DSM-IV-TR 小児期崩壊性障害


299.10 小児期崩壊性障害  Childhood Dismtegrative Disorder


診断的特徴
 小児期崩壊性障害の基本的特徴は,少なくとも2年の見かけ上正常な発達の期間に引き続く,多くの領域の機能における著明な退行である(基準A).見かけ上正常な発達は,年齢に相応した言語的および非言語的コミュニケーション,対人関係,遊び,適応行動に示される.生後2年以後(しかし10歳以前に),子供は,以下の各領域の少なくとも2つにわたり,以前に獲得した技能の臨床的に明らかな喪失を示す:表出性または受容性言語,対人的技能または適応行動,排便または排尿のコントロール,遊び,または運動技能(基準B).最も典型的には獲得された技能はほとんどすべての領域で失われる.
 この障害をもつ者は,自閉性障害をもつ者に広く観察される,対人的およびコミュニケーションの欠陥と行動的特徴を示す(82頁参照).対人的相互反応(基準C1)およびコミュニケーションにおける質的な障害(基準C2),限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動の様式(基準C3)がある.障害は他の療走の広汎性発達障害または精神分裂病ではうまく説明されない(基準D).この状態は,ヘラー症候群,幼児痴呆,または崩壊性精神病とも呼ばれてきた.


関連する特徴および障害
 小児期崩壊性障害は,通常重症の精神遅滞を伴うが,それが存在する場合にはII軸にコード番号をつけて記録しておくべきである.さまざまな非特異的神経症状ないし徴候が認められるかもしれない.脳波異常やけいれん性疾患の頻度も高いようである.この状態は発達中の中枢神経系に対してなんらかの病変があった結果のようにみえるが,はっきりした機序は同定されていない.この状態は時に,発達の退行の原因になるかもしれない一般身体疾患に伴ってみられることがある(例:異染性白質ジストロフィー,シルダー病).しかし,たいていの場合は,広範な検索によってもそのような疾患は見いだされない.もし神経疾患または他の一般身体疾患がこの障害に伴っているならば,III軸にコード番号をつけて記録しておくべきである.臨床検査所見は,関連する一般身体疾患を反映する.


有病率
 疫学的データは限定されているが,小児期崩壊性障害は非常にまれであり,自閉性障害よりずっと少ないようである.しかし,この状態は十分な診断がなされない傾向にある.初期の研究では性差はないと報告されたが,最近のデータはこの障害は男性に多いことを示唆している.


経過
 定義によれば,小児期崩壊性障害は,少なくとも2年の正常な発達の後,10歳以前に症状が発症した場合にのみ診断される.正常の発達の期間が非常に長かった場合(5年以上)は,一般身体疾患の存在を評価するために身体的および神経学的検査を十分に行うことが特に重要である.たいていの場合,発症は3〜4歳の間であり,潜行性のことも突然のこともある.前兆の徴候は,情動性の増加,易怒性,不安と,その後の言語およびその他の技能の喪失である.この間に,子供は環境に対する関心を失うかもしれない.通常は,技能の喪失が最高点まで達すると,その後限られた改善はあるかもしれないが,著明改善はまれである.他の症例では,特にこの障害に進行性の神経疾患が伴う場合,技能の喪失は進行性である.この障害は持続的な経過をたどり,ほとんどの症例では経過は一生に及ぶ.対人的,コミュニケーション的,および行動上の困難は,一生を通じ,比較的不変のままである.


鑑別診断
 正常の発達の中でも退行する期間が観察されることがあるが,小児期崩壊性障害のように重症ではなく持続するものでもない.小児期崩壊性障害は,他の広汎性発達障害とは鑑別されなければならない.自閉性障害との鑑別診断については,86頁を参照のこと.レット障害との鑑別診断については,88頁を参照のこと.アスペルガ一障害とは対照的に,小児期崩壊性障害は以前に獲得された技能の臨床的に著明な巽失と精神遅滞の合併がより多いことにより特徴づけられる.アスペルガ一障害においては,言語発達の遅れはなく,発達技能の著明な喪失もない.
 小児期崩壊性障害は幼児期および小児期に発症する痴呆と鑑別しなければならない.痴呆は一般身体疾患の直接的な生理学的結果として起こる(例:頭部外傷)が,小児期崩壊性障害は典型的には関連する一般身体疾患なしに起こる.

診断基準 299.10 小児期崩壊性障害


A.生後の少なくとも2年間の明らかに正常な発達があり,それは年齢に相応した言語的および非言語的コミュニケーション,対人関係,遊び,適応行動の存在により示される.
B.(10歳以前に)以下の少なくとも2つの領域における,以前に獲得された技能の臨床的に著しい喪失:
 (1)表出性または受容性言語
 (2)対人的技能または適応行動
 (3)排便または排尿の機能
 (4)遊び
 (5)運動能力
C.以下の少なくとも2つの領域における機能の異常:
 (1)対人的相互反応における質的な障害(例:非言語的な行動の障害,仲間関係の発達の失敗,対人的ないし情緒的な相互性の欠如)
 (2)コミュニケーションの質的な障害(例:話し言葉の遅れないし欠如,会話の開始または継続することが不能,常同的で反復的な言語の使用.変化に富んだごっこ遊びの欠如)
 (3)運動性の常同症や街奇症を含む,限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動の型
D.この障害は他の特定の広汎性発達障害または精神分裂病ではうまく説明されない.