樋田大二郎「中・高校生の問題行動に関する研究」

樋田大二郎「中・高校生の問題行動に関する研究−生徒文化研究適用による検討−」
『教育社会学研究』 37,139-150.

(1) push要因からの説明方法
 犯罪社会学では Merton, R.K.が,生徒文化研究では Cohen, A.K.やHargreaves, D.H.がこの説明方法を用いている Mertonは文化的目標(金銭的成功)が過度に強調され,それを達成するための制度的手段が限られているときに,制度的手段以外の手段を用いて文化的目標の達成をはかろうとすること,これが逸脱であるとする。Cohenの説明方法はこれと少し異なる。CohenもMertonと同様に少年は文化的目標を内在化すると考える。しかし,それを達成するための学校という制度的手段を有効に利用できない少年、すなわち学校内の地位尺度上で低い地位にある生徒は、他の手段を用いる・用いないの以前に地位欲求不満に陥り、それを解消するために学校を支配する価値や規準を憎み敵対し,それらの裏がえし(すなわちこれが非行的な価値や規範である)を強調する,これが逸脱行動として表現されるというのである。Cohenは非行少年の心理的側面に商店をあて文化的目標を憎み敵対しその裏がえしを強調するにいたることで少年は逸脱して行くのであると主張するのである。そして,このようにして逸脱して行くのほ学校で支配的である中流階級の規範を内在化しないまま,すなわち不利な状態で中流階級の子弟と地位を争わねばならない労働者階級の子弟であるという。


(2) pull要因からの説明方法
る。すなわち,非行的な価値や規範,技術,関心などが地域や階層内での社会化あるいは非行的個人との接触を通して学習され内在化されたとき生徒は非行行動をとると考え,その過程を明らかにしようとするのである。


Sugarmanが指摘するストリート・カルチャー(Murdock & PhelpsはSugarmanが「ティーン・エージャー役割」とと呼ぶ役割を中心とした文化をこう呼ぶ)は存在せず,かわりにポップ・メディア・カルチャー(pop-media culture)が存在していた.

学校で支配的であるのは中流階級の価値や規範であり,学校・教師文化ほ中流階級の成人の期待する青年の役割や規範を生徒に内在化しようとしていると言いかえることもできよう。

青年文化
ここでいう青年文化とはYingerのいう下位文化レベル,集合的行動レベル,反抗文化(レベル)の青年文化をいう。文化(レベル)の青年文化をいう。青年文化については,一枚岩的にとらえた方が有意義かそれともさらにいくつかの下位文化に分化しているととらえた方が有意義かという議論がある。前者はMusgrave,F.のように反抗文化的性格をもつ一枚岩的な青年文化を主張しく,後者は性別・地域別・社会階層別に紅青年文化紅差異のあることを強調する。しかしながら本稿では,この問題を議論することを目的としていないので,Murdock.G. & McCron, R.が階級と結びついた文化とビートルズに代表される一枚岩的・反抗文化的な文化の関係をについて述べた言葉を引用し,南文化は統合的に検討されるべきであると主張するにとどめたい。すなわち, 「新しい十代のレジャー文化は,階級と結びついた文化にとってかわったというよりも,階級と結びついた文化と複雑な相互作用を増しつつ階級間に共通の文化となったのである」


 pull要因との関係で,青年文化にはつぎのような内容が確認されている(1)反動形成の結果としての支配的価値-の敵対性(Cohen), (2)刺激,労働の軽視と大成功,男らしさの証明としての攻撃的たくましさ(Matza & Sykes) (3)欲求の即時充足と快楽主義,大入と対等な地位にあることの主張(Sugarman)などである。