JMM「医療の産業化」その2


前回取り上げた読者投稿の後の寄稿家のものから。

 日本の医療は、病気や怪我などを治療するというサービスを提供する産業です。それは、国民医療費を見ると、平成18年度で35兆円支払われるといわれ、名目GDP比約7%を占めるほどの規模になっています。同時に医療・福祉関係者が、医師26万人を加え、看護士や福祉介護士を含めると578万人(9月発表の労働力調査8月分)と、全就業者6427万人の約9%も占めていることを考えると、十分大きな産業であるといえましょう。

津田栄  :経済評論家


国民医療費はGDP比約7%。ただ、これは前回指摘があったように、先進国の中では、少ない方から2番目である。

 しかし、今抱える医療の問題は、医師そのものの不足であり、医師や病院の偏在による医療の格差であり、休みも取れない医師や看護士の勤務状況などです。この小論は、こうした問題を解決する回答にはなっていません。むしろ、この小論は、財政健全化を図るために書かれたものです。そのために、立ち遅れている非製造業、なかでも公的関与の強い医療・教育・農業(食料)などの分野を市場原理にさらして生産性を上げて一段と効率的な産業に引き上げ、日本経済の成長に寄与させ、一方でこれ以上の財政負担を回避したいという意図が明らかです。


 今問題なのは、まず医師や看護士の勤務に厳しいものがあり、特に病院の勤務医や看護士は、私の入院経験からみても、十分な休みがほとんど取れない、過酷な勤務状況にあります。それは、ボランティアに近いものかもしれません。それは医師の絶対的な不足が要因ともいえます。厚生労働省は、財政負担が増えるからという理由で、20年以上前から医師の増加を抑制しています。その結果、OECD平均で見ても国民全体に抱える医師数は少なく約1.5倍の差まで開いています。つまり、日本では医師一人で見る患者数がOECD平均よりずっと多く、医療の高度化、インフォームドコンセプトへの対応により医師の負担、それを補助する看護士の負担は、想像以上に厳しいものといえます。そのためか、医療事故が発生し、国民の医師に対する信頼も揺らいできています。


 また、次の問題として、研修医制度の導入により、医学部卒業・医師国家試験合格後、新人医師が卒業した大学などの特定の医局に入らずに、自由に研修医として病院を選択して7部門の専門を経験できることになり、研修医が地方に残らず、都市部、それも東京など大都市部の労働条件のいい病院を選ぶと同時に、専門領域も仕事上厳しい小児科や産婦人科などを嫌い、内科や外科などに集中する方向にあることです。医局支配を打破するために新人医師に研修病院を自由に選択できる、この研修医制度は、一種の市場原理に近いものですが、結果的に、病院の地域間、専門領域間における格差、偏在という重大な問題を引き起こしています。


津田栄  :経済評論家


医者不足の問題についての指摘。

 医療サービスの供給力増大による価格低下のために、最も重要なことは、医者の供給を増やすことではないかと思います。医学部の定員は、現在の三倍くらいでいいでしょうし、医師免許についても多様化を図るべきではないでしょうか。具体的には、簡単な医療行為が出来る医師、特定の分野で高度な医療行為が出来る医師、の二種類の免許があっていいのではないかと思われますし、特に前者の供給は大いに増やしていいと思われます。もちろん、実習を伴う二年ないし三年くらいの集中的な教育は必要でしょうが、簡易レベルの医師になることは、「ファイナンシャルプランナーになるよりも少し難しいが、(今の)弁護士になるよりもずっと簡単だ」といったレベルでいいのではないでしょうか。但し、医師免許は、上級の免許も含めて、定期的・継続的に教育とテストを受けて更新が必要になるような手続きが必要でしょうし(運転免許でさえ書き替えがある)、医師の治療実績のデータ公開(これは法令による義務づけが必要)と、医師の力量を判定する格付けサービス(民間会社で十分)を発達させるなど、患者側が医師を選ぶことができるような情報サポートを発達させる必要があるでしょう。


 もちろん、医師の絶対数の増加に加えて、株式会社形式での病院経営の包括的許可、保険診療自由診療の混合(いわゆる「混合診療」)の許可、さらに医薬品に関する一層の競争促進、といった、経済的にはごく当たり前の規制緩和を行っていくことが望ましいのではないかと思われます。

山崎元  :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員


医学部の定員を3倍案。一級二級と資格を作って、二級を増員すべし案。

 ところで、医療の産業化の中で、「経営」という要素が注目されていますが、これを短絡的に「営利主義」と見なすことは、誤りのように思います。経営学の考え方が、医療機関が医療サービスの受給者や地域社会の健康を最大化する目的を達成するために、組織や資源を効率的に配分管理し、人を動機づける上での指針として有効に役立つことも期待できるでしょう。

金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務


競争原理を入れることによって、良くなる所もあるという意見。

 国立大学が独立行政法人となり、財政的に独立することが強くもとめられる状況下、大学病院も自らの持つ医療技術を放出してベンチャービジネスをたちあげ、収益ビジネスにつなげようするのが流行のようです。大学発ベンチャービジネスの大半は、この類の狙いをもったバイオ・医療ベンチャービジネスです。また、日銭を稼げそうな診療科目を立ち上げるという方法もあるようです。すでに98年には東京大学の付属病院の形成外科には美容外科外来ができています。この類の活動は、事業リスクはありますが独自の財源を確保することにつながりますから、最近では大学や病院の格付けや評価にも直結することになります。

杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務


医療の自由化に向けての医療側の対策。
これに関しては、「ひきこもり」「摂食障害」でもいろいろと問題は起こるのだと思う。