井出草平の研究ノート

日本語文献におけるクロンバックα、合成信頼性、平均分散抽出の使用例

ci.nii.ac.jp

各因子の信頼性に関して,クロンバックα係数(Cronbach’s α)および合成信頼性(Composite Reliability:CR)を用いて検証を行った.クロンバックα係数には,Hairet al.35)の基準値(α≧.70)を設定し,合成信頼性にはBagozzi & Yi 36)の基準値(CR ≧ .70)を設定した.また,心理的要因の妥当性に関して,収束的妥当性および弁別的妥当性の両側面から検討を行った.収束的妥当性に関しては,平均分散抽出(Average Variance Extracted:AVE) を用いて検証を行い,Fornell &Larcker37)の指摘を参考に基準値(AVE≧.50)を設定した.弁別的妥当性に関して,AVEが因子間相関の平方より高い場合に弁別的妥当性が確認されることが報告されている37).本研究においても同様の基準を設定し,AVEおよび因子間相関の平方の比較を行った.適合度指標は先行研究8)と同様にCFI,RMSEA,SRMRを採用し,それぞれの適合度指標に関して基準値(CFI ≧ .90;RMSEA ≦ .08;SRMR ≦ .08)を設定した38).最後に3つ目のステップとして,本研究ではブートストラップ法を用いた構造方程式モデリング(Structural EquationModeling:SEM)により直接効果および間接効果の検討を行った.これまで間接効果の検討に関して,多くの研究でBaron & Kenny39)が提唱する方法に従って検討がなされてきた.一方で近年,ブートストラップ法により間接効果の信頼区間を算出する必要性が指摘されている40).したがって本研究では,Preacher &Hayes40)の手順に従い,間接効果の検討を行った.分析にはIBM SPSS Statistics 25.0および IBM SPSS Amos 25.0を用いた.

35)Hair, J. F., et al.;Multivariate data analysis:A global perspective (7th ed.), Prentice hall,2010.
36)Bagozzi, R. P. & Yi, Y.;On the evaluationof structural equation models, Journal of the academy of marketing science, Vol.16, No.1, pp.74-94, 1988.
37)Fornell, C. & Larcker, D. F.;Evaluating structural equation models with nobservable variables and measurement error, Journal of marketing research, Vol.18, No.1, pp.39-50, 1981.
38)Hu, L. T. & Bentler, P. M.;Cutoff criteria for fit indexes in covariance structure analysis: Conventional criteria versus new alternatives, Structural equation modeling, a multidisci plinary journal, Vol.6, No.1, pp.1-55, 1999.
39)Baron, R. M. & Kenny, D. A.;The moderator–mediator variable distinction in social psychological research:Conceptual, strategic, and statistical considerations, Journal of personality and social psychology, Vol.51, No.6, pp.1173-1182, 1986.
40)Preacher, K. J. & Hayes, A. F.;Asymptotic and resampling strategies for ssessing and comparing indirect effects in multiple mediator models, Behavior research methods, Vol.40, No.3, pp.879-891, 2008.

f:id:iDES:20201108161637p:plain

平均分散抽出(AVE)をsemToolsで計算する[R]

平均分散抽出average variance extracted (AVE) 。Fornell&Larcker基準とも言われている。

rdrr.io

計算

library(semTools)
HS.model <- ' visual  =~ x1 + x2 + x3
              textual =~ x4 + x5 + x6
              speed   =~ x7 + x8 + x9 '
dat <- HolzingerSwineford1939[, paste0("x", 1:9)]
fit <- cfa(HS.model, data = dat)
reliability(fit)
reliability(fit, return.total = TRUE) ## 合成信頼性を返す

結果。

          visual   textual     speed
alpha  0.6261171 0.8827069 0.6884550
omega  0.6253180 0.8851754 0.6877600
omega2 0.6253180 0.8851754 0.6877600
omega3 0.6120052 0.8850608 0.6858417
avevar 0.3705589 0.7210163 0.4244883
          visual   textual     speed     total
alpha  0.6261171 0.8827069 0.6884550 0.7604886
omega  0.6253180 0.8851754 0.6877600 0.8453351
omega2 0.6253180 0.8851754 0.6877600 0.8453351
omega3 0.6120052 0.8850608 0.6858417 0.8596204
avevar 0.3705589 0.7210163 0.4244883 0.5145874

データについてはこちらを参照。

ides.hatenablog.com

平均分散抽出の解釈

en.wikipedia.org

平均分散抽出(AVE)は0.5より高いが、0.4は許容できる。FornellとLarckerは、AVEが0.5未満でも、合成信頼性composite reliabilityが0.6以上であれば、構成概念の収束的妥当性は十分であると述べている(Fornell & Larcker, 1981)。 https://researchhub.org/common-issues-in-structural-equation-modelling-sem-and-their-solutions/

https://www.jstor.org/stable/3150980 https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/35622/b1378752.0001.001.pdf - Fornell and Larcker, 1981, Structural Equation Models with Unobservable Variables and Measurement Error: Algebra and Statistics, Journal of Marketing Research. 18(3): 382-388.

平均分散抽出の欠点が指摘されいて、近年ではHTMTが使われている。こちらを参照のこと。

ides.hatenablog.com

伝統的な部分最小二乗パスモデリングや一般化された構造化成分分析のような分散ベースの構造方程式モデリングの結果と組み合わせて使用すると、Fornell-Larcker基準は感度を欠き(Rönkkö & Evermann, 2013)、一貫した推定値と組み合わせて使用すると特異性を欠く(Voorhees, Brady, Calantone & Ramirez, 2016)。

パチンコ屋へ行くと「すごく気持ちが落ち着いた」 青木さやかが明かすギャンブル依存の過去(BuzzFeed)

www.buzzfeed.com

「でも、同い年の女性で集まって恋愛の話をするような楽しい気分でもないし、お金もない。何となく孤独で。そんな時、すごく賑やかで、1人だけどみんながいるパチンコ屋さんへ行くとすごく気持ちが落ち着いたんです」

インターネット依存症における灰白質と白質の異常

journals.plos.org

インターネット・アディクション障害(internet addiction disorder: IAD)が対象。灰白質神経細胞の細胞体が存在している部位のこと。ボクセルベースの形態計測法(VBM)を用いてIADの青年期の脳の形態を調べ、拡散テンソルイメージング(DTI)法を用いて白質分画異方性(FA)の変化を調べてた研究。2011年の中国での研究。この種の研究ではかなり早い時期に発表されたものである。現在の研究の常識からいうと、少し前のスタンダードな考え方が展開されているように思う。

VBMの結果

VBMで判明するのは灰白質の観察ができる。ここから神経細胞の減少・欠損について調べることができる。
両側背側前頭前野bilateral dorsolateral prefrontal cortex(DLPFC)、補助運動野supplementary motor area(SMA)、眼窩前頭皮質 orbitofrontal cortex(OFC)、小脳cerebellum 、左吻側ACC left rostral ACC(rACC)の灰白質体積が減少していた。

右DLPFC、左rACC、右SMAの灰白質体積は、インターネット依存のの月数と負の相関を示した。健常対照者よりも高い灰白質体積を示した脳領域はなかった。

f:id:iDES:20201106224421p:plain

f:id:iDES:20201106224433p:plain

DTIの結果

DRIは白質の神経線維の観察ができる。
左内包後肢left posterior limb of the internal capsule(PLIC)のFA値が高く、右海馬傍回right parahippocampal gyrus(PHG)FA値が低かった。左PLICのFA値はインターネット中毒の持続時間と正の相関を示す傾向があった(r = 0.5869, p < 0.05)が、右PHGのFA値とインターネット中毒の持続時間との間には有意な相関は認められなかった。

f:id:iDES:20201106224503p:plain

IAD群の灰白質体積と白質FA値の相互作用解析を行ったところ、これら2つの測定値の間に有意な相関は認められなかった。形態的変化では灰白質と白質の関連して変化していないことがわかった。白質の異常と灰白質の異常が連動していなことは比較的重要である。インターネット依存によって灰白質と白質の異常が生じていると仮定した場合、両者の異常が関連していることが、その仮説を支持するからである。相関がないことでインターネット依存によって白質と灰白質で異常が起こっているという仮説を棄却できるわけではないが、関連がないことには着目すべきである。

議論

数多くの脳機能イメージング研究により、DLPFCとrACCが認知制御に中枢的に関与していることが明らかになっている [48], [49]。さまざまな神経認知研究により、認知制御はrACCとDLPFCを含む特定の皮質下皮質回路に関係していることが明らかになっている [50], [51]。著名な葛藤モニタリング仮説[47], [52]によると、応答の葛藤の発生はrACCによって信号化され、その後のパフォーマンスのためのより多くの認知制御のためにDLPFCのリクルートにつながる。DLPFCのこの重要な役割は、認知制御のトップダウン制御プロセスを伴う神経科学研究で確認されている[53]。最近の神経イメージング研究では、ヘロイン依存者[54]、[55]およびコカイン使用者[45]におけるGO/NOGOタスクでのrACCの不活性化も開示されており、認知制御におけるrACCの重要な役割を示唆している[46]。 また、OFCは、刺激の動機付け的意義の評価や、所望の結果を得るための行動の選択を通じて、目標指向行動の認知制御にも寄与すると考えられている[56]。OFC は線条体大脳辺縁系扁桃体など)との広範なつながりを持っている。その結果、OFCは、動機づけ行動や報酬処理に関連するいくつかの大脳辺縁系および皮質下層領域の活動を統合するためによく位置しています[57]。いくつかの動物実験では、OFCとラット大脳辺縁前皮質(ヒトのDLPFCの機能的相同体)の両方に損傷があると、反応と結果の間の偶発性に導かれる行動の獲得と修正が損なわれることが示されており、これらの領域が目標に向けられた行動の認知制御に重要であることが示されている [56], [58]。 SMAは、適切な反応の実行を選択するか、不適切な反応の抑制を選択するかに関わらず、適切な行動を選択するために重要である [59]。いくつかの研究者は、単純なGO/NOGO課題と複雑なGO/NOGO課題の両方がSMAに関与していることを発見し、認知制御を媒介するSMAの重要な役割を明らかにした [46], [60]。 DLPFC、rACC、OFC、SMA、小脳における灰白質体積の減少という我々の結果(図1)は、少なくとも部分的には、インターネット中毒における認知制御および目標指向行動機能障害と関連している可能性があり、インターネット中毒の基本的な症状を説明する可能性がある[15], [19], [20], [28]。 PHGは海馬を取り囲む脳領域であり、記憶の符号化と検索に重要な役割を果たしている [65], [66]。PHGは、海馬への主要な多感覚入力を内耳接続を介して提供し、様々な感覚情報の組み合わせのレシピエントであり[67], [68]、認知や感情の調節に関与している[69]。最近、いくつかの研究者は、右 PHG がワーキングメモリにおける結合情報の形成と維持に寄与していることを示唆した [70]。ワーキングメモリは情報の一時記憶とオンライン操作に専念しており、認知制御に重要である[71]。ワーキングメモリは情報の一時的な記憶とオンライン操作のためのものであり、認知制御に重要な役割を果たしている[71]。最近、Liuら[72]は、IAD患者の大学生の両側PHGにおいて、対照群と比較してReHoが増加したことを報告しており、この結果は脳の機能的変化を反映しており、おそらく報酬経路に関連していると考えられる。明らかに、IADにおけるPHGの正確な役割を理解するためには、より多くの研究が必要である。 内包は上昇軸索と下降軸索の両方を含むレンズ核から馬尾核と視床を分離する脳の白質の領域である。内被膜には皮質脊髄線維と皮質橋線維 に加えて、視床皮質線維と皮質投射線維が含まれている [73], [74]。内被膜の後肢には、体からの皮質脊髄線維、感覚線維(内側半月板と前側系を含む)、およびいくつかの皮質球筋線維が含まれる [73]-[76]。一次運動野は内包後肢を介して軸索を送り、指の運動や運動イメージに重要な役割を果たしている[77], [78]。内被膜の強化におけるFA値が変化した理由として考えられるのは、IADの被験者がコンピュータゲームに費やす時間が長く、マウスのクリックやキーボードのタイピングなどの反復的な運動動作が内被膜の構造を変化させたためであると考えられる。他の研究[79]-[81]でトレーニングが脳の構造を変化させたという知見があるように、これらの長期トレーニングがPLICの白質構造を変化させたのではないかと考えられる。前頭脳領域と皮質下脳領域間の情報伝達は、内部カプセルを通過する白質線維路に依存して、より高い認知機能と人間の行動を変調させた[82], [83] [84]。内部カプセルの構造的異常は、結果的に認知機能を阻害し、執行機能や記憶機能を損なう可能性がある[85]。左PLICのFA値の異常は、感覚情報の伝達と処理に影響を与え、最終的に認知制御の障害につながる可能性がある[86], [87]。

先行研究

先行研究として早期の脳への影響がその後の精神障害の発生に関わっているという説が引用されている。樋口進さんが主張していることの根拠になるような文献であるが、いずれも2000年代前半のもので、当時の考え方としては妥当だと思うが、現在の考え方とは異なっている。児童分野では、自閉症ADHDなどの研究を経たことで、思考が大きく異なってきた印象がある。

比較的未熟な認知制御[3]-[7]の存在は、この時期を脆弱性と適応[8]の時期とし、青年期の情動障害と依存症の高い発生率につながる可能性がある[8]-[10]。

  • 3.Casey B, Tottenham N, Liston C, Durston S (2005) Imaging the developing brain: what have we learned about cognitive development? Trends in Cognitive Sciences 9: 104–110.
  • 4.Casey B, Galvan A, Hare T (2005) Changes in cerebral functional organization during cognitive development. Current opinion in neurobiology 15: 239–244.
  • 5.Ernst M, Nelson E, Jazbec S, McClure E, Monk C, et al. (2005) Amygdala and nucleus accumbens in responses to receipt and omission of gains in adults and adolescents. Neuroimage 25: 1279–1291.
  • 6.May J, Delgado M, Dahl R, Stenger V, Ryan N, et al. (2004) Event-related functional magnetic resonance imaging of reward-related brain circuitry in children and adolescents. Biological Psychiatry 55: 359–366.
  • 7.Galvan A, Hare T, Parra C, Penn J, Voss H, et al. (2006) Earlier development of the accumbens relative to orbitofrontal cortex might underlie risk-taking behavior in adolescents. Journal of Neuroscience 26: 6885–6892.
  • 8.Steinberg L (2005) Cognitive and affective development in adolescence. Trends in Cognitive Sciences 9: 69–74.
  • 9.Pine D, Cohen P, Brook J (2001) Emotional reactivity and risk for psychopathology among adolescents. CNS spectrums 6: 27–35.
  • 10.Silveri M, Tzilos G, Pimentel P, Yurgelun-Todd D (2004) Trajectories of adolescent emotional and cognitive development: effects of sex and risk for drug use. Annals of the New York Academy of Sciences 1021: 363–370.

まだ正式に精神病理学的枠組みの中で成文化されているわけではないが、IADの普及率は高まっており、精神科医、教育者、一般の人々の注目を集めている。思春期の若者の認知制御は比較的未熟であるため、IADに罹患するリスクが高い。

残念ながら、現在のところIADの標準化された治療法はない。中国の診療所では、規則正しい時間割、厳格な規律、電気ショック療法(electric shock treatment)を実施しており、これらの治療アプローチで評判を呼んでいる[13]

  • 13.Flisher C (2010) Getting plugged in: An overview of Internet addiction. Journal of Paediatrics and Child Health 46: 557–559.

中国では電気針など電気系の治療法が使うグループがいる。ECTではなく、電気ショック療法と表記されているのはかなり怖い。

Beard and Wolf [16], [29]の修正されたYoung Diagnostic Questionnaire for Internet addiction (YDQ)基準が使用されている。YDQの修正によって何が変わるかがよくわからなかったので、原著にあたるのがよさそうだ。

  • 29.Beard K, Wolf E (2001) Modification in the proposed diagnostic criteria for Internet addiction. CyberPsychology & Behavior 4: 377–383.

HTMTをsemToolsで求める[R]

www.rdocumentation.org

library(semTools)
HS.model <- ' visual  =~ x1 + x2 + x3
              textual =~ x4 + x5 + x6
              speed   =~ x7 + x8 + x9 '
dat <- HolzingerSwineford1939[, paste0("x", 1:9)]
htmt(HS.model, dat, sample.cov = NULL, missing = "listwise",
     ordered = NULL, absolute = TRUE)

結果。

        visual textul speed
visual  1.000              
textual 0.424  1.000       
speed   0.467  0.290  1.000

データの詳細はこちら。

ides.hatenablog.com

HTMTについてはこちら。

ides.hatenablog.com

HTMT(Heterotrait-Monotrait Ratio of Correlations)

弁別的妥当性の指標であるHTMT(heterotrait-monotrait ratio of correlations)について。HTMTの提唱をした論文はこちら。

link.springer.com

  • Jörg Henseler, Christian M. Ringle & Marko Sarstedt, 2015, A new criterion for assessing discriminant validity in variance-based structural equation modeling, Journal of the Academy of Marketing Science. 43:115–35.

HTMT Online Calculator

www.henseler.com

Henselerによる紹介文。

相関関係のheterotrait-monotrait ratio of correlations(HTMT)による潜在変数の判別妥当性の評価
行動科学者は、潜在変数の弁別的妥当性に関心を持っている。判別的妥当性とは、異なる理論的概念を表す2つの潜在変数が統計的に異なることを意味します。弁別的妥当性を評価するために頻繁に適用されるアプローチは、Fornell-Larcker基準(Fornell & Larcker, 1981)である。しかし、伝統的な部分最小二乗パスモデリングや一般化された構造化成分分析のような分散ベースの構造方程式モデリングの結果と組み合わせて使用すると、Fornell-Larcker基準は感度を欠き(Rönkkö & Evermann, 2013)、一貫した推定値と組み合わせて使用すると特異性を欠く(Voorhees, Brady, Calantone & Ramirez, 2016)。
判別的妥当性を評価するための新しいアプローチがHenseler, Ringle and Sarstedt (2015)によって導入された。HTMTは潜在変数間の類似性の尺度である。HTMTが明らかに1よりも小さい場合、弁別的妥当性が確立されているとみなすことができる。多くの実用的な状況では、0.85のしきい値は、弁別的妥当性がある潜在変数のペアとそうでない潜在変数のペアを確実に区別する。モンテカルロシミュレーションは、HTMTの良好な分類性能の証拠を提供する(Franke & Sarstedt, 2019; Voorhees, Brady, Calantone & Ramirez, 2016)。また、HTMT は比較的簡単に計算でき、観測された変数の相関関係を入力として必要とするだけである。探索的な要因分析や確認的な要因分析は必要ない。HTMT を紹介した論文が、最近の最もインパクトのあるマーケティング論文の一つとなっていることは確かに驚きではない(Shugan's Top 20 Marketing Meta-Journal を参照)。

journals.sagepub.com

link.springer.com

マーケティングの分野で使われている技法らしい。

森岡耕作「顧客資源の構造とブランド価値の創造」

ci.nii.ac.jp

伝統的には,Fornell-Larcker 基準(Fornell and Larcker, 1981)が弁別妥当性の検討に用いらてきているが,共分散ベースの構造方程式モデリングや確認的因子分析において,特に概念に対応する項目数が少ない場合には,因子負荷量がより高く推定されうることが知られているために(Henseler, et al., 2015, p. 117),その因子負荷量に基づいて算出される AVE の平方根と概念間の相関係数とを比較する Fornell-Larcker 基準を用いて弁別妥当性を検討すると,必ずしも適切に弁別妥当性を検討できない可能性がある。そこで,概念ξi(項目数 Ki 個)と概念ξj(項目数 Kj 個)との間における HTMT 比(式)を利用して,弁別妥当性を検討する。そして,すべての概念間の HTMT 比は図表 6 にまとめられる通りであった(なお,比較のために Fornell-Larcker 基準も図表 7 で併せて報告する)。

f:id:iDES:20201106131410p:plain

HTMT 比について,本調査のサンプル・サイズが必ずしも少なくはないことと(N=436),因子負荷量が同質的ではないこととを併せて考慮して,HTMT0.900 基準(HTMTij<0.900)を用いると,顧客資源については首尾よく弁別されているものの,認知的ブランド価値と感情的ブランド価値の 2 つの概念について,それらが必ずしも弁別されないことを示している。

境界性パーソナリティ障害の心理療法(コクラン)

www.cochrane.org

背景

境界性パーソナリティ障害 (BPD) の患者では、衝動や感情をコントロールすることがしばしば困難になる。自己イメージが乏しく、気分の急激な変化を経験し、自分自身に害を及ぼし、人間関係がうまくいかないことがある。BPD患者を支援するために、様々な種類の心理療法(talking treatments)が開発されているが、これらの治療の効果を調査して、どの程度効果があり、有害な可能性があるかを判断する必要がある。

目的

本レビューでは、 BPD患者における精神療法の効果について現在我々が知っていることを要約する。

メソッド

治療を受けていないか、通常の治療を継続しているか、待機リストに入っているか、または積極的な治療を受けているBPD患者に対する心理学的治療の効果を比較した。

結果

関連する研究論文を検索し、 75のトライアル(4507人の参加者のほとんどが女性で、平均年齢は14.8歳から45.7歳であった)を見出した。この試験では、さまざまな心理療法(16種類以上の)が検討された。大部分は外来で行われ、一か月から36か月間続いた。弁証法的行動療法 (DBT) とメンタライゼーションに基づく治療 (MBT) が最も研究された治療法であった。

通常の治療と比較した精神療法

心理療法は、 BPD症状と自殺傾向の重症度を低下させ、自傷と抑欝を低下させ、同時に通常の治療と比較して心理的機能を改善した。DBTは、 BPDの重症度を軽減し、自傷行為を減らし、心理社会的機能を改善する点で、通常の治療より優れている可能性がある。同様に、 MBT自傷、自殺傾向、および抑うつを軽減する上で通常の治療よりも効果的であると考えられる。しかし、これらの知見はすべて質の低い証拠に基づいており、試験を追加した場合にこれらの結果が変わるかどうかは不明である。ほとんどの試験で有害作用は報告されておらず、報告された試験では心理療法後に明らかに望ましくない反応は認められなかった。トライアルの大半(64回/75回)は、大学、当局または研究財団からの助成金によって行われた。4件の試験では、資金提供を受けていないことが報告された。残りの試験 (7) については、資金は特定されなかった。

心理療法対待機者リストまたは無治療

BPD症状、心理社会的機能、うつ病の改善には心理療法の方がウェイティングリストよりも効果的であったが、自傷行為のアウトカム、自殺関連アウトカムには心理療法とウェイティングリストの間に明確な差は見られなかった。

結論

一般的に、心理療法は、心理社会的機能を改善する一方で、BPD症状の重症度、自傷行為、自殺関連アウトカム、うつ病の軽減に通常の治療よりも効果的であると考えられる。しかし、BPD症状の重症度の低下のみが臨床的に重要なレベルであることが判明した。DBTは通常の治療に比べて、BPDの重症度、自傷行為、心理社会的機能の改善に優れているようであり、MBTは通常の治療に比べて、自傷行為と自殺傾向の軽減に効果的であるようである。しかし、エビデンスの質が低いため、これらの知見についてはまだ不明である。

著者らの結論

我々の評価では、TAU(treatment as usual)と比較してBPDに特化した心理療法はすべての主要アウトカムにおいて有益な効果を示した。しかし、BPD重症度のアウトカムのみが、MIREDIFが定義した臨床的に意味のある改善のためのカットオフに達した。サブグループ解析では、異なるタイプの治療法間(TAUと比較して)で効果推定値に差があるという証拠は見られなかった。

心理療法と待機者リストまたは無治療のプール解析では、治療終了時にBPDの重症度、心理社会的機能、抑うつ状態に有意な改善が認められたが、これらの知見は質の低いエビデンスに基づいており、これらの効果の真の大きさは不確かである。自傷行為と自殺関連の転帰については、明確なエビデンスの差は認められなかった。

しかし、TAUと比較して、BPDの重症度、自傷行為、心理社会的機能、MBTについては治療終了時の自傷行為と自殺率にDBTが有利な効果を示したが、これらはいずれも質の低いエビデンスに基づくものであった。したがって、これらの効果がより多くのデータを追加することで変化するかどうかは不明である。