井出草平の研究ノート

業者に託した息子が孤独死…母の後悔 引きこもり“引き出し屋”の実態

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業者を知ったのは2017年1月。ホームページの「必ず自立させます」という言葉にひかれ、東京都内の本部に相談に行くと、スタッフに「早い対応が必要」と促された。提示された契約金は900万円超。自宅を売る段取りをして準備した。
長男は都内の施設に入り、その後、提携する熊本県内の研修所に移った。ほどなくして、業者から「熊本で就職した」と報告を受けた。自立を妨げないようにと、女性は連絡を控えていた。
今春になって突然、業者から電話が入った。「息子さんが亡くなりました」

もちろん悪徳業者がダメなのだが、親もダメだろう。本人が哀れでならない。
「自立を妨げないようにと、女性は連絡を控えていた」と言っているが、連絡をすると自立できない、というのはおかしい。 施設にぶち込んで親子関係が悪くなって、子どもと連絡すらできない関係性になっていたのではないだろうか。

「業者が丁寧にフォローしてくれていれば、こんなことにならなかったのでは」という主張も、親がフォローしていない理由にはならないだろう。
悪徳業者が悪いといっても、親の言い分はひどいものである。

本人は、親にも施設にぶち込まれて、親に支援を申し出ることもできず、孤立無援になり、餓死したように思える。

お金はイージーに問題を解決してくれるように見えて、物事の本質は変化させない。
とにもかくにも、世の中の人は「金さえあればなくとかなる」と考えがちである。

ひきこもり状態を問題だと考えている規範の裏には「働いて金を儲けて一人前」という考えがある。
お金は万能ではない。しかし、労働賛美の思想には、お金に対する実際以上の評価が隠れている。

ひきこもりを許容できない親の価値観、お金を支払って問題を解決しようとする親の行動は同じところからきている。
お金は万能ではないし、ごはん屋さんに入ってごはんが食べられるように、金を出してもひきこもりはなおらないという、当たり前のことに気づく必要がある。
親がそれを気づくだけで、少しはひきこもりにも寛容になれるのではないだろうか。