井出草平の研究ノート

自閉スペクトラム症の原因の探索

自閉スペクトラム症関連の記事の紹介を2つほど。

blog.livedoor.jp

抗生物質が原因ではないかという論文が紹介されている。
場末P科病院の精神科医のblogがまた再開されるのかわからないが、再開するなら喜ばしいニュースだ。

日本語ではPPA(プロピオン酸)に関する論文の紹介がNewsweekでされていた。

www.newsweekjapan.jp

どちらの仮説の段階である。
ワクチン仮説のように否定される可能性も十分にあるので、何かの行動に移すのではなく、少し静観しておいた方が良いように思う。

ちなみに、現在時点で、自閉スペクトラム症の増加原因として、間違いなく確定しているのは、母親・父親のが高齢で出産するようになったことである。

食品添加物がない時代にも自閉スペクトラム症があっただろうという声が上がっているようだが、増加というのは促進要因が加わったという意味である。
遺伝的要因+環境的要因(受精から出産まで)でほとんどの精神障害は8割程度が説明できるのだが、環境要因に新たなものが加わったため、発病しやすくなったという理解が正しい。

統合失調症が過去は人口の1%程度あったが、1) 栄養状態の改善(妊娠後期の母体に十分な栄養が供給されるようになった)、2) 住環境の改善(特に冬に暖房で寒い部屋で母親が過ごさなくてもよくなった)ことによって、有病率は著しく減少した。遺伝的に素因があったとしても、発病するか否かは、(物理的な)環境によって意外と左右されるのである。