タリーズ・コーナー


タリーズコーナー―黒人下層階級のエスノグラフィー

タリーズコーナー―黒人下層階級のエスノグラフィー


読書会の本。
人類学博士論文として書かれたもので、方法は参与観察。

 結婚するのには、生計を立てることが最優先事項である。若い下層階級の黒人は、白人や黒人の労働者階級、中産階級の似たような若者とほぼ同様に、部分的に同じような理由から、二〇代前半で結婚する。彼には結婚に対して特別な動機はない。結婚しようが結婚していなかろうがセックスはいつでも手に届くところにあり、もしまだ結婚をしていなくても、彼はいつでも女性と議に暮らし、子どもをもつことができる。しかし彼は公約、法的に結婚し、家族を亨芸大親柱になりたがるのである。なぜならキャリーアウト近くの部屋に住んでいようが、郊外の豪華な家に住んでいようが、そうすることが私たちの社会においては一人前の男になるということだからである。
 結婚したがっているにもかかわらず、彼が最初から責任を避けようとするのは結婚そのものを恐れているからではなく、夫や父親としての責任を果たす能力のなさを恐れているからである。彼自身の父親は失敗して「離縁」しなくてはならなかったし、彼の知っている結婚していた男、結婚している男もまたすでに失敗しているかその過程にある。彼らよりもうまくやっていけるという根拠はどこにもないが、うまくやっていけないという根拠ならいくらでもある。どんなに学校でがんばっても、彼は読み書きがまったくできないか、できてもごくわずかである。どんなに多くの仕事をやってきたとしても、あるいはどんなに一生懸命働いてきたとしても、彼は根っからの非熟練労働者なのである。失敗し、自身を無価値で読み啓きができず未熟者だと確信したモデルにがんじがらめにされて、彼は自分自身のまわりに失敗の影をまとわせて、結婚や就職市場に入るのである。仕事は途切れ途切れにしか見つからない。そのほとんどが常にやりがいがなく、ときには過酷なもので、家族を支えるに足る給料が払われることは決してない。(p158-9)


ウィリスの『ハマータウンの野郎ども』(ASIN:4480082964)にも通じる主題が取り扱われている。下層階級の黒人たちの生活の中には、いろいろ問題があって、生活の中に不十分なものが多数存在している。とはいうものの、それはそれなりに楽しく生きているように読めてしまった。それは自分がこういう世界を見る機会が少なく、リアリティを上手く掴み損ねているからなのだろうか、それとも、実際にこういう世界のことをよく知るようになっても、「それはそれなりに」という感想は変わらないままなのか。興味はある。