井出草平の研究ノート

株式持ち合いと時価会計


メモ。

日本の株式持ち合いと株価
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/cirje/research/dp/2000/2000cj36.pdf (PDF)


以下のようなことが実証されている。

  • 株式持ち合いは企業のファンダメンタルズに影響を与えない限り株価に中立
  • 安定持ち株比率の高い企業は企業価値が高い可能性がある
  • 相互保有企業価値にマイナスを与えることは見いだせない


2001年の時価会計への変更についてもついでに


証券・金融市場のグローバル化に併せて国際会計基準の下で統一する方向性が正しいとしても、どの先進国も使っていない会計基準グローバル・スタンダードであると思いこんで(?)採用したのはよく分からない話。時価会計への基準の変更が含み損を出し、株式持ち合いの解消へとつながる。その売却先がライブドア事件で有名になった投資組合であり、その投資組合を通じて海外の機関投資家日本株を購入することにつながった。安定株主が減少したことによって、ファンドにとっては非常に株を買い占めやすい状況が生まれ、村上ファンドなどのファンドの活躍する余地ができたわけである。


持ち合い株に関しては、資本効率の問題がよく言われているようである。資本効率に関してはこちらを参照

このところ、日本企業は、これまでの売上げ重視から、ROEROA重視に姿勢を転換させている。これには、日本企業のROEROAが低水準となっていることが影響しているが、金融システムの不安定化に伴い銀行によるリスク・キャピタルの供給が行われにくくなるなかで、リスク・キャピタルの資本市場への依存度、なかでもROEROAを重視する外国人投資家に対する依存度が高まっていることも影響している可能性が大きい。


リンク先とは関係がないが、投資関係の文章を読むと株式持ち合いはROEROAを低くするのでダメと言われていることがある。それだけで株式持ち合いがダメだと言われてもあまり説得力を感じられない。投資理論やストック・ホルダーの利害のみで語られる問題ではないはずなのだから。