井出草平の研究ノート

不登校に含まれるアスペルガー障害の割合

塩川宏郷,2007,
「不登校と軽度発達障害--アスペルガー障害を中心に」
『現代のエスプリ』(474),205〜211.


不登校のうち6%にアスペルガー障害の診断名が付いたという論文。
また、アスペルガー障害の方を見ると、アスペルガー障害のうち3割が不登校状態を示していたという。
現在の所、不登校は広汎性発達障害の関係について研究はあまり出ていないと思うので、貴重なものだと思われる。


このデータを読む場合に注意すべきなのは、病院への相談の中での記録であるというところである。病院には重い症例が集まってくる傾向があるので、実際より大きな値が出ているように思われる。特に、不登校のうち6%にアスペルガー障害の診断名が付くという方は割り引いて捉えるべきだろう。


実際の数字はどうあれ、不登校には一定数の広汎性発達障害者が含まれていることの証左になる論文。広汎性発達障害を持つ不登校児童への援助は通常の不登校児童へのものとは違ったものになるので、対策をすることが必要である。

 二〇〇〇年〜二〇〇三年の四年間に、自治医科大学附属病院小児科心理外来を受診した子どもは一〇六九人(男児六二一人、女児四四八人)であった。このうち不登校を主訴として外来を受診した子どもは二六六人(二四二二%)であった。不登校を主訴として外来を受診し、最終的にアスペルガ一障害と診断された例は一七例(不登校の中の六・四%)であった。ちなみに、不登校を主訴として外来を受診し、最終的に「不登校」として経過観察された例は二一〇例(七八・九%)であり、二割近くに基礎疾患(ほとんどはいわゆる軽度発達障害)が認められた。


2 軽度発達障害の中の不登校


 前述の外来統計データで、・最終的に何らかの発達障害と診断された児は二六三例(二四・六%)であった。これらの子どもたちの相談の経過で不登校を取り扱った例は三二例(一二・二一%)であった。アスペルガ一障害に特化した場合、アスペルガ一障害と診断された例のおよそ三割が何らかの形で不登校についての介入を要していた。
 おおざっぱにまとめると、「不登校」を訴える子どもの六%にアスペルガ一障害と診断され、アスペルガ一障害と診断される子の三割が不登校について何らかの支援を必要としていた、ということになる。もちろんこの数値は、一地方の一施設の外来統計であり、これを汎化することはできない。


もう一つ疑問は、DSM-IV-TRに準じた「アスペルガー障害」というものは割に珍しいもの*1なのでこの論文のように17例も見つけられるのかという点。広めに取れるギルバーグやサットマリによる「アスペルガー症候群」の診断基準ならばこれくらいは取れるようには思える。

*1:Chakrabartiらの調査では1万人あたり8.4人http://d.hatena.ne.jp/iDES/20071206/1196929295