「ひきこもり」「ニート」「発達障害」という3つの言葉が登場する新聞記事数の推移グラフを作った。新聞(マスメディア)でこの3つの言葉が言及される頻度をみることができ、これら3つの現象がどの時期にどの程度、注目されてきたかが分かる。使用したデータベースは朝日新聞の「聞蔵」である。
「ニート」という言葉が初めて使われたのは2004年5月の産経新聞に掲載された小杉礼子氏の記事が最初。それ以前に「ニート」という言葉の使用はあるものの、別の意味の単語*1であるため、2004年6月からデータを取っている。
2005年末から2006年初頭が最も「ニート」という言葉が使われていたことが分かる。月によって上下はあるものの、少しずつ使用頻度が下がってきている。
「ひきこもり」*2と「発達障害」の記事数も加えてグラフにしてみた。
月別だと見にくくなるため、四半期(1-3月、4-6月……)の推移グラフにしてある。こちらも朝日新聞記事データベース「聞蔵」より作成。まだ6月が終わっていないため、今期(2007年4月1日〜6月31日)は残りの数日は数値を補正してグラフ作成をしてある。
「ひきこもり」は本格的に社会問題化された2000年から安定した推移を示している。「ひきこもり」のブームは終わったなどと言われることもあるが、今も安定した記事数があり、むしろ全体的なトレンドとしては増加している。これは「ひきこもり」という社会問題は実態を伴った社会問題であるからであろう。「気分」でなんとなく社会問題化されたものは1年、2年で駆逐されていくが、実態を伴った現象は息長く言及される。
実態が伴った言葉であるということは、「ひきこもり」という現象がいっこうに改善していないことを意味している。「ひきこもり」というもので苦しんでいる人がいまだに多くいるのである。
一方、「ニート」という言葉は2004年末から記事数が鰻登りに上がり、2006年初頭を頂点にして下降する。「ニート」という言葉が「流行語」であったことがここからわかる。「ニート」の記事数は2005年半ばに「ひきこもり」の記事数を抜く。ここから1年あまりの時期では「ひきこもり」よりも「ニート」に焦点が当たることが多かった。しかし、「ニート」という言葉の使用記事は減少し、2006年末に「ひきこもり」の記事数より少なくなる。「ニート」という言葉の使用は今後も減少していくと考えられる。
もう一つのグラフは「発達障害」のグラフである*3。全体的には次第に記事数が増加していることが見て取れる。増加の速度は「ひきこもり」よりも速い。このまま推移すれば、発達障害への言及記事は増え、「ひきこもり」に近接していくように思われる。
今回は「発達障害」というワードで抜き出しているが、2000年代前半は学習障害(LD)への言及が多く、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の言及が増え、現在では広汎性発達障害(特にアスペルガー障害)への言及が多くなっているのではないかと思われる。この点に関しても調べてグラフの作成が必要であろう。
追記:
id:trashcanさんによるコメント「ニート, ひきこもり Google Trendsでも同様の傾向。」
補足ありがとうございます。