過去のいじめ体験が青年期に及ぼす影響

いじめの学校時期別の体験と心理尺度の関連を調べた論文。

野中公子・永田俊明、2010
「過去のいじめ体験が青年期に及ぼす影響‐体験の時期と発達の関連」
『九州看護福祉大学紀要』Vol,12,№1,115-124


サンプルの特性から。対象は4年制大学生及び専門学校生399名(男子168名、女子231名)である。

18歳〜27歳を対象とし、回答者は、男41.9%(166人)女58.1%(230人)で合計396人であった。
 “体験ある群”は78.5%(311人)、“体験ない群”は21.5%(85人)であった。
 男子は“体験ある群” 74.7%(124人)“体験ない群” 25.3%(42人)、女子では“体験ある群” 81.3%(187人)“体験ない群” 18.7%(43人)となった。

自尊感情”と“友人関係”に関わる“いじめの影響尺度”の下位尺度6項目とのPearson相関分析を行なった結果、“自尊感情”と精神的強さ(r=.297)に正の相関が、情緒的不適応(r=-.529)、同調傾向(r=-.357)、他者評価への過敏(r=-.336)に負の相関が認められた。“友人関係”においては、情緒的不適応(r=.153)に正の相関が認められた。

(1)小学校以前・小学校:
自尊感情”と“同調傾向”0.006で(p≦0.05)5%の水準で有意差が認められた。小学校以前・小学校時期のいじめ体験の影響“同調傾向”は、その後の“自尊感情”に影響を及ぼすことが言える。“友人関係”は、有意差を認めなかった。小学校以前・小学校時期のいじめ体験は、その後の“友人関係”に影響を及ぼすとは言えない。
(2)中学校:
自尊感情”は、有意差を認めなかった。中学校時期のいじめ体験は、“自尊感情”に影響を及ぼすと言えない。“友人関係”は、“他者評価への過敏”0.0022で(p≦0.05)5%の水準で有意差が認められた。中学校時期のいじめ体験の影響“他者評価への過敏”は、その後の“友人関係”に、影響を及ぼすことが言える。
(3)高校:
自尊感情”と“友人関係”は、有意差を認めなかった。高校時期のいじめ体験は、“自尊感情”と“友人関係”に影響を及ぼすと言えない。
(4)複数時期の体験
自尊感情”は有意差を認めなかった。複数時期のいじめ体験は、“自尊感情”に影響を及ぼすと言えない。“友人関係”は、他者評価への過敏が
0.007で(p≦0.01)1%の水準で有意差が認められた。複数時期のいじめ体験の影響“他者評価への過敏”は、“友人関係”に影響を及ぼすことが
言える。

小学校や小学校以前といった早期にいじめを体験すると、自尊感情は低下し同調傾向が増すが、高校時点だと影響がない。

坂西(2004)は、「いじめ被害経験者は、自己への肯定的な評価が低いという結果が得られた(Callaghan&Joseph,1995)。オーストラリアでも、いじめられる傾向のある生徒は、自尊感情が低いことがわかった(Rigby&Slee,1993)。自尊感情との関係は研究によってわかれ、坂西(2004)18)は、「たとえば、アイルランドのオ・ムーア(O’Moore,2001)の研究が示すように、いじめ被害者同様、いじめ加害者も低い自尊感情をもつという結果を報告するものもあれば、オーストラリアのリグビー(Rigby&Slee,1993)らの調査が示すように自尊感情と関係をもたないとするものもある。」とも言っている。

・坂西友秀,いじめられる青少年の心―発達臨床心理学的考察―,岡本祐子,北大路書房,P41,(2004)

いじめと自尊感情の関連には諸説あるようだ。

(1)友人関係尺度(岡田,1999,2005)42項目:本研究では、青年期の大学生に対人関係のうち最も重要な意味を持つと考えられる友人関係に焦点を当てる。 
(1)いじめの影響尺度42項目:香取(1999)の作成した「いじめの影響尺度」を用いた。いじめ体験の影響を下位尺度(Ⅰ〜Ⅵ)“情緒的不適応”
“同調傾向” “他者評価への過敏”“他者尊重”“精神的強さ” “進路選択への影響”の6つに分類してある。

・岡田努,現代青年に特有な友人関係の取り方と自己愛賚の関連について, 立教大学教職研究,21-31,(1999)
・岡田努,現代青年の友人関係・ライフイベントと自己の発達に関する研究,金沢大学文学部論集行動科学・哲学篇,第25号,P15-32,(2005)
・香取早苗,過去のいじめ体験による心的影響と心の傷の回復方法に関する研究,カウンセリング研究, vol.32,No.1,(1999)

いじめの定義

ダン・オルウェーズは、「ある生徒が、繰り返し、長期にわたって、一人または複数の生徒による拒否的行動にさらされている場合、その生徒はいじめられている」とし、文部科学省は、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。なお起こった場所は学校の内外を問わない」と定義した(2006)。

ダン・オルウェーズ、松井賚夫・都築幸恵・ 角山剛訳,いじめーこうすれば防げる,川島書店, P65,(1995)
http://www.amazon.co.jp/dp/4761005688/
平成18年度「児童生徒の問題行動に関する調査」の見直しについて,文部科学省,(平成19年)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/040/shiryo/07052301/002.pdf