平林理恵「ルポ・ホンネで語り合いたいから 不登校、ひきこもり、ニート--自立を願う親の集い」

平林理恵,2005,
「ルポ・ホンネで語り合いたいから 不登校、ひきこもり、ニート--自立を願う親の集い」
『婦人公論』90(19) (通号 1185),30〜33.


KHJ親の会などを取材した記事。

親たちは孤立化し、近所の目や世間体を気にして、子どもを家庭内に抱え込み、子ども同様ひきこもってしまうのだ。


家族で「ひきこもる」というのはよくある話で、これがあるからこそ、ひきこもりは維持される。

「親御さんには外へ出てきてほしいんです。ひきこもりは親の期待に応え、親に負担をかけまいと我慢した子に起こります。親がこのことを理解し成長することが子どもの復活には欠かせませんが、親の力だけでは難しい。仲間も必要だし、専門家との連携も欠かせません」


同じ悩み(子供がひきこもり)を持った人同士が集うのは必要なことだろう。

 さらに、周囲の無理解が高木さんに追い討ちをかける。
「育て方が悪い、甘やかしている、と親兄弟はみんな私を責めました。言われなくても自責の念でいっぱいの私はすっかり落ち込んでしまって」
 そんなとき、高木さんは偶然、TV番組で〝親の会〟の存在を知りか親が講師を囲んでひきこもりからの回復について学ぶ「学習会」に参加する。
 この学習会に参加しつつ桝田さんのカウンセリングを受け始めた高木さんは、自分たち夫婦が非常に管理的な親だったこと、期待に100パーセント応えようとする息子に、もつと頑張れと叱咤激励してきたことに気づく。
「親が変わらない限り、子どもも変わらないというアドバイスが、ある日ポンと腑に落ちたんです。専業主婦として大のため子どものために生きる人生に満足してきたつもりだったけれど、実は、自由に生きられないことを心のどこかで子どものせいにしていた。私はあなたのためにこんなに一生懸命やってるのに、どうして応えてくれないの、と。あの子はずっと前からそれを見扱いでいたんだと」


親の会に参加した親の聞き取り。これは良い意味で典型的な反応だと印象を受ける。

 「それまでは現実の社会にこの子を引き寄せなければ、と躍起になっていましたが、このままでいい、親が寄り添っていけばいい、と思えるようになりました」
「居場所」に約8年通った息子は、この春、ボランティア活動に参加し始めた。
 今回の取材にあたって、当初は「ニート」「不登校」「ひきこもり」の代表例となるような取材対象を探そうと考えていた。だが、とくにニートとひきこもりの線引きは難しく、「対人恐怖症状や強迫症状などを伴わない無病理性のひきこもりは、、ほぼニートと重なると思われる」と、「全国引きこもりKHJ親の会」代表の奥山雅久さんは話す。親以外の人間関係があるかどうか、つまり友達がいればニート、いなければひきこもりという分け方もある。いずれにしても、両者がある程度重なり合い、ひとりの人がふたつの状態を行きつ戻りつしていることは確かだろう。


子供に寄り添うというのは、この親の会で良く聞く言葉のような気がする。



以下は不登校の話。

不登校になったとき、息子は歩くことすらできなくなりました。行きなさいとはとても言えなかった。人糊は心が原因で動けなくなるんですね。父親も、学校へ行けとか助けという言葉はいっさい口にしません。ただ、親に余力があるうちに、何か身につけたほうがいいと思うよ、とは話しますけど、逆らいません。よくわかっている。でも、できないんです」


以下はニートの話。

「母には、何度も『就職活動しないの?』と聞かれました。一度言うとし1週間くらい言わないように我慢しているんです。でもホントは毎日でも言いたい気持ちがひしひし伝わってきた。求人広
告を持ってきて『ここで働きなさい』とか言ってくることもありました。もう放っておいてくれ、と言いたかった。父は直接僕には言ってこなかったけど、母は父からいろいろ言われていたようです」
 やがて生活は完全に昼夜逆転。親と顔を合わせることを避けたくて、家ではほとんど自室に閉じこもつた。
 ちょうど無職の少年による殺人事件が「ニートの犯行」として注目を集めていた時期。テレビや新開には連日「ニート」の文字が躍っていた。
「自分のことを言われているみたいでドキッとした。社会のお荷物、怠け者、働く気がない、みたいに書かれているのを読むと、ああ、自分はホントにダメ人間なんだなあ、としみじみ思ったりして」
 新藤さんは、「あんまり長引くのはマズイな」という自覚があったという。「自分の部屋が居心地が良くて、出たくない気持ちがだんだん強くなってきたとき、これは危ないなあ、と。精神的に疲れているのも自分でわかった。体のどこかを傷つけてみたいと思ったり、モノに当たったり。壁にバーンと何かをぶつけると、両親が音に驚いて『どうしたの?』と、とんでくる。『うるさいっ』って怒鳴ったような気がする。壁に大きな穴をあけたこともあります」
 1年近くが過ぎた頃、新藤さんは両親と就職について放しい言い合いをした。「なんで働かないんだ? 働くのは義務だぞ」「僕が何をしようが勝手だろっ」
 会話はエスカレートし、新藤さんは、就職に対する不安感、自信のなさを両親にぶちまけてしまう。