井出草平の研究ノート

中国でインターネット依存の治療として電気けいれん療法を行うことを禁止(ガーディアン)

www.theguardian.com

インターネット依存症に電気けいれん療法を行うことの懸念が高まり、2009年に中国の保健省が中止を勧告したようだ。中央政府の保健省が電気けいれん療法を実施している山東省の保健部に要請を行ったと報道されている。インターネット依存症の定義があまりにも漠然としていると専門家は指摘している、とのこと。

ある専門家たちは、2008年にインターネット依存症の最初の診断定義を行ったそうだ。

  1. 1日に少なくとも6時間をオンラインで過ごす
  2. オンラインに戻るために切望を含む

1と2の少なくとも1つ。

  1. 社会的な接触の恐怖
  2. 集中困難や睡眠

他の専門家は、この定義はあまりにも一般的すぎること、基準があまりにも曖昧であるため、多くの依存症ではない人たちが、この定義に当てはまると主張している、とのこと。

電気けいれん療法の禁止は、山東省臨沂市の精神科病院の楊永信医師(参照)が電気けいれん療法行っているという報道を受けてのものだった。北京ニュースによると、楊氏は、脳に小さな電流を流すことで脳を覚醒させるという治療法を考案したという。彼は刺激が苦痛を引き起こすかもしれないが、非常に安全であり、どのような方法でも子供に害を与えないとコメントしている。

北京のニュースによると、記者が楊氏のセンターを利用したいと申し出ると、治療費が月5,500元(£500)だった言われたという。記者が電気けいれん療法が使用されるかどうか尋ずねると、スタッフはそれが「パルス療法(pulse therapy)」 と呼ばれるべきでもので、特殊な状況においてだけ、使用されたと言った、という。

なお、別の施設(济南军区总医院)のTao Ran氏によると、病院で治療の対象となっているのは、オンラインゲームの利用者がほとんどのようで、男性が90%、15-18歳が80%とのことである。

中国でのインターネット依存症に対する電気けいれん療法(ガーディアン)

2009年の記事。中国でインターネット依存を電気けいれん療法で治療するという試みがされていたが、大きな批判を浴びることになり、禁止されるという経緯がある。この記事は実際にセンターで電気けいれん療法を受けた若者のインタビューである。

電気けいれん療法が痛いとインタビューでは言われているが、一般的に行われている修正型電気けいれん療法では痛みを感じることはないため、病院側が懲罰的に故意に痛みのある電気けいれん療法を行っていたか、このインタビューに答えている若者が嘘を言っているかどちらかである。

www.theguardian.com

17歳のTeng Feiさんはインターネット依存症の電気けいれん療法(ECT)を受けた。Teng Feiさんの父親が病気にかかったと母親から聞かされたとき、不安になりすぐに病院に行くことにした。しかし、父は病気にかかっておらず、嘘だった。病因で、数時間以内に彼は痛みを伴う治療を受けることになった。彼はその後数週間の間に何度もECTを受けることになった。

「それは本当に痛かった - 私の脳に針を突き刺すようなものだった」と彼は言った。

Teng Feiさんはもともと自分に問題があったわけではないと言い、インターネット依存症は存在しないと考えている。

「私にとってインターネットが非常に魅力的で、しばしば一日中それを使用している。しかし、例えばバスケットボールをプレイするなど、他にすることがある場合、私はインターネットを使わない」と彼は言っている。インターネット依存症と言うには、他にやるべきことがあっても、それをせずに、インターネットに没頭していなくてはならない。

「私の母はテレビの広告を見ました。テレビ広告では、インターネットの悪評を流して、私の母はその広告をみて私が病気だと信じてしまった」

彼はクリニックへの入院を拒否した時に初めて電気けいれん療法を受けた。

「何回電気ショックを受けたのか覚えていませんが、何十回も受けたはずです。時間は30分ほどでした」。

「私はもがいて起き上がろうとしましたが、彼らは私が入院することに同意していないため、30分ほど電気ショックを与え続けました。私は本当にこれ以上耐えられなかったので、入院することに同意ししました」。

彼は病院でECTを6、7回受けましたが、ほとんどが一度に数分間だった。

「最初の頃は、恐怖を与えて命令に従わせようとしていたのだと思います。電気ショックは、私が何か悪いことをした場合の罰だった」。

彼が逃げようとしたとき、彼はさらに30分間の電気ショック療法を受けることになった。

医者は電気けいれん療法以外に抗うつ剤と伝統的な漢方薬を与えた。毎日、彼は午前中に両親も一緒にレッスンを受け、プログラムを信じて協力するように促し、午後には訓練が行われた。

Teng Feiさんの両親は、彼の治療のために約14,000元(£1,250)を費やした。14,000元の内訳は、7,000元の月額料金、逃げた時の2,000元の罰金と早期に治療を終了するための5,000支払いである。

「治療は4ヶ月間続くはずですが、父は詐欺だったと思うようになった」と彼は言った。「私の父はレッスンで、治療者たちの意見に反することをいうことができないことを悟りました。また、私が電気ショックがどれほど痛いかを父に話し、若者が電気ショックを受ける部屋に入っていくところを実際にみて、私の父は心を痛めていました」

Teng Feiさんはさらに「治療は全く役に立たなかったと思います。私は以前もインターネット依存症ではなかったので、入院する前と全く同じように生活しています。私は今でもインターネットを使っていますが、両親は本当に干渉してきません。」と述べた。

Light’s KappaとFleiss' kappa[R]

評価者が3人以上、評価項目が名義尺度で3カテゴリ以上で利用される一致度の指標である。有名なCohen's Kappa(κ) の拡張版である。

Light’s Kappa

評価者が2人以上、2つ以上のカテゴリカル変数で使用する一致度の指標である。

RのirrパッケージでLight’s Kappaを計算する

irrパッケージで計算ができる。

diagnosesデータを利用する。データ構造は下記のようになってている。

f:id:iDES:20201114070734p:plain

評価者がraterで、6人の評価者がいるデータである。
精神疾患の評価がされているが、1.Depression2. Personality Disorder3. Schizophrenia4. Neurosis5. Otherの5つが評価されている。 評価されているものは、順序尺度や間隔尺度ではなく、名義尺度である。Light’s Kappaを利用するのは、評価者が2人以上(特に3人以上)、評価項目が名義尺度で2カテゴリ(特に3カテゴリ以上)ということだ。

library(irr)
data(diagnoses)
kappam.light(diagnoses) 

Kappaは0.459であった。

 Subjects = 30 
   Raters = 6 
    Kappa = 0.459 

        z = 2.31 
  p-value = 0.0211 
  • Light, R.J. (1971). Measures of response agreement for qualitative data: Some generalizations and alternatives. Psychological Bulletin, 76, 365-377.

Fleiss' kappa

評価者が2人以上、2つ以上のカテゴリカル変数で使用する一致度の指標である。Light’s Kappaのと同じ条件で使うものである。

irrパッケージでの計算

kappam.fleiss(diagnoses)

結果。

 Subjects = 30 
   Raters = 6 
    Kappa = 0.43 

        z = 17.7 
  p-value = 0 

評価者を指定するコマンドもあるらしい。こちらは1-4の評価者だけ計算するコード。

kappam.fleiss(diagnoses[,1:4]) 
  • Fleiss, J. L. (1971) "Measuring nominal scale agreement among many raters." Psychological Bulletin, Vol. 76, No. 5 pp. 378–382

Exact Kappa

Fleiss (1971)のKappa係数は2人の評価者ではCohen's Kappa(重みづけをせず)にはならない。その修正がConger(1980)によってされたのがexact Kappa係数である。

kappam.fleiss(diagnoses, exact=TRUE)

結果。

 Fleiss' Kappa for m Raters (exact value)

 Subjects = 30 
   Raters = 6 
    Kappa = 0.442
  • Conger, A.J. (1980). Integration and generalisation of Kappas for multiple raters. Psychological Bulletin, 88, 322-328.

Fleiss' and category-wise Kappa

カテゴリごとのFleiss' kappaの値である。

kappam.fleiss(diagnoses, detail=TRUE) 

結果。

 Fleiss' Kappa for m Raters

 Subjects = 30 
   Raters = 6 
    Kappa = 0.43 

        z = 17.7 
  p-value = 0 

                         Kappa      z p.value
1. Depression            0.245  5.192   0.000
2. Personality Disorder  0.245  5.192   0.000
3. Schizophrenia         0.520 11.031   0.000
4. Neurosis              0.471  9.994   0.000
5. Other                 0.566 12.009   0.000

米ゲーム業界、コロナ禍ロックダウンで汚名返上?(WSJ)

jp.wsj.com

インディアナポリスの医療機器メーカーで品質管理スペシャリストとして働くスコット・トンプソンさんは、8歳の娘と6歳の息子が最近頻繁にオンラインゲームをしていても気にしないと話す。コロナの流行で友人やいとこと安全に遊べる選択肢はほとんどない。ビデオゲームがなければ「子どもたちは今ごろ気がおかしくなっていただろう。そして妻と私も発狂していた」とトンプソンさんは言う。「彼らには社会的な交流が必要だ」

www.wsj.com

合成信頼性を計算する[R]

合成信頼性(Composite Reliability)はCronbach'αの代替指標として使われているものである。
semToolsで最後まで計算できると思っていたが、そうではなかったらしいので計算方法を再度調べてみた。

合成信頼性の解釈

合成信頼性(construct reliabilityと呼ばれることもあります)は、尺度項目の内部一貫性の尺度で、Cronbachのアルファによく似ている(Netemeyer, 2003)。これは、スケールのスコアの分散の合計に対する真のスコアの分散の合計量に等しいと考えることができる(Brunner & Süß, 2005)。別の方法として、「潜在的な構成要素の指標として使用される観察された変数間の共有分散の指標」(Fornell & Larcker, 1981)がある。
合成信頼性のしきい値は議論の余地がある(妥当なしきい値は、0.60以上の範囲であることがある)。多くは、スケールの項目数に依存する。尺度項目の数が少ないほど信頼性レベルは低くなり、尺度項目の数が多いほど信頼性レベルは高くなる傾向がある、とRichard NetemeyerらはScaling Proceduresの中で述べているIssues and Applicationsでは、5~8項目の狭義の構成要素が0.80の最低閾値を満たすことが「合理的」であると述べている。

www.statisticshowto.com

データについてはこちら。 https://ides.hatenablog.com/entry/2020/06/13/005540

今回は1因子のみ、visualのみに絞って値を計算する。

計算式

今回はパッケージにすべて任せきりではなく計算をするので、計算式も掲示しておく。

f:id:iDES:20201113070823p:plain

λi = 標準化された因子負荷量
V(δi) = 残差分散
p = 指標の数

要するに標準化された因子負荷量と残差分散をパッケージで計算して、後は計算式を書いて求めるという手順になる。

コード

途中までlavaanパッケージを使用する。

library(lavaan)
visual.model <- ' visual  =~ x1 + x2 + x3'
dat <- HolzingerSwineford1939[, paste0("x", 1:3)]
fit <- cfa(visual.model, data = dat)

標準化された因子負荷量を計算する。slに変数名とともに格納。

library(dplyr)
sl <- standardizedSolution(fit)
sl <- sl$est.std[sl$op == "=~"]
names(sl) <- names(dat)
sl

結果。

       x1        x2        x3 
0.6209312 0.4788703 0.7096890 

各項目の残差分散を計算。reに格納する。

re <- 1 - sl^2

合成信頼性を計算する。

sum(sl)^2 / (sum(sl)^2 + sum(re))

結果。

0.6350718

参考

https://www.r-bloggers.com/2016/08/five-ways-to-calculate-internal-consistency/ https://rpubs.com/wiryantodatascience/Comp_Reliability