金吉晴ほか「若年者におけるひきこもり事例の有病率に関する予備調査」

金吉晴・堀口逸子・森真琴,2001,
「若年者におけるひきこもり事例の有病率に関する予備調査」
厚生科学研究費補助金(障害保健福祉総合研究事業〉研究報告書 平成13年度
『地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究(総括研究報告書)』


全文は以下
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/Download.do?nendo=2001&jigyoId=000163&bunkenNo=200100314A&pdf=200100314A0001.pdf (PDF)
……前半
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/Download.do?nendo=2001&jigyoId=000163&bunkenNo=200100314A&pdf=200100314A0002.pdf (PDF)……後半



以下はひきこもった切っ掛けについて



経験者全体
「学校」「仕事」そして「つらい出来事」が多い。体調はどちらかというと少ない。




現在ひきこもり状態の者
「学校」「仕事」よりも「つらい出来事」(おそらくPTSDであろう)が多いのが特徴




過去にひきこもりであった者
「学校」「仕事」が多い。「つらい出来事」が少なく、「体調」という身体的理由はゼロ。


サンプルが歪んでいないと仮定して、この3つの結果を鑑みると、「学校」「仕事」が理由でひきこもる場合は、比較的容易にひきこもり状態から離脱していると考えられる。なぜならば、過去経験に「学校」「仕事」が多く、現在に「学校」「仕事」が少なく、代わりに「つらい出来事」が多いということは、「学校」「仕事」はある程度離脱グループがいて、「つらい出来事」グループは継続的にひきこもり状態にあると解釈できるからだ。つまり、PTSDを持った「ひきこもり」は執拗に続くのではないかと思われる。


したがって、「いかに精神的ダメージを最小限にするか」という所が重要であることがわかる。そして、少々奇妙に思えるかもしれないが、「いかに精神的ダメージを最小限にしてしてひきこもることができるか」ということが一番重要である。「ひきこもり」は防御行動の一つであるから、「ひきこもり」を否定することは死ねと言うに近い。「自殺」の代わりに「ひきこもり」があるという位置づけである。


「ひきこもり」になるような怠け者は死んだ方がいいという人もいるようだが、個人的にはそのような考え方は受け入れられるものではないので「ひきこもり」へ最大限の肯定が必要だと思う。とはいえ、ひきこもり続けることは当人にとっては耐え難い苦しみであり、餓死の危険性や自殺、最悪のケースでは親を巻き込んだ心中が起こる。従って、ひきこもりを肯定するということは、ひきこもりには終わりがあり、社会への再復帰を含むものではなくてはならないと思う。


もし、PTSDを持った「ひきこもり」にとって社会復帰が困難ならば、「精神的ダメージを最小限にする」ことと「ひきこもること」が要請されるのだと思う。

過去ひきこもり群について過去のひきこもりがどのように終わったかについても質問した


“仕事に行き始めた”“学校に行き始めた”が多く、ついで“友人に助けてもらった”“家族に助けてもらった”“自分の気持ちで’が多かった。その他でも家族や学校の先生に励まされてという記述や将来のことを考えてひきこもりを終えたという記述が見られた。


ひきこもり状態からの離脱の「きっかけ」の傾向性はあまりないと思われる。事後的に「なぜかできた」としか言いようのないものではないかと思う。




対象は以下。

田川市が高校1年生から20歳代の2310名を対象に実施する健康調査に、ひきこもりについての質問紙(資料)を同封し、回収の上集計した。


定義は以下。

 ひきこもりの定義は「6ヶ月以上自宅にひきこもり、学校や仕事に行かない状態が続いている」とした。


精神障害」が原因であるかないかという区別はここではされていない。調査法が自己記入式なので、この定義は妥当な選択だ。

 調査対象者551名のうちひきこもり経験のあるものは21名(3.81%)であった。その内訳は現在ひきこもりの者(以下現在ひきこもり群とする)7名(1.27%)、過去にひきこもりであったもの(以下過去ひきこもり群とする)14名(2.50%)であった(図1).過去ひきこもり群の年齢は15歳以下が6名、16-18歳が5名、19歳以上が3名であった(表9)。

表10 家族以外への相談

家族以外に相談した 41.62%(n=10)
現在 71.42%(n=5)
過去 35.71%(n=5)


15歳以下5名のうち3名が教師に相談
現在は医師への相談が多い
その他
 会社勤務先(現在〉
 カウンセラー(過去)

 現在のひきこもりが1,27%、過去のひきこもりが2.50%であることは、たとえば精神分裂病統合失調症)の生涯有病率が約1%、時点有病率が約0.5%であることを考えると、やや多い数字であるが、対象が若年者に限られているため正確な比較は困難である。


統合失調症より「ひきこもり」の「有病率」(この表現には同意しかねるが)はやや高いと書かれている。



研究要旨

 福岡県出川市において、高校1年生から20歳代までを対象として、ひきこもりの有無に関する自記式の健康調査を行った。回収者のうち、現在ひきこもり状態にある者は1.27%、過去に引きこもっていた者は、2.50%であった。ひきこもりになるきっかけとしては学校や会社でうまく行かなくなることが多かった。ひきこもり群は一年前よりも元気・健康であり、ひきこもりから社会復帰するには学校や会社に行けるようになる以外に家族や友人のサポートの影響が大きかった。本調査は予備的調査であり、今後の詳しい調査が必要である。