井出草平の研究ノート

香川県ネット・ゲーム条例、1月20日修正案の変更点

第6回検討委員会(2020年1月20日開催)が開催され、一部案が修正されたようだ。
資料はコンテンツ文化研究会のウェブページからダウンロードできる。

icc-japan.blogspot.com

注目が集まっている18条の時間制限の箇所も変更があった。

  1. 60分/90分時間制限が「スマートフォン等の使用」から「コンピュータゲームの利用」へ変更された。
  2. 保護者は子どもに「ルールを遵守させる」から「ルールを遵守させるよう努める」へ変更された。保護者の努力義務への変更。
  3. スマホ等の利用が午後9/10時までという文言は存続。
  4. 「ネット・ゲーム依存症につながるような」が午後9/10時までの時間制限にはかかっていない。18歳未満いかなる者も午後9/10時までにスマホ等の使用をやめる必要がある。
  5. 保護者に子どものネット・ゲーム依存症の相談義務が追加された。

スマホタブレットは勉強道具としても利用されているので、スマホタブレットなどの使用時間制限には批判があったのかもしれない。
使用時間制限のターゲットは「ゲーム」に絞られたが、スマホ利用が午後9/10時までというの時間制限は存続している。

18条2項の中での条文の一貫性がない

「ネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用」と書かれてあるが、ネット利用が過度であっても、ゲーム以外の使用は制限対象ではないと読める。批判を回避するための場当たり的な変更のためだと思われるが、語句が対応しておらず一貫性がない。

「ネット・ゲーム依存症につながる」のは専門家でも無理だが親にそれを求めている

保護者の責務として「ネット・ゲーム依存症につながる」ものに対応をせよ、と述べているが、「ネット・ゲーム依存症につながる」を判断するのは誰か書かれていない。そのまま読むと保護者にその能力があると仮定されているが、予測は、専門家でも不可能なのではないだろうか。

60分という成績不振との関連を示すものをネット・ゲーム依存症の基準とする問題点

60分という時間の基準がネット・ゲーム依存症へとつながるエビデンスがあるならば、60分は基準になりえるが、成績との関連しか確認されていない(参照)。
スマホ利用が成績悪化は、あくまでも相関関係であって、因果関係ではない。この点を措き、仮に60分を基準にするとしても、それは成績不振の基準にすぎず、「ネット・ゲーム依存症につながる」基準にはならない。
この条例が「ネット・ゲーム依存症につながる」ことを予防したいというならば、どのような状態になれば、「ネット・ゲーム依存症につながる」のかという基準を示すべきである。

「ネット・ゲーム依存症につながるような」の範囲が変更された

第5回案では、「ネット・ゲーム依存症につながるような」は60分まで制限と午後9時まで制限の両方に掛かっていたが、第6回案では「コンピュータゲームの利用」のみに掛かっている。この条例が定める子ども(18歳未満の者)は、仕事であろうと、宿題であろと、受験勉強であろうと、「スマートフォン等の使用」を午後9時もしくは午後10時までに中止しなければならなくなった。

第5回条例検討委員会における素案(1月10日)

(子どものスマートフォン使用等の制限)
第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなスマートフォン等の使用に当たっては、1日当たりの使用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とするとともに、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめるルールを遵守させるものする

第6回条例検討委員会における素案(1月20日

(子どものスマートフォン使用等の制限)
第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時聞が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。

3 保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、速やかに、学校等及びネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。