中島潤子「病気としてのこころの悩み」

中島潤子,1996,
「病気としてのこころの悩み」
『こころの科学』69,21-26.


大学生の「こころの悩み」というものを大学の健康管理センターの所長をしている著者が書き記したもの。年度は1996年。いまから10年前のものである。


「全国大学メンタルヘルス研究会」による統計の表。



まず、休学者が増加していることが分かる。ただ、これは、(数値として出されていないのでよく分からないが)海外留学が増加しているのと共変関係を取っているので、ひとまず、海外留学のために休学をする学生が増えたと解釈していいだろう。


「スチューデント・アパシー」は88年を境に減少している。精神障害も91年から減少気味である。この表は94年度までしかないため、それ以後のことは分からない。90年代の日本の転換期は98年(たとえば自殺者が1万人増えた)であるので、98年以降のデータも探して見なくてはいけない。



今度は精神障害の内訳である。
87年の山は神経症、91年の山は神経症統合失調症が押し上げており、92年の減少は統合失調症神経症が押し下げている。
91年と92年で変化が見られる理由はよく分からない。


「全国大学メンタルヘルス研究会」について。

 協議会とは性格を異にして、国・公・私立大学の保健管理センターの精神保健スタッフが集まって作った「全国大学メンタルヘルス研究会」という研究会がある。昭和五三年度の発足である。その当初から、学生のメンタルヘルスに関する動向を大まかに把握するために、休学・退学・留年学生の統計調査を開始した。さらに昭和五六年度からは、いくつかの大学でそうした学生の実態調査も始めた。休学、退学、留年の実態調査の中で、実態に最も近いと思われる「休学」の調査結果を図1に示した。


ここについても調べる必要がありそう。


以下は大学生における「心の悩み」

大学生にはどんなものが多いか

(3)精神分裂病圏は、高校生と大学生の年代に多発する、最も多くて最も注意を要する精神障害である。


(4)躁期がある躁うつ病は比較的早く、高校時代にも出てきて、躁期がなくてうつ期だけくり返し出てくる周期性うつ病は、大学も卒業が近づく頃から現われる。どちらも成人の病気なので、大学生の年代にはまだ少ないのである。どちらも「気分障害」と命名されているが、気分だけではなく精神と身体の両面にわたる「おちこみ」の症状をとる。寝ついても夜中に目が覚めてしまい、あと眠れない、食欲がない、無理に食べてもおいしくない、身体がどこかおかしい、といった身体の状況のうえに気分のおちこみが重なる。これも実は精神分裂病とともに、脳神経の病気なので、精神科医による薬物治療が基本である。
 しかし、人間は、受験の失敗、愛の対象の喪失(失恋や生別・死別)、過労、進路がうまく行きそうにない予感など、何が起こっても憂うつに傾くので、脳神経の病気でない「うつ」抑うつ状態)は数えきれないくらいたくさんある。学生にも非常に多い。これらは脳神経の病気ではなく、「こころの病的状態」として、(5)近いので、薬よりもカウンセラーの助言のほうが必要である。


(5)神経症は大学生に多い。ほんとは病気ではなくて「病気だと思い込んでいるのが病気」というものなので、まさに「こころの病気」である。他方、心身症はその人の一種の癖(複雑な条件反射)であるから、軽いものは風邪と同じくらい高い頻度で現われるが、たいていの人は自分で治している。重くなった場合だけ、身体の病気でないことを確かめるために身体の医師の診察を受け、しかるのち、精神科医にかかるか、自律訓練法など「訓練」を会得するとよい。


(6)やせ症や過食症、まとめて摂食障害といわれているものは、高校生・大学生の間に増加しているといわれているが、重症になる人はあまり増えていない。ダイエットのやり方が上手になったのではなかろうか。一方、性の悩みは前記の神経症精神分裂病うつ病のケースで症状の一部として語られることが多く、単独で相談されることは少ない。


(7)人格障害でも他人に害を及ぼさないもの、たとえば、回遊性人格障害とか依存性人格障害とかは、薄められたり、神経症うつ病との境界にある形で、学生に増えていると考えられている。大学生の不登校と同音義のスチューデント・アパシーは、その典型である。これについては、後半でふれよう。


以下はアパシーについて。

 スチューデント・アパシーの行方
 分裂病でもうつ病でも詐病でもないのに、あきれるほど授業に出られない学生がいる、ということを発見したのは、昭和四〇年代、京都大学保健管理センターにいた笠原嘉氏であった。この病いはこれから増えると予想されたので、休・退学、留年の実態調査にもカウントしてもらっている。しかし、図1と図2の「精神障害」からは除外している。
 初め、都会の大学に集中していたスチューデント・アパシーは、その後地方大学にもみられるようになったが、調査上の人数はいったん増加したのち減少した。軽い強迫傾向をもった軽いうつ病、という見方もあるが、調査者に分類させると、神経症圏と人格異常圏に分類する人が多い。そういう面をもっている学生も確かにいる。教官に聞いてもよくわからないし、怠学との区別も、実際に接してさえ難しいと思われる。現在では、海外渡航の学生の中にもまぎれこんでいると思われる。生活の選択肢が増えたので、スチューデント・アパシーは姿を変えて見えにくくなり、実際は増加しているのではなかろうか。


アパシーは統計上は増えていない。しかし、判別が難しいので、実態としては増えているのではないかと結ばれている。どうなのだろうか?