なってきているという指摘。非常に重要。


その他、一般への実態調査も実施されている。

 摂食障害の実態調査は京都府下の中学生女子192人、高校生女子3914人、高校生男子1293人、女子短大生214人を対象とした。自記式質問紙と養護教諭を介する面接により摂食障書の実態調査を行った。神経性食欲不振症(AN)は体重率が85%以下で無月経かつ摂食態度調査表(Eating Attitude Test 以下EA-26)が20点以上の者と定義した。神経性大食症(BN)は、大食症質問表(BulimicInvestigatory Test Edinburgh 以下BITE)の症状評価尺度20点以上、重症度尺度5点以上、重症度尺度の設問項目で大食が週2回以上ある者と定義した。EATとBITEがそれぞれANとBNの実態調査に有用であることは既に報告した。


医者の診断が出来ない調査票では、EA-26やBITEなどのスコアを使うようだ。有用性を指摘した文献はどうやらこれらしい。一応、チェックか。

中井義勝・濱垣誠司・高木隆郎,1998,
「大食症質問表Bulimic Investigatory Test.Edinburgh(BITE)の有用性と
神経性大食症の実態調査」,
『精神医学』40:711−716.