山崎晃資「高機能広汎性発達障害の診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究」


広汎性発達障害反社会的行動の科研報告書から。


この分担研究では5つの研究がされている。その中から山崎晃資氏と市川宏伸氏の研究をとりあげる。



研究1

東京都発達障害者支援センターでかかわった442名のなかで、著しい反社会的行動を示した28例(6.5%)について分析した。


結果

知的時害を伴わない人で、医師よりHPDDと診断された人が22.3%、注意欠陥/多軸性障害(AD/HD)、学習障害うつ病統合失調症人格障害などと診断された人が18.8%、未受診・来診断の人が24.4%であった。


442例中、著しい反社会的行動を示したのは29例(6.5%)であり、この中で、HPDDまたはASと診断されたのが11例(38.9%)、精神科病院に入院したことのあるのが8(27.6%)であった。


広汎性発達障害反社会的行動についての報告書であるはずなのだが、これについては理由はよくわからないが計算されていない。再計算は可能なので、高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム精神遅滞を伴わないもの)の反社会的行動の割合を計算してみる。


442人の中で高機能広汎性発達障害の診断が下りているのは22.3%なので人数に直すと99人。その中で著しい反社会的行動が見られたのが11例。これを割ってみると、高機能広汎性発達障害者の11.1%に反社会的行動が見られたということになる。目安としては1割というところになる。




研究2

都立梅が丘病院の勤務医にアンケート調査を行い、都立梅が丘病院に通院歴のあるPDD患者のうち、触法行為とみなされる行動の履歴がある症例を把握した。

結果

 (1)13症例で計18件の触法行為(傷害4件、猥談行為3件、放火3件、窃盗3件、ストーカー行為2件、公務の妨害・恐喝・脅迫行為がそれぞれ1件みられた。触法行為時の平均年齢は17.0±5.7歳であった。(2)診触法行為後の処遇は、5件が入院治療、3件が補導、2件が不起訴であった。家庭級判所に送致され児童自立支援施設に入所となり保護観察処分になったもの11件、児童自立支援施設入所後の処遇が不明のものが1件であった。児童相談所に適所となったものが1件、新たに通院治態となったものが1件であり、4件では処遇がなされていなかった。(3)再犯については、9件で犯罪行為の後に同様の触法行為が認められ、7件で再犯は認められなかった。(4)社会適応は、作業所適所が4例、高校通学が3例であった。福祉就労・入院中・児童相談所一時保護所に入所中・自宅閉居がそれぞれ1件であった。

考察

PDD者の触法行為は、現実検討を欠く精神病状態で行われているものではなく、PDDそれ自体、あるいは知能の低さから触法行為が生じていると考えられ薬物療法による改善が期待されにくいと考えられた。


考察のところで想起されるのは、統合失調症などの精神障害者の犯罪で争点になる心神喪失心神耗弱であろう。心神耗弱とは「精神の障害等の事由により事の是非善悪を弁識する能力(事理弁識能力)又はそれに従って行動する能力(行動制御能力)が著しく減退している状態」のことである。高機能広汎性発達障害の障害の特性から触法行為がされているということは、是非善悪を弁識する能力を発達過程で得る能力を持っていない、かつ、薬剤でのコントロールができないというができないと言うことになるのではないかと思われる。