井出草平の研究ノート

世界銀行の年金政策


1994年の世界銀行のリサーチレポート。積立方式の優位性と制度管理を民営化することを薦めている。


以下が反論として出されたもの。


New Ideas About Old Age Security: Toward Sustainable Pension Systems in the 21st Century

New Ideas About Old Age Security: Toward Sustainable Pension Systems in the 21st Century


世界銀行の2005のレポート。

みなし掛金建ての年金制度はすでにスウェーデン・イタリア・ラトビアポーランド・ブラジル・キルギス・モンゴルで導入された。問題が全くないとはいえないものの、みなし掛金建てへの切りかえは賦課方式に基づく典型的な給付建ての制度を改革するための最良の(best)方法となる可能性が高い、とまで2005 年の世界銀行レポートは言い切っている(ウェッブ版105 頁)。1994 年レポートとは基本的に全く異なる方針を明確に打ちだしているのである。
第3 のオプションはチリ・オーストラリア・香港で選択された。年金財政は健全化し持続可能になる。ただ、反面において投資リスクが新たに生じ、給付が社会的にみて妥当な水準以下に低下するおそれもある。積立方式への切りかえは移行時の壮年世代に特別の負担を課すことになる一方、それを避けようとすると国家財政への特別のしわよせが発生する。また年金給付に最低保障をつけると結果的に「目にみえない債務」がふくらんでいき、当初の目的が達成できなくなるおそれもある。さらに適度に規制され当局によるモニタリング機能もうまく働いている健全な金融部門がないと積立型年金のメリットは発揮されない。このように積立型への切りかえが理想的に進むための条件は少なくない。2005 年レポートが1994 年レポートとは異なる方針を打ちだした背景には、このような理解が深まったからである。
第4 のオプションはカナダ・アイルランドニュージーランド・米国が現在採用している。ただ年金積立金を政府が管理・運用していくことに問題がないわけではない。日本やシンガポール・マレーシアの例をみるかぎり、年金積立金の運用は民間にゆだね、政治の関与を封じこめる必要がある。
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/pdf/interviews/nenkintokeizai0507.pdf(PDF)


チリ・オーストラリア・香港では民営化+積立型の年金を採用している。リスクの高い制度である。政府による積立型はカナダ・アイルランドニュージーランド・米国にも問題を感じる。