DSM-IV-TR レット障害


299.80 レット障害 Rett's Disorder


 診断的特徴
レット障害の基本的特徴は,生後の正常な機能の期間に引き続き特有の欠陥が多数現れることである.明らかに正常な胎生期および周産期の発達があり(基準A1),正常な生後5カ月間の精神運動発達がみられる(基準A2)・出生時の頭囲も正常範囲にある(基準A3).生後5カ月から48カ月の間に,頭囲の成長は減速する(基準B1).5〜30カ月の間に上それまでに獲得した合目的的な手の技能を喪失し,その後手で絞ったり手を洗うのに似た常同的な手の動きが発展する(基準B2).障害の発症後の最初の数年で,社会的環境に対する興味が減退する(基準B3)が,後にはしばしば対人的相互反応は発達するかもしれない.歩行の協調運動または体幹の動きに問題が出現する(基準B4).重症の精神運動制止を伴い,重篤な表出性,受容性の言語発達障害もある(基準B5).


関連する特徴および障害
 レット障害は典型的には重度または貴重度精神遅滞を伴い,それが存在する場合はII軸にコード番号をつけて記録しておくべきである.この障害に伴う特異的な臨床検査所見はない.
脳波異常とけいれん性疾患の頻度は,レット障害をもつ者では増加するかもしれない・脳画像における非特異的な異常が報告されている.予備的なデータによると,レット障害の症例の中には,遺伝子変異が原因である者もいることが示唆されている.


有病率
 データはそのほとんどが,一連の症例報告に限られており,レット障害は自閉性障害に比べずっとまれなようである.この障害は女子のみで報告されている.


経過
 発達の退行の様式が非常に目立つものである.レット障害は4歳以前,通常は生後1年目または2年目に発症する.障害は一生にわたり,技能の喪失は通常持続し,進行性である.ほとんどの例で回復はきわめて限られているが,ごくわずかな発達がみられたり,小児期後期または青年期に入ってから対人関係への興味がみられる者もある.コミュニケーションと行動の因経は,通常,一生比較的不変のままである.


鑑別診断
 正常の発達においても発達の退行の期間がみられることがあるが,レット障害のように重症で持続するものはない.レット障害と自閉性障害の違いについては,86頁を参照のこと.レット障害は特徴的な性差,発症,欠陥の型により小児期崩壊性障害およびアスペルガ一障害とは区別される.レット障害は女子のみで診断されていて,一方,小児期崩壊性障害とアスペルガー障害は男子でより多くみられるようである.レット障害の症状の発症の始まりは,生後5カ月という早期であるが,小児期崩壊性障害では正常な発達の期間がより長い(すなわち,少なくとも2歳まで).レット障害では,特徴的な頭部成長の減速型,以前に獲得した合目的的な手の技能の喪失,協調不良の歩行と体幹の運動がみられる.アスペルガ一障害と対照的に,レット障害は重篤な表出性言語と受容性言語の障害が特徴的である.

診断基準 299.80 レット障害

A.以下のすべて:
 (1)明らかに正常な胎生期および周産期の発達
 (2)明らかに正常な生後5カ月間の精神運動党達
 (3)出生時の正常な頭囲
B.正常な発達の期間の後に,以下のすべてが発症すること:
 (1)生後5〜48カ月の間の頭部の成長の減速
 (2)生後5〜30カ月の間に.それまでに獲得した合目的的な事の技能を喪失し,その後常同的な手の動き(例:手をねじる,または手を洗うような運動)が発現する.
 (3)経過の早期に対人的関与の消失(後には,しばしば対人的相互反応が発達するが)
 (4)協調不良の歩行と体幹の動きの外見
 (5)重症の精神運動制止を伴う,重篤な表出性および受容性の言語発達障害