井出草平の研究ノート

ルポ 摂食障害と歩む--発症と同時に回復は始まっている

上村悦子,2005,
「ルポ 摂食障害と歩む--発症と同時に回復は始まっている」
『婦人公論』 90(16),46〜49.


前々から聞いていた婦人公論の記事。


生野照子氏についての記述。

「食欲は生きる原点ですからすごく強いし、身体もやせることを強力に防衛するので、無理なダイエットをしても途中で失敗するのが普通です。ところが、身体が変化する思春期や、人生の曲がり角でうまく曲がり切れなかった場合、あるいは、経済的な破綻や家族の不幸などでストレスが重なった時、それらの問題から逃れるためにダイエットにのめり込む力が出てきて、突き進んでしまうことがあるんです」

特に、発症が低年齢化しつつある子どもの場合は、ダイエットに加え、〝いい子″で何事も頑張りすぎる性格や、学校や家庭でのストレスが重なった時とされでいる。

 専門医として、生野医師も強調する。
「治り方はケースバイケースですが、治る病気と断言できます。ただし、難しいのは、精神面と身体面の症状に加え、拒食や過食をはじめ、病気が長期化することで起こる引きこもりや家庭内暴力自傷行為などの行動面、この3つが、お互いに影響を及ぼし合って悪循環となること。

この病気は(中略)そうするべきだと周囲から期待されてきた人に多いんです。だからこそ、治ると考え方に幅や融通性が出て、すごく強くなる。

日本が世界でも有数の豊かな国なのに、なぜ「生きにくい」のかという問題である。


以下は小池明子氏の記述。

 アロマセラピーを行う「ル・クール」代表で、回復支援グループ「E.D.Labo」を運営する小池明子さん(37歳)。(中略)今ほど情報がなく、自分が摂食障害だとは気づかなかった。拒食状態は2年と長引き、拒食症特有の潔癖行動が続く。身体はガリガリなのに、頭の中は「今のスタイルを変えられない」という思いのみで、朝6時に起きて掃除をし、雨でもジョギングに行き、小さいパン一つの朝食を摂る。12時きっかりに100グラムのご飯と野菜の煮物、6時にまた少ない夕食・…‥1分でもずれるのがイヤだった。
 大学卒業後、フランスに語学留学したものの、場所が変わったことがストレスとなり、食べ物を受け付けなくなって帰国する。

辛さを乗り越える力が育ち始めた。症状は1年ほどかけて徐々に軽減していき、誰といても楽に、何でも話せるように変わっていった。並行して、心理カウンセラーの免許を取得。摂食障害の人たちをサポートするカウンセリングを始めると共に、同フロアでアロマテラピーの学校を経営するまでになった。2年前には双子の女の子を出産し、今ではバリバリのキャリアママである。

 今では摂食障害になってよかったといい切る小池さん。
「十数年の幸い体験がなかったら、人に対して不信感を持ち続け、人生を楽しむことも知らなかったはず。今は入っていいなと思うし、人との関係で癒されることを実感できるんです」