館哲朗「摂食障害とひきこもり」

館哲朗,
「摂食障害とひきこもり」
『精神療法』 26(6) :39-45.


この論文は「摂食障害」と「ひきこもり」について扱ったものではなく、「摂食障害」の「ひきこもり」について扱ったもの。非常にややこしい。

Stroberら(1982)は摂食障害患者の両親に対するMMPIの結果として,神経性無食欲症制限型の父親は社会的交流を避ける傾向があり,母親は同様に内向的で社会恐怖的傾向が強いと報告しているが,筆者も同様の臨床的印象をもっている。つまり,神経性無食欲症の家族寮法でよく感じるのは,親は子どもの小さいうちから不断に「外には恐い人が多いんだよ。おまえのことを一番わかっているのは家族なんだよ」というメッセージを伝えているように思われることである。その結果として,娘は思春期になって同世代の仲間との間で,親以上に親密な関係を育てることができないのではないかと思われる。


拒食症の父親・母親は社会を回避している傾向があるとのこと。「家族」というものを閉じること、家族内の役割を強固に固定することが拒食症に影響を与えると言うことか。


以下は事例の抜き出し。

春子は「自分は必要な食事の量を考え,食べようとしているのに,母親が干渉するから,自分を信じて任せてくれないから,食べられなくなる」と言い,自分は自律的な人間であると主張したが,最後には母親が娘の死を恐れて介入し,保護してくれることを知っていた。その限りでの自己主張であった。

母親は次のようなエピソードを話したことがある。小学校に入学したとき,毎晩春子は「8時に寝る」と言って学校に持っていくものを一人で用意し,ランドセルに詰め,玄関に置いてから,8時に1分でも遅れないように就瀬しようとした。そのとき母親は,「隣の部屋の姉の出す音がうるさい」と文句を言う春子に協力し,姉に注意して春子の思いを遂げさせたとのことであった。


物事を完遂する度合いがやはり高い。これは食事制限に限らず、何事にも共通しているのだろう。だいたいどんなことでも完遂してしまうからこそ、度を超えた食事制限も完遂してしまう。

神経性無食欲症はダイエットに成功した人たちで,その点で挫折はないし,また体型がもたらす自己像はポジティブ(自信がある,注目を受けている)なものである。多くは30kgになっても通学し,体育も休まず,むしろ自分の活動性を誇示する傾向がある。一方,過食症はダイエットに挫折し,自分自身を敗残者と感じていることが多く,決して肥満とは言えない標準体重前後の体型であっても恥じていることが多い。


よく分かる指摘。メンタル面で問題が生じるのはどちらかというと、過食か過食嘔吐型の方である。これは、セルフエステームの研究でも確認できる。(参照)


再び事例より。

夏子は「姉と違ってしっかりした娘」とみられていたが,大学に入学し,家を練れることを考えるようになったころから過食が始まった。そして念願のアパート暮らしがかなった後も過食は続き,その後過食と自己誘発性嘔吐を連日繰り返すまでに悪化し,ひきこもり傾向を強めて留年した。別居後1年半の問彼女は一度も自宅に帰らず,また過食を含めた窮状を親に知らせることもなかった。

治療では,食事習慣の回復においても,過食衝動を回避するための取り組みにおいても母親の協力を必要としたが,夏子は母親に棟ることに抵抗があった。たとえば,過食しそうになるとき,それを避けるために母親のところに行き,一緒に過ごすことがもっとも有力な方法と考えられたが,彼女はなかなか実行できず,自分の部屋で過食し続けた。「姉はしっかりしてない」とよく夏子に愚痴る母親をみて,彼女は『母親は私が一人で処理して,母親には頼るなというメッセージを私に伝えたいのだ』(assumption)と感じていたからである。また夏子の過食は,しばしば母親が外出してト生活のフラッシュバックに襲われたが,彼女は一人になることの心細さ(分敵不安)を自分の気持ちとして受け入れられず,むしろ「母親を頼る気持ちは卒業する必要がある」という気持ちを持ち続けた。当然のことながら,彼女は一人になると過食することを母親には話せなかった。

過食は家族一緒に食卓を囲む(家族団らん)という家族交流の場から一人の食事にひきこもるという社会性の問題としても定義できる。したがって,過食の克服は食事へのひきこもり(家族交流という次元での社会性の障害)の解決を意味するが,これがそれ以上の社会性(家の外での交流や活動性)の障害の解決につながらない場合がある。そうしたケースでは,過食やパージング行為の解決だけでなく,年齢相応の社会性の達成を目標とする治療アプローチが同時に必要である。

摂食障害に関する発達論的理解として,分離個体化期における母子関係の障害が注目されている(Brack, 1973 : Johnson, 1987 ; SelviniPalazzolli, 1978).


指摘の本は以下。

  • Johnson, C. (1987) The Etiology and Treatment of Bulimia Nervosa: A biopsychosocial perspective. Basic Books.(ISBN:1568213395 )
  • Bruck, H. (1973) Eating Disorder: Obesity, Anor exia Nervosa and the Person Within. Basic Books.(ISBN:0465017827)
  • Selvini-Palazzolli, M. (1978) Self-Starvation: From individual to family therapy in the treatment of anorexia nervosa. Jason Aronson.(ISBN:1568218222)

以下が結論。

本論において筆者は,摂食障害患者りひきこもりは分離不安に対する防衛の表現であり,神経性無食欲症の場合は密着した母親との関係への退行として理解できること,また神経性過食症の場合は依存をめぐる葛藤の抑圧が関係していることを述べた。


「母親」からの「分離不安」として拒食症が現れているという主張のようだ。