井出草平の研究ノート

小牧元ほか「日本語版The 20-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20)の信頼性,因子的妥当性の検討」

小牧元・前田基成・有村達之・中田光紀・篠田晴男・緒方一子・志村翠・川村則行・久保千春,2003,
「日本語版The 20-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20)の信頼性,因子的妥当性の検討」
『心身医学』43(12),839-846.


アレキシサイミアの尺度であるTAS-20の日本語版の信頼性に関する論文。
ちなみに、日本語版そのものはこの論文には載っていない。


過去の「アレキシサイミア」についてのエントリはこちら。

アレキシサイミアとは語源的には「感情の言語化障害」という意味であるが,具体的には(1)自分の感情や身体の感覚に気づいたり,区別したりすることが困難であり,(2)感情を表現することが難しく,(3)空想力に乏しい,また(4)自己の内面よりも外的な事実へ関心が向かう(機械的思考),などの心理的特徴を指している.

健常群では全項目に対するα係数はほぼ満足するものであった.ただし,各因子のα係数は,それぞれF1,F2はほぼ満足するものであったが,F3は低値であった.患者群も同様であった.


日本語版TAS-20には、第3因子である「外的志向」(機械的思考)の一貫性にどうやら問題がある。

年齢とTAS−20総得点の関係については(中略)各年代間に統計的に有意差はなかった.一方,患者群では(中略)若年層が著明に高値を示し,有意差が認められた.


患者群にのみ年齢で差異が起こっている。

今回のわれわれの結果では,患者群ではわずかながら女性が高値であったが,健常群では有意差はなかった.

他方,アレキシサイミアと教育歴との負の関連が従来報告されている.今回健常群の教育程度をみると,中学卒業がわずかにみられた(6.6%)以外は,全員専門学校および高等学校卒業以上の学歴を有しており,教育歴での差は検討できなかった.


学歴に関しての指摘はこちら


ちなみに上の方はイタリア翻訳で、下の方はインドでのヒンズー語の信頼性についての論文。


小牧らの以前にTAS-20を日本語化している論文がある。