榊明彦「気持ちを吐きだしたら「お腹いっぱい」になった--摂食障害をのりこえる第一歩」

榊明彦,2005,
「気持ちを吐きだしたら「お腹いっぱい」になった--摂食障害をのりこえる第一歩」
『精神科看護』 32(6),24〜27


気になるタイトルだったので、相互利用で取り寄せてもらう。

 彼女の鳴咽はしばらく続いた。1時間ほど泣きつづけたあと,彼女は私にこういった。「なぜ私の苦しさを理解してくれないの。先生も看護師も誰もわかってくれないじゃない」。

 彼女は,なぜ自分がこんなにがんばらなくてはいけないのか,苦しみに耐えなければならないのか,私を助けてほしいと訴えかけ,休むことを許されない息苦しい家庭であったことを話しつづけた。

 30分程度話した後,彼女はいう。「話したらお腹いっぱいになっちゃった。これで眠れそう」。私は,話すことで満腹になるという表現をどう解釈したらよいのかわからないまま,彼女の就寝を促す。


冷静なエビデンス有りの論文はサクサク読めるが、こういうものはなかなか読みすすめられないし、お腹にドンとたまる感じがある。

父親,母親,あるいは人の期待に対して,裏切ってはいけない,だから自分はいわれたことを忠実に守り,がんばらなければいけない。、それが彼女が育った家の暗黙のルールだった。不眠を訴えた日の「話したら,お腹いっぱいになっちゃった」という彼女の言葉の意味を考えると,“暗黙のルールを破って,自分の考えを誰かに伝えたら満腹感(満足感)が得られた”と理解することができる。なんとも不思議な表現ではあるが,彼女にしてみれば,このルールを破ることこそが,生きづらさを脱する一歩だったのだろう。


「ルール」という言葉は社会学では「規範」というものになる。「規範」というものを考えると、家族の中で「規範」の役割をするのは父親摂食障害では父親の役割というものが注目されている訳だが、それは家族の神話のエレクトラ云々ではなくて、社会的な「規範」の話に他ならないのではないかと思う。