井出草平の研究ノート

重みづけκ係数

コーエンのκ係数(Cohen's kappa)の拡張版である。。

重みづけκ係数の使いどころ

Cohen's kappaはセルの完全一致を指標化したものである。

例えば、こちらの例のように評価者が精神疾患の評価をして
1. Depression
2. Personality Disorder
3. Schizophrenia
4. Neurosis
5. Other
とする場合「1.Depression」と「3. Schizophrenia」は質的に違うもので区別すべきものである。

一方で、あなたは「計画通りに行動する」かどうか聞かれて、
1.そう思う
2.ややそう思う
3.あまりそう思わない
4.そう思わない
という4件法で聞いたとする。
2時点で回答して、1時点目が1、2時点目で2と答えたとすると、Cohen's kappaでは一致をしていないと判断されるが、回答がズレることもあるので、一致してないと断ずるのは感覚的におかしい気がする。

1時点目で「1.そう思うと答えて」、2時点目で「4.そう思わない」と答えたとすると、それは一致していないと考えられるが、Cohen's kappaは1時点目で1という回答であれば、2時点目で2でも3でも4でも不一致とする。このあたりを柔軟にとらえるのが重みづけκ係数の考え方である。

重みづけのκ係数の種類

Cicchetti-Allisonの重みづけ

Cicchetti and Allison(1971)。個々の評価の偏差に比例する。線形の重み。

 W_ij = 1-(|i-j|)/(R-1)

Fleiss-Cohen weightsの重みづけ

Fleiss and Cohen(1973)。個々の評価の偏差の2乗に比例する。2次重み。

[tex: W_ij = 1-(|i-j|)2/(R-1)2]

Cicchetti-Allisonの重みづけ

            Doctor2
 Doctor1     Stade I Stade II Stade III Stade IV
   Stade I   1       2/3      1/3       0       
   Stade II  2/3     1        2/3       1/3     
   Stade III 1/3     2/3      1         2/3     
   Stade IV  0       1/3      2/3       1

Fleiss-Cohen weightsの重みづけ

           Doctor2
Doctor1     Stade I Stade II Stade III Stade IV
  Stade I   1       8/9      5/9       0       
  Stade II  8/9     1        8/9       5/9     
  Stade III 5/9     8/9      1         8/9     
  Stade IV  0       5/9      8/9       1

重みづけの値の違い

DIFFERENCE LINEAR QUADRATIC
0 1 1
1 0.66 0.89
2 0.33 0.55
3 0 0

文献

  • Cohen, J. 1968. “Weighted Kappa: Nominal Scale Agreement with Provision for Scaled Disagreement or Partial Credit.” Psychological Bulletin 70 (4): 213—220. doi:10.1037/h0026256.
  • Fleiss, Joseph L., and Jacob Cohen. 1973. “The Equivalence of Weighted Kappa and the Intraclass Correlation Coefficient as Measures of Reliability.” Educational and Psychological Measurement 33 (3): 613–19. doi:10.1177/001316447303300309.
  • Cicchetti, Domenic V., and Truett Allison. 1971. “A New Procedure for Assessing Reliability of Scoring Eeg Sleep Recordings.” American Journal of EEG Technology 11 (3). Taylor; Francis: 101–10. doi:10.1080/00029238.1971.11080840.

アドルノFスケールの次元性

ci.nii.ac.jp

  • 西山俊彦「カリフォルニア権威主義尺度の包括的検討」

アドルノのFスケールは因子分析はされていないが、aからiまでの9クラスターに分類されている。因子分析の研究は後生になってからである。

  1. 因襲尊重(Conventionalism) 伝統的,中産階級的価値への執着
  2. 権威主義服従性(Authoritarian Submission) 集団内の理想化された権威に対する服従的,無批判的態度
  3. 権威主義的攻撃性(Authoritarian Aggression) 伝統的な価値を犯す人を看視し,非難し,かつ,乙れに反擁しようとする傾向
  4. 内省拒否(Anti-Intraception) 主観的,想像的で柔らかい心への敵対
  5. 迷信とステレオタイプ(Superstition & Stereotypy) 個人の運命に神秘的な決定要因があるという信念,きびしいカテゴリーで考えようとする傾向
  6. 権力と“タフネス"(Power & Toughriess) 支配する人と服従する人,強い人と弱い人,指導者と従属者というような偏見をもった観方,権力のある人への同一視,習慣化された自我を極度に強調 する態度,強さに対する誇張的態度
  7. 破壊性とシニシズム(Destructiveness & Cynicism) 人間性への敵意や侮蔑
  8. 投射性(Projectivity) 野蛮で危険なものが世界をうろついているという信念,無意識的情緒的衝動の外界への投射 i.性(Sex) 性的な正常性を犯す人を処罰しようとする態度

次元性の研究

  1. 一次元性 一次元性を論証したといわれるものにEysenck (1954) の報告がある。それによれば, Melvin は原著者達のオリジナルなデータぞ用いてその因子分析を行なった。その結果一つの強い一般因子を発見し, とれをもってFスケールの統一的な(unitary)性格を検証できたとした。
  2. 多次元性 一方多次元性を報告している研究は多い。Christie とGarcia (1951) は二つの従属文化の比較を通じて7, 8個のクラスターを発見し, ζれによって権威主義は多次元のものである乙とを証明した。その上,文化が異なれば次元の意味も必ずしも同じではないことも発見した。但し,乙の文化による意味の違いも,スケール全体としての類似をそこなう程のものではなかった。 Hofstaetterは20項目のスケールより5つの因子を抽出した。但し,彼の因子は,反ネグロ主義,反ユダヤ主義,国家的誇り,清教主義および国家社会主義と政治的領域に属する因子が殆んどであって, Crutchfield (1954) はHofstaetter の行なった因子分析法は誤ったものだと指摘している。 O'Neil とLevinson (1954) とは8項目のFスケールより「権威主義服従」並びに「男性的標榜」の2因子を発見した。これらは原著クラスターbの「権威主義服従性」とfの「権力とタフネス」に該当し得るものとして興味深いところのものである。 ProthroとKeehn (1956) とはFスケール形式45-40 より2つの因子を拍出した。一つは「人間性および人閣の努力を低くみる意見」で他は「アラブ・ナショナリズム」であるが,この二つは原著のクラスターEの「人間蔑視」とクラスターcの「権威主義的攻撃性」と解釈する方が政治的設聞を避けたFスケール本来の意図とも合致するように思われる。 RokeachとFruchter (1956) は権威主義が“硬さー権威主義"の因子に負荷(.66)するのみでなく,他の因子“自由主義保守主義"にも相当の負荷量(.47) を持つことを見出した。ζ のことはFスケールが少なくとも一次元のものでなく,多次元に亘ることを立証するものと見倣された。 藤沢布と浜田哲郎(1960 a) はFスケール形式45-40 の日本語版により因子分析を行ない, 5つのセントロイド因子を拍出した。A因子は「伝統的・一般的な社会的規範の尊重」 と解され, B因子は「二分法的紋切型j, C因子は「非科学性への挑戦」或いは「科学尊重」, D因子は「外罰的傾向」と解釈された。但し, それらA,B, (C), D(Eは負荷量が小さいので取りあげられなかった)因子はそれぞれ原著のクラスター名をとり「権威主義服従性」「迷信とステレオタイプ」「権威主義的攻撃性」と時ぴ換えてもさしっかえないと著者自身がいっている(1960b) 。

西山の研究における質問項目

本研究では原著からの翻訳の忠実さを考慮し,僅かの変更を例外としただけで与那嶺による尺度を全面的に使用した。与那嶺による尺度は40項目から成っており,与那嶺が作成した項目は第1表の28,33, 39, 40 の4項目で,残り36項目はカルフォルニア原尺度,牛島・坂本による九州大学尺度,および原谷による尺度を参照して構成されたものである。すなわち,第1表の4,8, 12 , 13, 16, 20 は牛島らの尺度, 24 は与那嶺が原谷から援用したものであり「戦争の落し子である混血児の問題は社会の不安と混乱をよびおこすことでしょう」となっていたものを,著者が今日においては最早一般性を持たないと判断し,浜田(1966) の「国民の祝日には昔のように家ごとに国旗を立てるということは強制しでもよいことど」との第四問と取りかえられたものである。残り29項目はカルフォルニア原尺度からの項目であるが原尺度番号第16問の「ある人々は生れっき高いところからとびおりようとする衝動をもっている」は選別力がなく除外された。以上のように選別された項目は特にクラスター帰属激において原著に忠実であろうとする努力が払われた。各項目のクラスター帰属関係は第1表の通りである。

  1. 親や先生の言うことをよく聞き,尊敬するということは,子供の学ぶべきもっとも大切なことである。
  2. 人生の成功や失敗はすべて本人の意志によってきまるものですから,どんな弱点や困難もその人の意志力さえ強ければ問題にならない。
  3. 科学や学聞は尊重されなくてはならないが,しかし人聞の知性では決して知る乙とのできないことで,たいせつなことがたくさんある。
  4. 人から受けた恩は返すのがあたりまえである。
  5. 人間の本性から考えて,戦争や争いごとは決してなくならないでしょう。
  6. 若い人はとかく反抗的な考え方をもつことがあるが,大人になるに従って乙のような態度は改めるべきである。
  7. 行儀や育ちの悪い人が,善良な人々と仲良く暮せるとは考えられない。
  8. 人の一生は生れたときからもはや運命によってきめられている。
  9. 若い人に最も必要なものは,厳しい訓練と強い決断力と家族や国のために働乙うとする意欲である。
  10. 映函館やパスの中で多くの人と接する機会の多い今日,私達は周囲の人々から病毒を感染しないように特に警戒しなければならない。
  11. 人の名誉を傷つけた人に対しては必ず仕返しをしてやるべきである。
  12. 目上の人に対してはたとえ自分の気に入らないことがあっても我慢して聞くのが礼儀である。
  13. 悪い行いをした人はたとえその人に何事もなかったとしても子孫には必ずその報いがあらわれるものである。
  14. 社会の秩序を守り,混乱を防ぐためには,政府が強い権力を持っているζ とが必要である。
  15. すべての人は彼等が何の疑いも江くその決定に従うようなある超自然的な力を完全に信ずべきである。
  16. 結局頼れるものは自分だけである。
  17. 強姦のような性犯罪は懲役や禁固ぐらいの罰では不充分である。もっと厳しく罰すべきである。
  18. 人々は,はっきりと賭か強者に分けることができ,結局は世の中は強者が弱者ぞ支配する形で動いている。
  19. 親に対する感謝と尊敬を感じない人ほど人間として低劣なものはない。
  20. 人間は全く微力でいくら立派な理想をかかげたところで,一生かかっても個人の力ではそれほど大したことはできない。
  21. 伝統的な道徳や生活様式のよいところが急速に失なわれつつあるので,これを保持するためには力による強制が必要である。
  22. おそらく易占の理がいつかは多くのことを説明できるようになるでしょう。
  23. 今日の社会が最も必要としているのは法律や政策よりも民衆が信頼しうる献身的な勇気ある指導者である。
  24. 国民の祝日には昔のように家ごとに国旗を立てるという乙とは強制しでもよいことだ。
  25. 今日の世の中には他人の私的なことに立入ってせんさくする人が非常に多い。
  26. 戦争や世の中のみにくい争いごとは全世界を破壊する地震や洪水のような天災によっていつかはかたづいてしまうでしょう。
  27. どうにかして不道徳な者や邪悪な人間などをこの世から取徐くことができるならば,大ていの社会問題は解決されるに違いない。
  28. 今日のような不安な社会では,法律はもっと厳しいものでなければならない。
  29. 困ったことや心配ととがあるときは,そのことを考えずになにかおもしろいことで気をまぎらすようにするのが一ばんよい。
  30. 今日の私達の社会では性生活がみだらで全くだらしない人が多すぎる。
  31. もし人々がもっと口数をへらして仕事に精出しするならば世の中はもっと住みよくなるでしょう。
  32. 世間では教養や学問よりも権力や財力を重んじるものである。
  33. どんな人でもすぐには信頼しない方がよい。へたに信頼するとひどいめにあわされる。
  34. 正常でしかも善良な人親や先輩の感情をそこなおうと考える人は一人もいない。
  35. 私達の生活は多くの野心家の陰謀によって支配されている。ただそれをたいていの人が知らないだけのことである。
  36. 同性愛は性道徳をみだす犯罪であるから厳しく罰するべきである。
  37. 人はああまり親しくするとあなどられるものである。
  38. 耐えがたい苦しみを経験しないで大事な乙とを学びとる乙とは決してできない。
  39. 学生時代には社会や政治の問題には関心をもたずに学問に没頭すべきである。
  40. 文学や恋愛は人間を軟弱にする。

アドルノのFスケール

en.wikipedia.org

カリフォルニアFスケール(California F-scale)は、1947年にテオドール・W・アドルノらによって考案された権威主義的性格を測定するための性格検査である。F-スケールは、従来主義、権威主義的な攻撃性、反侵入、迷信とステレオタイプ、権力と「強靭さ」、破壊性とシニシズム、投影性、性別など、権威主義のいくつかの異なる構成要素に関する反応を測定する。F-スケールから取得したスコアは、背景の構成要素、教育レベル、知的能力と直接的に関連する可能性がある。

  • 従来主義:中産階級の伝統的な社会規範や価値観への適合。
  • 権威主義服従:従来の規範や価値観に従うことへの受動的な考え方。
  • 権威主義的な攻撃性:従来の価値観に従わない個人を罰し非難する。
  • 宗教と倫理。
  • 迷信
  • 力と「強靭さ」。
  • 内省拒否 (Anti-intraception)

Wilson-Patterson Conservatism ScaleやBalanced F-scaleのようないくつかの関連する尺度が、F-scaleの欠点を修正する試みとして作成されています。Bob Altemeyerの右翼権威主義尺度( Right-wing authoritarianism Scale )は、近年頻繁に使用されるFスケールの派生尺度である。

https://en.wikipedia.org/wiki/Wilson-Patterson_Conservatism_Scale

http://jonjayray.com/newbf.html

https://en.wikipedia.org/wiki/Right-wing_authoritarianism

日本語版

こちらに載っているという情報が。
西山俊彦「カリフォルニア権威主義尺度の包括的検討」
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007590018

こちらにも一部が掲載されている。
与那嶺松助権威主義尺度に関する一研究 ― Fスケールの検討 ―」
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12000/19152/1/No4p043.pdf

渡邉望・羽鳥剛史・藤井聡・竹村和久「近代社会における人間疎外と大衆性についての実証的研究」
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/paper/planning/40/dehumanization.pdf

西山俊彦「カリフォルニア権威主義尺度の次元性の研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/15/3/15_351/_article/-char/ja/

中国の「ネット中毒者矯正施設」

www.youtube.com

"Web Junkie"という名前のドキュメンタリー映画

en.wikipedia.org

www.bbc.co.uk

この映画の日本語記事もあった。

wired.jp

監督のインタビュー

www.youtube.com

日本列島をどう守るか 過疎化に“100万人の引きこもり”が役立つワケ(内田 樹)

bunshun.jp

もう1つアイディアがあるんですけれど、それは「引きこもり」の人たちに「歩哨」をしてもらうというものです。  一説によると、日本にはいま100万人の「引きこもり」がいるそうです。その人たちに過疎の里山に来てもらって、そこの無住の家に「引きこもって」もらう。里山だと「そこにいるだけで」、里山を自然の繁殖力に呑み込まれることから守ることができる。部屋にこもって1日中ゲームやっていても、ネットをしていても、それだけで役に立つ。  それほどの給料は払えないでしょうけれども、人がいなくなった集落でも、お盆のときだけは戻ってくるから、家は廃屋にしたくないという人はたくさんいます。そういう何軒かの家からちょっとずつ出してもらえば、仕事になる。家賃は要らないし、物価だって安いし、気が向いたら、畑を耕して野菜だって作れる。  そういうミクロな求人とミクロな求職をマッチングする仕組みができれば、かなりの数の「引きこもり」が里山の「歩哨」として暮らして、かつて西部開拓者が経験したような達成感や全能感を経験して、メンタル的に回復するというようなことが起きるんじゃないか。そんなことをぼんやり夢想しています。

togetter.com

キャンプではインターネット依存症は治らない(Global Times)

Global Timesの記事。Global Timesは環球時報の英語版で中国共産党の機関紙『人民日報』系列の紙である。共産党、中国政府の意向が反映された紙面づくりをしていると考えてよい。
そういったポジションの新聞がキャンプや入院をさせても依存症は治らないと主張していることは興味深い。また、依存そのものが問題の本体ではなく、真の問題は子育てや学校、子どもの精神的成長などにあるのではないかと考えているところも面白い。

ちなみに、日本で言うと、ここで描かれているものはひきこもり問題で、インターネット依存という問題化はあまりされないのではないかと思われる。ひきこもり問題でも、更生施設を名乗る施設に親が子どもをぶち込んでいろいろな問題を起こしているが、同じことが中国ではインターネットやゲーム依存を治すという看板を掲げた施設で行われているようだ。

www.globaltimes.cn

山東省臨沂市にある第四病院とその副院長の楊永信は電気けいれん療法(ECT)をインターネット依存症の治療に用いていたが、2009年に中国衛生当局に非合法化された。楊氏はその後、低周波パルス療法という別の方法を使用しているが、元患者は電気よりもさらに痛みを伴うと述べている。

他のキャンプでは、粗野な軍隊式の懲戒方法を採用していて、若い患者からは「虐待的」「暴力的」とさえ言われてきた。2009年には、広西チワン族自治区のインターネットリハビリキャンプで15歳の少年が監督官に殴られて死亡し、2014年には河南省鄭州市で19歳の少女がネットリハビリ施設で数人の教練教官に殴られたり蹴られたりして死亡した。

四川省成都の軍事スタイルのリハビリキャンプの遼という名前のカウンセラーは虐待が今までに彼らの施設では行われたことがないと否定したが、教練教官は、懲罰的に肉体的トレーニングをさせることがあると認めた。

「ルールを破ったり、心と行動を変えようとしない若者は、罰として立ったり、走ったり、タイヤを運んだりさせられる」と彼はグローバルタイムズ紙に語っている。

ほとんど監獄とおなじ

彼のキャンプで治療を受けている患者の9割近くは14、15歳でコンピューターゲームに夢中になっている。通常、彼らは最初の6ヶ月間は25,800元(3,761ドル)、その後毎月2,000元の費用で6ヶ月から1年の期間、施設内で生活しなければならない。すべての寮生は、個人的に刑務所や軍の兵舎と同じく1日24時間、週7日、教師によって監視されています。

「親は自分の子供がネットサーフィンをするためにキャンプから逃げ出したいと考えても心配する必要はありません」と遼さんは言う。「教師はどこに行くにしても、トイレに行くにしても、すべての子供の後をつけています。夜になると、4、5人の子どもたちが1部屋をシェアして、先生と教練教官と一緒に、規律正しく生活をしています」と遼さんは言う。

遼さんによると、彼らのキャンプの教練教官は人民解放軍にいたことのある退役軍人である。教師は全員大学や大学を卒業し、教員免許を持っている。生徒は毎朝4クラス、午後4クラスの授業を受け、夕方には自習時間がある。

しかし、午前中の授業は通常の学校とは異なり、アルクホール・アノニマス(AA)の「quasi-ritualized therapeutic セッション」という手法に沿っており、自分の行動や態度について自己批判や集団批判をしなければならない。キャンプで10代の依存症者は専門的な資格を持っているカウンセラーと1対1の心理療法、グループ心理療法を受ける。

しかし過去10年間インターネットの過剰使用からの青年を助けたけてきた上海のRuiling Consulting Centerの心理学者Wan Lizhu氏はインターネットキャンプが利点以上に多くの害があると考えている。「かつて私は広東省のキャンプに戻ることを拒否した思春期の青年出会った。彼はとても落ち込んでいて、施設では無力さを感じ、ほとんど精神的に崩壊しそうになっていた」。

Wan氏はグローバル・タイムズ紙に、多くのインターネット・キャンプがティーンエイジャーを脅迫するために暴力を使っていると語った。意志の弱い子供たちは、収容所に戻されないように怖がってインターネットをやめさせられるかもしれませんが、頑固で攻撃的な子供たちは、親や当局に対して深い憎しみを抱くようになり、一人でいる時間を利用して復讐を企てるようになる。

9月には、黒龍江省の16歳の少女Chen Xinranさんがリハビリ施設から逃亡して家に戻り、8日間、母親を椅子に縛り付け、拳で殴り続け、その結果、母親は餓死することになった。

「10代のインターネット中毒者は反抗的でセンシティブです。彼らはネットの世界に楽しみを見出し、それが学校や家庭の圧力から逃れる簡単な方法だと思っています」とWanさんは言います。親は勉強だけに着目するのではなく、子供の精神的な成長にもっと注意を払うべきだとWan氏は付け加えた。

「今日多くの中国の祖父母は子供を育て、親は生活費を稼いでいます。その結果、子どもは親から疎外されている感じてしまう。行動上の問題が発生した時には、親が介入するには手遅れになっていることが多い」とWan氏は言う。

f:id:iDES:20160924113156j:plain 山東省済南市のインターネットリハビリセンターは、10代の参加者を物理的に虐待していたため、2016年10月に運営を停止されたと報じられている。

自分の子供が怖い

子どもたちがインターネットをやめるのを助けてきた20年の上海在住の心理学者Peng Ruilin氏によると、多くの親は、絶望と絶望から10代の子どもたちをそのようなキャンプに送ることを「強制」だと感じているという。「山東省からきた父親は、一度彼は彼の車の中で一晩中過ごしたことを私に言ったいました。彼はインターネット依存症になった息子によって襲われるのが怖かったので、家に入る勇気がなかったというのだ」

そのような親たちは、リハビリキャンプを子どもたちを治す最後のチャンスだと考えているが、Peng氏によると、彼らの最初の間違いは、子どもたちの依存症の原因を探っていないことだという。Peng氏の助けを求めた家族の多くによると、子どもたちは授業に集中できなかったり、試験の成績が悪かったりした。このストレスを解消するために、多くの子どもたちはコンピュータゲームやオンラインの世界に手を出したりしていた。

「社会はインターネットに夢中になっている子供たちを非難しますが、私は同情に値すると感じています。彼らは感情を調整するための適切な方法を知らないだけで、親から理解されず、共感されることもない子どもたちです。」

Peng氏はグローバルタイムズ紙に、彼は長年かけて自分のセンターで思春期の子供たちの興味を探り、彼らが人生に対する適切な態度を身につけるのを助けようとしていると語った。Peng氏はまた、サロンや講演会を開催して、関係者の親たちに健全な親子関係を維持し、相互理解と尊敬を築く方法を教えている。これは、リハビリキャンプや軍事的なしつけよりもはるかに効果的だと彼は感じている。

f:id:iDES:20201116061040j:plain 北京のインターネット依存症のリハビリセンターで、軍事的な密集隊形の訓練中に集団で罰を受ける学生たち。

f:id:iDES:20201116061050j:plain インターネット依存症になった少年が、北京の依存症治療センターで研究目的で脳をスキャンされる。

世代間の断絶

世代間の断絶

黒龍江省から来た馬さんという名前の母親は、Peng氏のセンターのコースはやりがいのあるものだったとグローバルタイムズに語った。「私の息子は8ヶ月間ここで治療された後、礼儀正しく、穏やかになりました。彼は父と話すことができるようになりました」。

彼女の17歳の息子が最初に学校に行かなくなり、一日中コンピュータで遊ぶために家にいたいと行ったとき、馬さんは暗い未来しか描けなかった。彼女は彼を地元の精神病院に引きずり込み、医師は彼のインターネット依存症を治すことができるとされている薬を処方した。息子は薬を飲むことを拒否し、家族関係はぎくしゃくし、最終的には息子を叱咤すると母親である馬さんを殴るようになった。

馬さんは仕事を休んで、目の検査を受けるという口実で息子を上海に連れてきた。一旦上海に来た後、彼女は息子をPeng氏のクリニックに入院させた。二人はセンターの近くにアパートを借り、毎日の診療に付き添っている。「息子は、他の生徒に馬鹿にされたり、いじめられたりすると思っていましたが、この子の能力が向上することを願っています。息子が感情をコントロールする能力を高め、現実の生活から逃避するのではなく、問題に直面して解決することを学んでくれることを願っています」と語った。

馬さんは、子供たちがコンピュータやゲームに夢中になるのを単純に理解できなかったことを認めているが、この世代間の断絶が、実際には息子との関係がぎくしゃくしている原因になっている可能性があるとも語っている。彼女は、彼と一緒にカウンセリングセッションに参加することで、彼の依存の背後にある真の問題に目を向けたいと考えている。「幸いにも、私たちは正しい道を歩んでいます」。