井出草平の研究ノート

ネット依存と希死念慮

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Fu K-W, Chan WSC, Wong PWC, Yip PSF. Internet addiction: prevalence, discriminant validity and correlates among adolescents in Hong Kong. Br J Psychiatry 2010;196(6):486-92.

方法

香港。208人の青年(15~19歳)を対象とした2波のパネル世帯調査。439世帯から511名(男性287名、女性224名)の青年にインタビューをしている。インターネット依存はYoung8を使用。希死念慮はThe Suicidal Ideation Questionnaire (SIQ)、不安はDressression Anxiety StressScales(DASS)、抑うつはCenter for Epidemiologic Studies Depression(CES-D) を使用。その他、絶望感はBeck HopelessnessScale(C-HOPE)、不合理な信念はIrrational Values Scaleを使用。

  • Reynolds WM. Suicidal Ideation Questionnaire (SIQ): Professional Manual. Psychological Assessment Resources, 1987.

結果

インターネット依存症の症状を5つ以上有する有病率は6.7%(95%信頼区間3.3~10.2)と推定。男性は8.4%(95%CI 3.3-13.5)、女性は4.5%(95%CI 0-8.9)。この標本では有意差はみられていない。

インターネット依存のカットオフである5つ以上の症状を呈したグループでは、自殺念慮抑うつ症状のスコアは時間の経過とともに増加している。

f:id:iDES:20200724145157p:plain

抑うつ希死念慮が時間と共に増加していくのであれば、介入も考える必要が出てくるだろう。

うつ病のサインとしての不眠症のようなものなのか、インターネット依存そのものがメンタルヘルスを悪化させるのかは不明である。つまり、時間的な変動があっても原因かはよくわからないということである。それは、インターネット依存によって抑うつ希死念慮が増大させられるという意味的なつながり、メカニズムがよくわからないからである。それよりも、インターネットへの没頭は心理的防衛のようなものでサインのようなものだと捉えた方が良いように思う。

相関行列は以下のもの。

f:id:iDES:20200724145211p:plain

うつ病と不眠症とネット依存

今回はインターネット依存についての研究。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Cheung LM, Wong WS. The effects of insomnia and internet addiction on depression in Hong Kong Chinese adolescents: an exploratory cross‐sectional analysis. J Sleep Res 2011;20(2):311-7.

方法

香港。中国人青年719人が対象。インターネット依存の文献。ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、中国語版インターネット嗜癖尺度(CIAS)、GHQ-12、インターネット利用パターンと社会人口統計学的特徴を調査。

結果

インターネット嗜癖のある学生(17.2%)のうち51.7%が不眠症であった。

2つの病理モデル

インターネット嗜癖(β=0.05;Sobel test Z=6.50、P<0.001)(a)と不眠症(β=0.59;Sobel test Z=4.49、P<0.001)(b)の両方がうつ病との有意な相関。

f:id:iDES:20200723223041p:plain

どちらのモデルが正しいのかはわからないが、zスコアはaのモデルの方が高いようだ。少なくとも、インターネット依存、不眠症のどちらを交絡として設定したとしても、うつ病に対する説明力はあるということのようだ。逆、つまり、うつ病が説明変数(独立変数)になることもあるのでは、と思ったが、この論文ではよくわからない。

ゲーム障害と確率割引(probabilitydiscounting)

インターネットゲーム障害の人が長時間のゲームプレイの結果、ネガティブな結果が出ているにもかかわらず、オンラインゲームを続けている理由を脳機能異常ではないかと示唆する論文。念のため記すると、ゲームが原因か、ADHDなどの併存症/リスクが原因かは不明である。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov - Lin X et al. 2015, Impaired risk evaluation in people with Internet gaming disorder: fMRI evidence from a probability discounting task, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.56:142-8.

確率割引(PD: probabilitydiscounting)

確率による価値割引は,確実に受け取ることができる少額の報酬と受け取りが不確実な多額の報酬との選択から知ることができる。例えば,“確実な 7 万円”と“80%の 10 万円”のどちらかを選択する場合,多くの人は“確実な 7 万円”を選択する。これは,80%という確率が伴うことで 10 万円の価値が割り引かれたためと考えられ,これを確率価値割引という。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/79/2/79_2_172/_pdf

ゲーム障害における確率割引

過度なオンラインゲームのプレイは、高いレベルの報酬刺激を求めたいという欲求や、結果や結果を考慮せずにリスクを伴う行動を行う、リスクテイキングの特徴と関連している可能性が指摘されている(Kelley et al., 2004)。

このリスクテイク傾向は物質使用障害(Bechara et al., 2001; Lukasiewicz et al., 2008; Tomassini et al., 2012)や病的ギャンブル(Miedl eta l.,2012)と関連していることが報告されている。

  • Bechara A, Dolan S, Denburg N, Hindes A, Anderson SW, Nathan PE. Decision-making deficits, linked to a dysfunctional ventromedial prefrontal cortex, revealed in alcohol and stimulant abusers. Neuropsychologia 2001;39(4):376–89. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11164876/

  • Lukasiewicz M, Neveu X, Blecha L, Falissard B, Reynaud M, Gasquet I. Pathways to substance-related disorder: a structural model approach exploring the influence of temperament, character, and childhood adversity in a national cohort of prisoners. Alcohol Alcohol 2008;43(3):287–95. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18283097/

  • Tomassini A, Struglia F, Spaziani D, Pacifico R, Stratta P, Rossi A. Decision making, impulsivity, and personality traits in alcohol‐dependent subjects. Am J Addict 2012;21(3): 263–7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22494229/

  • Miedl SF, Peters J, Büchel C. Altered neural reward representations in pathological gamblers revealed by delay and probability discounting. Arch Gen Psychiatry 2012;69(2):177–86. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22310505/

ゲーム障害の人は新規性を求める

IGDの被験者は健常者に比べて新規性を求める傾向が高いことが研究で明らかになっている(Ko et al., 2006)。

クロニンジャーっぽい話。

確率割引と脳機能

確率的状況下でのパフォーマンスは、いくつかの脳構造、特に前頭前野(prefrontal cortex)、島(insula,)、頭頂皮質(頭頂葉皮質 )、腹側線条体(ventral striatum)と関連している(Cardinal, 2006; Critchley et al., 2001; Huettel et al., 2005; Huettelet al., 2006; Kuhnen and Knutson, 2005; Paulus et al., 2001; Rudorfet al., 2012; Weber and Huettel, 2008)。また、後頭頂葉(posterior parietal cortex)の活性化はリスク選好によって予測される(Peters and Buchel, 2009)。さらに、後頭頂葉皮質(posterior parietal cortex)の活性化はリスク選好性によって予測される(Peters and Buchel, 2009)。

ゲーム障害と健常対照群の比較

インターネットゲーム障害群と健常対照群群の脳活動(可能性と関連する大きな報酬の選択-固定報酬の選択)を比較。インターネットゲーム障害群では、HC群に比べて左半球の前下前頭回(IFG:anterior inferior frontal gyrus)および中心前回(precentral gyrus)でのBOLD信号の活性化が少ないことが示された。

f:id:iDES:20200721144811p:plain

IGD被験者と健常対照群を比較した場合の脳領域の違い(((IGD可能-IGD固定)-(HC可能-HC固定))。
(A):IGD被験者は健常対照群よりも前頭葉の活性が低下していることを示している。 (B): IF値のピークとIF値の相関。(C):IFG活性化のピークとRTの相関。

結論

インターネットゲーム障害被験者はリスク回避能力が低下し、リスクの高い選択の背後にある潜在的損失を十分に評価することができない。これらの結果は、広く知られているネガティブな結果のリスクにもかかわらず、インターネットゲーム障害の被験者がオンラインゲームを継続してプレイする理由になると考えられる。これらの結果は、私たちが最近提案したインターネットゲーム障害に関する認知モデル(Dong and Potenza, 2014)を支持するものでもある。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov - Dong G, PotenzaMN. A cognitive–behavioral model of Internet gaming disorder: theoreticalunderpinnings and clinical implications. J Psychiatr Res 2014;58(1):7–11.

斎藤環さんを「ひきこもり利権で小銭稼いでる精神科医のおっさん」と非難していた増田が「斎藤さんの言っている内容は正論」と認めるまで(はてな匿名ダイアリー)

anond.hatelabo.jp

ブコメでも薦められてましたが、斎藤環著『中高年ひきこもり』は僕も読みましたがお勧めです。過去に実家の弟の引きこもり問題がひどかったころは「なにを悠長なこと言っているんだコイツは」とキレてたものですが苦笑、すべてが終わってみると斎藤さんの言っている内容は正論でした。ただあれに書いてある内容を親御さんが実行するのは想像以上にキツイだろうし、多くの家庭はその途中で断念しているんだろうなとも思ってます。

手っ取り早い方法を選んでしまうのは仕方ないことことだが、失敗した話しか聞かない。 斎藤環さんを「ひきこもり利権で小銭稼いでる精神科医のおっさん」と非難していた増田が、「すべてが終わってみると斎藤さんの言っている内容は正論でした」という話。

中高年ひきこもり (幻冬舎新書)

中高年ひきこもり (幻冬舎新書)

  • 作者:斎藤 環
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 新書

個人的には、オープンダイアローグを経たのちの斎藤さんひきこもり支援法は一段階洗練されたように思う。

「親御さんが実行するのは想像以上にキツイ」というのは、家族として理性的に対応するのは難しいためだと思う。 そのために、第三者の助けが多くの家族では必要なのも間違いない。
三者の助けというのは、第三者に解決してもらうのではなく、家族が解決できるようにコーチングしてもらうということで、家族を支援主体に変化させることが何よりも重要なこと。
このことが、理解されていないケースが多いように思う。

ひきこもり利権で小銭稼いでる精神科医のおっさん

こんな精神状態で年末年始にはてぶであがってたNHKの「ひきこもり新聞」の特集を読んだときは発狂しそうになった。あのひきこもり利権で小銭稼いでる精神科医のおっさんがインタビューに答えてるんだけど、テレビやラジオではあの引きこもり対策団体をボロクソいってたくせに、あの団体の成果も実は認めてるんだよね。あいついわく「ああいう支援は一部の人には有効なんです。それは事実。僕が反対する理由は、有効性はあるかもしれないが、失敗事例が目も当てられないから。」だってさ。少しはひきこもりに悩まされてる家族のこととか考えたことある???俺の母親なんてここ1年は家じゃほとんど眠れずストレスで血尿でてるんだぜ?ひきこもりのクズの人権守るためには周りの家族なんてどうでもいいんか???
https://anond.hatelabo.jp/20170201173533

ゲームに熱中する子に対して、してはいけない3つのタブー 関正樹さんインタビュー(不登校新聞)

futoko.publishers.fm

とくに、学習成績はゲームとセットで語られることが多い論点ですが、「ゲームと学習成績を結びつけて語ることは、親子関係において何もよい方向に働かない」というのが私の考えです。
むしろ、悪影響を及ぼす可能性のほうが高いな、と。「ゲームをやめないと成績が下がって困るわよ」という親の一言で勉強するようになる子どもはごく一部です。


ゲームのよいところは、大きく4つあると考えています。 1つ目は「ゲーム上手はヒーローである」ということ。ゲームが上手な子は彼らの世界で一目置かれます。それ自体が友人関係などにおけるストレスから自分を守る保護因子になるわけです。
2つ目は「チャレンジへの耐性がつく」ということ。ゲームによっては試行錯誤を何度もくり返さないと先に進めないものもありますので、ゲームを通じて身につく力だと思います。
また「ゲームは子ども世界の共通言語である」ということ、これが3つ目です。逆に言えば、ゲームをまったくやらずに子どもの世界を生きていくというのは、現実問題として非常に難しいんです。
最後に「離れた友だちといっしょに遊べる」ということ。コロナ禍のステイホームにおいて、ゲームがその機能を果たしていたのは、子どものメンタルヘルスから考えると非常に大きな意味があったと私は考えています。

構造方程式モデリングによる構成概念の因果関係[R]

今回扱うのは構造方程式によって作成した概念の因果を検証するモデルである。

f:id:iDES:20200721004606p:plain

データ

lavaanに同梱されているPoliticalDemocracyを使用する。詳細はこちらのエントリ

y1 1960年の報道の自由に関する専門家の評価
y2 1960年の政治的反対運動の自由
y3 1960年の選挙の公平性
y4 1960年の選出立法府の有効性
y5 1965年の報道の自由に関する専門家の評価
y6 1965年の政治的反対運動の自由
y7 1965年の選挙の公平性について
Y8 1965年の選出立法府の有効性
x1 1960年の一人当たり国民総生産(GNP)
x2 1960年の一人当たりの無生物エネルギー消費量
x3 1960年の産業界における労働力の割合む

経済発展が民主化を促進するというモデルの検討を行う。

モデル

library(lavaan)
model <- ' f1 =~ x1+x2+x3
           f2 =~ y1+a*y2+b*y3+c*y4
           f3 =~ y5+a*y6+b*y7+c*y8
           f2 ~  f1
           f3 ~  f1+f2
           y1 ~~  d*y1 + y5
           y2 ~~  e*y2 + y6
           y3 ~~  f*y3 + y7
           y4 ~~  g*y4 + y8
           y5 ~~  d*y5
           y6 ~~  e*y6
           y7 ~~  h*y7
           y8 ~~  i*y8 '

y1-y4とy5-y8はそれぞれ同じ項目である。1960年に計測したものと、1965年に計測したもので計測時点に違いがある。 同じ項目であるy1がy5は、時点が変わっても大きく変わらないと推測できるため、ここではそれぞれ同じ影響指標で推定される「等値制約」で推定している。

f2 =~ y1+a*y2+b*y3+c*y4
f3 =~ y5+a*y6+b*y7+c*y8

y2とy6は同じ項目なためa*という記号を付け、同じようにbとcをつける。

モデルの実行

fit <- sem(model, data=PoliticalDemocracy)
summary(fit,fit.measures=T,standardized=T)

時点間の相関

等値制約を課した民主化の程度の4項目の誤差の相関は次のようになっている。

Covariances:
                   Estimate  Std.Err  z-value  P(>|z|)   Std.lv  Std.all
 .y1 ~~                                                                 
   .y5                0.869    0.364    2.386    0.017    0.869    0.364
 .y2 ~~                                                                 
   .y6                1.937    0.785    2.468    0.014    1.937    0.356
 .y3 ~~                                                                 
   .y7                1.129    0.627    1.801    0.072    1.129    0.252
 .y4 ~~                                                                 
   .y8                0.161    0.471    0.343    0.732    0.161    0.063

y1 ~~ y5: 報道の自由に関する専門家の評価
y2 ~~ y6: 政治的反対運動の自由
y3 ~~ y7: 選挙の公平性
y4 ~~ y8: 選出立法府の有効性

'y4 ~~ y8'は0.063と低く、他の3項目は0.2-0.4の間にあり、y1 ~~ y5の報道の自由民主化の程度の予測として使用できることがわかる。
ちなみに、パス図に出力されている値は右から2列目の標準化されていない共変量である。
どうでもよいことだが、semPlotの中のコードをwhatLabels="stand"にすると相関係数を出力できる。

結果

lavaan 0.6-6 ended normally after 57 iterations

  Estimator                                         ML
  Optimization method                           NLMINB
  Number of free parameters                         29
  Number of equality constraints                     5
                                                      
  Number of observations                            75
                                                      
Model Test User Model:
                                                      
  Test statistic                                57.739
  Degrees of freedom                                42
  P-value (Chi-square)                           0.054

Model Test Baseline Model:

  Test statistic                               730.654
  Degrees of freedom                                55
  P-value                                        0.000

User Model versus Baseline Model:

  Comparative Fit Index (CFI)                    0.977
  Tucker-Lewis Index (TLI)                       0.969

Loglikelihood and Information Criteria:

  Loglikelihood user model (H0)              -1557.598
  Loglikelihood unrestricted model (H1)      -1528.728
                                                      
  Akaike (AIC)                                3163.196
  Bayesian (BIC)                              3218.815
  Sample-size adjusted Bayesian (BIC)         3143.174

Root Mean Square Error of Approximation:

  RMSEA                                          0.071
  90 Percent confidence interval - lower         0.000
  90 Percent confidence interval - upper         0.112
  P-value RMSEA <= 0.05                          0.222

Standardized Root Mean Square Residual:

  SRMR                                           0.067

Parameter Estimates:

  Standard errors                             Standard
  Information                                 Expected
  Information saturated (h1) model          Structured

Latent Variables:
                   Estimate  Std.Err  z-value  P(>|z|)   Std.lv  Std.all
  f1 =~                                                                 
    x1                1.000                               0.670    0.920
    x2                2.179    0.138   15.743    0.000    1.460    0.973
    x3                1.818    0.152   11.973    0.000    1.218    0.872
  f2 =~                                                                 
    y1                1.000                               2.127    0.809
    y2         (a)    1.345    0.151    8.926    0.000    2.862    0.775
    y3         (b)    1.205    0.133    9.066    0.000    2.563    0.739
    y4         (c)    1.367    0.128   10.700    0.000    2.908    0.881
  f3 =~                                                                 
    y5                1.000                               2.056    0.799
    y6         (a)    1.345    0.151    8.926    0.000    2.766    0.765
    y7         (b)    1.205    0.133    9.066    0.000    2.477    0.791
    y8         (c)    1.367    0.128   10.700    0.000    2.810    0.864

Regressions:
                   Estimate  Std.Err  z-value  P(>|z|)   Std.lv  Std.all
  f2 ~                                                                  
    f1                1.420    0.379    3.752    0.000    0.447    0.447
  f3 ~                                                                  
    f1                0.563    0.210    2.676    0.007    0.184    0.184
    f2                0.835    0.069   12.060    0.000    0.864    0.864

Covariances:
                   Estimate  Std.Err  z-value  P(>|z|)   Std.lv  Std.all
 .y1 ~~                                                                 
   .y5                0.869    0.364    2.386    0.017    0.869    0.364
 .y2 ~~                                                                 
   .y6                1.937    0.785    2.468    0.014    1.937    0.356
 .y3 ~~                                                                 
   .y7                1.129    0.627    1.801    0.072    1.129    0.252
 .y4 ~~                                                                 
   .y8                0.161    0.471    0.343    0.732    0.161    0.063

Variances:
                   Estimate  Std.Err  z-value  P(>|z|)   Std.lv  Std.all
   .y1         (d)    2.389    0.368    6.488    0.000    2.389    0.346
   .y2         (e)    5.436    0.791    6.869    0.000    5.436    0.399
   .y3         (f)    5.457    1.012    5.394    0.000    5.457    0.454
   .y4         (g)    2.448    0.637    3.845    0.000    2.448    0.225
   .y5         (d)    2.389    0.368    6.488    0.000    2.389    0.361
   .y6         (e)    5.436    0.791    6.869    0.000    5.436    0.415
   .y7         (h)    3.666    0.708    5.180    0.000    3.666    0.374
   .y8         (i)    2.680    0.629    4.258    0.000    2.680    0.253
   .x1                0.081    0.019    4.173    0.000    0.081    0.153
   .x2                0.121    0.070    1.730    0.084    0.121    0.054
   .x3                0.467    0.090    5.175    0.000    0.467    0.239
    f1                0.449    0.087    5.175    0.000    1.000    1.000
   .f2                3.619    0.840    4.310    0.000    0.800    0.800
   .f3                0.332    0.189    1.758    0.079    0.079    0.079

プロット

パス図の出力のコードは以下。

library(semPlot)
semPaths(fit,layout="tree",whatLabels="est", 
style="lisrel",sizeMan=7,sizeLat=10,sizeLat2=8,
edge.color="black",curve=1,curvePivot=F,edge.label.cex=1.2)

精神障害と灰白質の減少に関するメタアナリシス

精神障害の全脳を対象としたボクセルベース・モルフォメトリー(voxel-based morphometry: VBM)研究のメタアナリシス。

www.ncbi.nlm.nih.gov

  • Goodkind M. et al. 2015, Identification of a Common Neurobiological Substrate for Mental Illness, JAMA Psychiatry. 72(4): 305-315.

メタアナリシスの基準

(1)精神科診断を受けた患者の灰白質の解析にVBMを使用している、(2)これらの患者と健常者の対照群との比較を含む、(3)全脳解析を実施している、(4)定義された定位空間(例えば、Talaraich spaceもしくは、Montreal Neurological Institute space)での座標を報告している、という条件で選択。

診断と対象人数

6つの診断群(統合失調症双極性障害うつ病、依存症、強迫性障害、不安症)、193件の研究、15,892人のメタアナリシス。

結果

精神障害の患者の大部分(85%)は、健常対照群と比較して灰白質が減少していた。 灰白質が減少していたのは両側前島(Bilateral Anterior Insula)、前帯状皮質背側部(dACC: dorsal Anterior Cingulate)、前頭前野背内側部(Dorsomedial Prefrontal Cortex)、前頭前野腹内側部(Ventromedial Prefrontal Cortex)、視床(Thalamus)、扁桃体(Amygdala)、海馬(Hippocampus)、上側頭回(Superior Temporal Gyrus)、頭頂弁蓋(Parietal Operculum)(図2A、補足の表3)。対照的に、患者の灰白質の増加は線条体のみで認められた(補足の図1Aと表3)。

f:id:iDES:20160305160737j:plain

精神病性障害と非精神病性障害の共通性

精神病診断群/非精神病診断群とも両群の両側の前島(anterior insula)と前帯状皮質背側部(dACC: dorsal Anterior Cingulate)に有意な灰白質の消失があった(図2B、補足表4-6)。 ある領域での灰白質欠損の存在は、他の領域での灰白質欠損の確率よりも高い確率を予測した(カイ二乗>4.3 ; P < 0.05, for all)。 対照的に、患者の線条体(Striatum)における灰白質の増加は精神病性障害の診断群でのみ明らかであった(補足図1B、補足表4)。

精神病性障害と非精神病性障害の比較

精神病性障害では内側前頭前野(Medial Prefrontal Cortex)、島(Insula)、視床(Thalamus)、扁桃体(Amygdala)の灰白質の消失が大きい(図3A、表7)。また、線条体(Striatal)での灰白質の増加が大きい(図3B、表8)。

非精神性障害を内発性(うつ病[MDD]、強迫性障害[OCD]、不安症[ANX])と、外発性(物質使用障害)、双極性障害のの3つのグループに分けて比較した。内発性障害では、外在化性障害(図3A、補足の表1)や双極性障害(図4、補足の表8)と比較して、海馬(Hippocampal)、扁桃体(Amygdala)の灰白質の喪失が大きかった。この効果の多くは大うつ病性障害の群によって起こっていて、他の内発性障害、外在化、双極性障害よりも大きな海馬と扁桃灰白質において灰白質の損失を起こしていた。

f:id:iDES:20160305160811j:plain

診断、年齢、投薬、併存疾患の影響

左前島(Left Anterior Insula)、右前島(Right Anterior Insula)、前帯状皮質背側部(dACC: dorsal Anterior Cingulate)の3領域に関して、灰白質減少の確率を示す。

f:id:iDES:20160305160753j:plain

精神病性障害の方が灰白質の減少がみられる確率が高かった。また、発症時年齢(106研究で報告)または罹患期間(148研究で報告)は関連がなかった。

抗精神病薬の服用が線条体における灰白質の増加の原因

薬物の影響について。
非精神病診断群では、64%の研究で薬物治療を受けた患者が含まれていたが、これは島皮質(Insula)、前帯状皮質背側部における灰白質減少とは関連がなかった。精神病診断群では、90%の研究で薬物療法を受けた患者が含まれていおり、同じく薬物療法灰白質減少を予測していない。抗精神病薬の服用は線条体灰白質の増加と関連しており、精神病性障害群でのみ線条体灰質が増加していた。

認知症との関連

行動変化型の前頭側頭型認知症は前島(Anterior Insula)と前帯状皮質背側部(dACC: dorsal Anterior Cingulate)での灰白質の減少が知られており、早期にはに精神障害と間違われることもある。