ヴィネット調査とその意義

ヴィネット調査というものを知らなかったのでヴィネット調査とその意義について簡単に調べてみた。

ci.nii.ac.jp

松田茂樹,2009,「次世代育成支援策によって出産意向は高まるか--ヴィネット調査による政策効果の推計」『ライフデザインレポート』ライフデザインレポート (189), 16-23.

ヴィネット調査とは

本調査では、個人の属性や就労状況等を尋ねた後、調査員が回答者1人に対して、さまざまな子育て支援の政策案を書いた25枚の「ヴィネットカード」を提示した。各カードには、今後拡充する少子化対策の候補とみられる、(1)児童手当の金額、(2)育児休業期間、(3)育児休業中の所得保障率、(4)保育園への入園のしやすさ、(5)幼稚園の月謝、(6)有給休暇の取得率の6つの政策変数の内容を記入した。

それぞれの項目について選択肢を用意する。

以上の6つの政策変数は、全部で3×3×3×2×3×3=486通りの組み合わせがある。本調査では、各政策変数のパターンを無作為に組み合わせて、全486通りの約5%にあたる25パターンの組み合わせを作成した。この25パターンを書いたヴィネットカードを全ての回答者に提示して、現在各カードに書かれた政策が実行された場合に、現在いる子どもの数に加えてあと何人子どもを産むか(人数)を尋ねた。

この調査では122人が対象者だが、25パターンを聞くと3050個の票が得られる。
このデータを基に、何人子どもを産むかというアウトプットに何が影響しているか、ということを分析することになる。

この論文では%の比較しかされていないが、普通に多変量解析をすればよいのではないかと思う。データの構造は入れ子になっているので、マルチレベルを想定した分析手法が望ましいのだろう。

ヴィネット調査の意義

松田(2009)ではヴィネット調査の意義を次のように説明している。

有効な次世代育成支援策を検討するための主な方法には、次の3つがある。第一は、過去の出生行動の変化から少子化を進めた要因を特定し、その要因に対処する政策を導き出す方法である。例えば、従来少なかった非正規雇用が増えたことが少子化を進めたのであれば、雇用環境を改善する政策を行うことがこれにあたる。ただし、この方法では、従来にはない政策が出生行動にどのような変化をもたらすかはわからない。 第二は、少子化対策が効果をあげた国において実施された政策を参考にする方法である。例えば、出生率が上昇したフランスや北欧で行われている政策を日本でも導入するというものである。ただし、この方法には、他国で効果をあげたといわれる政策が、わが国でどの程度の効果をもたらすかはわからないという問題がある。 これらに対して、第三に、現時点では実施されていない政策が実施された場合の効果を測定する方法にヴィネット調査がある。ヴィネットという言葉は本来まわりをぼかした肖像写真のことであるが、ヴィネット調査におけるヴィネットは、ここから転じて、ある架空の個人や世帯についてさまざまな情報を記述したカードのことを指す(織田 1992)。すなわち、ある特定の状況や特定の政策が実施された場合等の架空の状況を設定して、それに対する回答を求める方式の調査である。この方法は、1990年代前半に行われた出生行動と社会政策の関係の分析(織田 1994)のほか、適正な年金給付額の算定(織田 1992)、介護休業の利用状況の推定(末盛 1998)などに用いられている。通常の調査では、これから新たに行う次世代育成支援策の効果を測定することはできない。しかし、ヴィネット調査では、架空の状態であるが、新たにある政策が実施された場合の出生行動の変化を定量的に把握することができる。

政策を立案していくために取りうる手段としては3つあるという。

  1. 過去のデータの分析
  2. 他国のデータの分析(OECD加盟国データなど)
  3. ヴィネット調査

ヴィネット調査では、架空の状況を作り出すことができるため、新しい政策の評価などに使える利点があるようだ。1の過去のデータの分析では実際に起こった事実に基づいて、人々の行動を評価できるか、架空の状況に対して対象者が回答を行う場合には、「Aという状況ではBという行動をするつもりである」と答えるに過ぎないため、実際の行動と一致するかはわからない。おそらくこれが欠点であろう。

1や2で分析できない事柄についてヴィネット調査の登場する余地はあるように思えた。

また、行動をアウトプットにすると、上記のような欠点が指摘されるため、どのように捉えるか、どのように考えるかというような反応を計測する場合などにはよさそうな技法である。仕様用途によっては興味深い方法になるように思う。