313.81反抗挑戦性障害(DSM-IV-TR)

313.81反抗挑戦性障害 Oppositional Defiant Disorder

診断的特徴
 反抗挑戦性障害の基本的特徴は,目上の者に対して拒絶的,反抗的,不従順,挑発的な行動を繰り返す様式が少なくとも6カ月問持続し(基準A),以下の行動のうち,少なくとも4つがしばしば起こることである:かんしゃくを起こす(基準A1),大人と口論をする(基準A2),大人の要求,または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(基準A3),故意に他人をいらだたせることをする(基準A4),自分の失敗や無作法を他人のせいにする(基準A5),神経過敏で他人からいらいらさせられやすい(基準A6),腹を立てたり,憎む(基準A7),意地悪で執念深い(基準A8).反抗挑戦性障害とするためには,その問題行動が同じ年齢および発達水準の者に普通認められるよりも頻繁に起こらねばならず,それによって,社会的,学業的,職業的機能の顕著な障害が引き起こされなければならない(基準B).行動上の障害が精神病性障害または気分障害の経過中にのみ起こる場合(基準C),または行為障害や反社会性人格障害の基準が満たされる場合(18歳以上の者で)にはこの診断は下されない.


 拒絶的かつ挑戦的行動は,持続的な頑固さ,指示への抵抗,大人や仲間と妥協したり屈したり取り引きしたりしないこととして表れる.挑戦性とは,通常,命令を無視したり,口論したり,不正行為に対する非難を認めないことにより,その限界を意図的に絶えず試すことも含まれる.敵意は大人や仲間に向けられ,故意に他人をいらいらさせたり,言語的攻撃性によって明らかとなる(通常は行為障害でみられるような重大な身体的攻撃性はみられない).この障害はほとんどが家庭内で現れ,学校や地域社会でははっきりしないかもしれない.典型的には,この障害の症状は,よく知り合っている大人や仲間との人間関係において,より明らかとなるが,臨床的評価のときには明らかとはならないかもしれない.通常この障害をもつ者は自分を反抗的とか挑戦的とは思わず,自分の行動を不合理な要求または環境に対する反応として正当化する.


関連する特徴および障害
 関連する特徴および障害はその者の年齢および反抗挑戦性障害の重症度の関数として変化する.この障害は,男性では,学齢期前から問題の多い気質(例:高い反応性,落ち着かせることが困難)や高い運動活動性を示す者に多いことが示されている.学齢期には,自己評価の低さ(あるいは過度に高い自己評価),気分の不安定性,欲求不満耐性の低さ,汚い言葉を吐くこと,アルコール,タバコ,非合法の薬物の初期使用などがあるかもしれない.しばしば,両親,教師,仲間との衝突が認められる.子供と親との間で互いに最悪のものを引き出すという悪循環が認められることもある.反抗挑戦性障害は次々に保護者が変わることによって子供の世話が崩壊している家庭や,厳格で一貫性のない,または無視するような養育態度の多い家庭により多くみられる.注意欠陥/多動性障害は反抗挑戦性障害をもつ子供に多くみられる.学習障害やコミュニケーション障害が反抗挑戦性障害に関連する傾向がある.


特有の年齢および性別に関する特徴
 一過性の反抗的行動は学齢期以前の子供にも青年期にも広くみられるものであるため,特にこれらの発達期に反抗挑戦性障害の診断を下すには注意が必要である.反抗的症状の数は年齢が進むに従って増える傾向にある.この障害は思春期以前は女性より男性に多いが,思春期以後は有病率に性差はないようである.症状は,男性では面と向かって行う行動や持続的な症状がより多いことを除けば,どちらの性でも概して同じである,


有病率
反抗挑戦性障害の有病率は,対象となった人口の性質および確認の方法によって異なるが,2〜16%と報告されている.


経過
反抗挑戦性障害は通常8歳以前に顕在化し,青年期早期以降に明らかになることはない.反抗的症状は家庭内で現れることが多いが,時間がたつにつれ,その他の場面でも認められるようになるかもしれない.典型的には発症は徐々に,通常数ヵ月から数年の間に起こる.症例のかなり多数で,反抗挑戦性障害は行為障害に発展する先行因子である.行為障害,小児期発症型に反抗挑戦性障害がしばしば先行するが,反抗挑戦性障害をもつ子供の多くは,その後行為障害とはならない.


家族発現様式
 反抗挑戦性障害は少なくとも片親が気分障害,反抗挑戦性障害,行為障害,注意欠陥/多動性障害,反社会性人格障害,または物質関連障害の既往歴をもつような家庭でより多く認められるようである.さらに,うつ病性障害をもつ母親が反抗性の行動を示す子供をもちやすいが,子供の反抗性の行動がどの程度母親のうつ状態を引き起こしたり,あるいは母親のうつ状態によって引き起こされたりするのかは明らかでない、反抗挑戦性障害は夫婦の深刻な不和があるような家庭により多くみられる.


鑑別診断
 行為障害をもつ者に比べて,反抗挑戦性障害をもつ者の破壊的行動は重症の性質が少なく,典型的には,人や動物に対しての攻撃,財産の破壊,盗みや詐欺などの形をとることがない.反抗挑戦性障害の特徴のすべてか通常,行為障害でみられるので,行為障害の基準が満たされる場合は反抗挑戦性障害の診断は下されない.反抗的行動は小児や青年で気分障害および精神病性障害によくみられる関連病像であり,その症状が気分障害または精神病性障害の経過中にのみ認められる場合には,別個に反抗挑戦性障害の診断は下すべきでない.また反抗的行動は注意欠陥/多勤性障害における注意散漫および衝動性に基づく破壊的行動とも区別しなければならない.この2つの障害が同時に起こった場合には両方の診断が下されるべきである.精神遅滞をもつ者では,反抗的行動が同じ年齢、同じ性別,または同じ重症度の精神遅滞をもつ者に一般的にみられるものより著しくひどい場合にのみ,反抗挑戦性障害の診断が下される.反抗挑戦性障害は言語理解の障害(例:難聴,受容−表出混合性言語障害)により命令に従えないことと区別しなければならない.反抗的行動はある発達段階での典型的特徴(例:小児期早期および青年期)である.その行動が同じような発達段階にある者で典型的にみられるものよりも頻繁に起こり,より重大な結果をもたらし,社会的,学業的,職業的機能の著しい障害をもたらす場合にのみ,反抗挑戦性障害の診断が考慮されるべきである.青年期に新しく反抗的行動がみられることは個人の自立への正常な過程によるものかもしれない.

診断基準
313.81反抗挑戦性障害
A.少なくとも6カ月持続する拒絶的,反抗的.挑戦的な行動様式で,以下のうち4つ(またはそれ以上)が存在する.
 (1)しばしばかんしゃくを起こす.
 (2)しばしば大人と口論をする.
 (3)しばしば大人の要求,または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する.
 (4)しばしば故意に他人をいらだたせる.
 (5)しばしば自分の失敗,不作法を他人のせいにする.
 (6)しばしば神経過敏または他人からいらいらさせられやすい.
 (7)しばしば怒り,腹を立てる.
 (8)しばしば意地悪で執念深い.
注:その問題行動が,その対象年齢および発達水準の人に普通認められるよりも頻繁に起こる場合にのみ,基準が満たされたとみなすこと.
B.その行動上の障害は,社会的,学業的,または職業的機能に臨床的に著しい障害を引き起こしている.
C.その行動上の障害は,精神病性障害または気分障害の経過中にのみ起こるものではない.
D.行為障害の基準を満たさず,またその者が18歳以上の場合,反社会性人相障害の基準は満たさない.