井出草平の研究ノート

引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕(東洋経済)

toyokeizai.net

「ここの病院は何科ですか?」。控室のような殺風景な小部屋の雰囲気に不安を覚えたAさんはセンターの職員に尋ねた。「精神科だ」。職員はそう手短に答えた。Aさんはそのとき初めて自らが連れてこられたのが精神科病院だと知らされた。
「点滴か健康診断かと思っていたので、まさか精神科病院に連れてこられるとは思わず、想定外の事態に心中ではそうとう動揺していた」(Aさん)
強い不安の中、10分ほど小部屋で待っていると、白衣を着た医師が現れた。「どうしてここに来たんですか?」、医師からそう問われたとき、Aさんは、「ああ、これで今までのことをきちんと説明すれば助けてもらえるだろう」と安堵。センター職員の同席にも構わず、医師に自らの置かれた状況を一気に打ち明けた。
「自宅にいたら無理やりセンターに連れてこられて、9日間も監禁されていました。人道的な見地から助けてください」
決死の訴えに対して医師は、「今日からここに入院してもらいます」とのみ告げた。驚いたAさんが再度「人道的な見地から助けてください」と懇願するも、「もう決まったことだから」などと言い(病院側は「診療録の生活歴・現病歴に記載されている経過を尋ね、精神科における入院治療の必要性を伝えた」と民事訴訟における準備書面で主張)、母親から同意を得て、本人の意に反した「医療保護入院」が決定された。

Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性の測度とMeasures of Sampling Adequacy

Kaiser-Meyer-Olkin(KMO)の標本妥当性の測度とMeasures of Sampling Adequacy(MSA)について。

中澤港さんの資料

https://minato.sip21c.org/factor-in-R-j.pdf

KMO と MSA KMO とは,Kaiser-Meyer-Olkin が提唱した因子分析全体についてのサンプリング適切性基準であり,MSA とは Measures of Sampling Adequacy の頭語で,それぞれの変数についての個別のサンプリング適切性基準である。データセットの中に,十分な数の因子が存在するかどうかを示す指標値である。技術的には,変数間の相関係数の偏相関係数に対する比を計算する。もし偏相関係数が生の相関係数と同じような値なら,それらの変数は互いに分散をあまり共有していないことを意味する。KMO の範囲は 0.0 から 1.0 で,0.5 以上が望ましい*7。また,MSA が 0.5 未満の変数は,その変数がどの因子グループにも属していないことを示すので,因子分析から除くべきである。

7 Kaiser (1974) の提案によれば,0.5 未満では不適切,0.5 以上 0.6 未満は悲惨なレベル (miserable),0.6 以上 0.7 未満は良くも悪 くもなく (mediocre),0.7 以上 0.8 未満は並 (middling),0.8 以上 0.9 未満は賞賛に値し (meritorious),0.9 以上なら極めて優れ ている (marvelous)。

  • Kaiser and Rise(1974). Little Jiffy Mark IV. Educational and Psychological Measurement, 34(Spring),111-117.

津田裕之さんの資料

htsuda.net

データが因子分析を用いるのに適切であるか(データに意味のある因子が発見できそうであるか)を判断するための基準として Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性の測度(KMO 測度)があります。KMO 測度(KMO 指標)はデータの偏相関係数の情報を使って、データに少なくとも1つの潜在因子が存在しそうかを調べます(偏相関係数の2乗和がゼロに近いほどその可能性が高いことを利用します)。

Rでの計算

津田さんの資料の中にもあるが、psychパッケージで計算ができる。

bfiデータを用いる。データの詳細はこちら

library("psych")
data(bfi)
dat <- bfi[1:25]
KMO(dat)

結果。

Kaiser-Meyer-Olkin factor adequacy
Call: KMO(r = dat)
Overall MSA =  0.85
MSA for each item = 
  A1   A2   A3   A4   A5   C1   C2   C3   C4   C5   E1   E2   E3   E4   E5   N1   N2   N3   N4   N5   O1   O2   O3   O4   O5 
0.74 0.84 0.87 0.87 0.90 0.83 0.79 0.85 0.82 0.86 0.83 0.88 0.89 0.87 0.89 0.78 0.78 0.86 0.88 0.86 0.85 0.78 0.84 0.76 0.76 

中澤さんの資料にもあるように基準は以下のものである。

KMO の範囲は 0.0 から 1.0 で,0.5 以上が望ましい*7。また,MSA が 0.5未満の変数は,その変数がどの因子グループにも属していないことを示すので,因子分析から除くべきである。

全体のMSAは0.85で、A1からO5までの値も0.5を下回る値はないので、このまま因子分析をしてよさそうだということがわかる。

堀啓造さんの文章

堀啓造さんがSPSSとMSA、KMOについて書いた文章。

https://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki.html#7

MSA、KMOについていろいろ書かれている。

Bengt O.Muthénの見解

MplusではKMO、MSAは計算できない。

www.statmodel.com

Just use Estimator = MLR. There is no need for that testing.
Aren't those tests for continuous outcomes? I don't think many people use these anymore in the factor analysis context. I never do.

ロバスト推定をすれば、そんなテストはしなくてよいじゃないかという話。結論。

ゲームをすると精神的な健康度が上がり幸福度が上がるが、ゲームを規制するとその恩恵が得られなくなる

吉川徹先生経由で知った論文。

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098%2Frsos.202049

-Niklas Johannes, Matti Vuorre and Andrew K. Przybylski, 2021, Video game play is positively correlated with well-being, g. R. Soc. Open Sci. 8: 202049.

ゲームが広く普及していることから,多くの政策立案者は,プレイ時間が幸福度に及ぼす悪影響を懸念している[7].この研究の結果は、この見解を覆した。2つの大規模サンプルにおいて、プレイ時間と幸福度の関係は正であった。したがって,我々の研究は,ビデオゲーム中毒を抑制するための予防策として,直ちにビデオゲームを規制する必要性がないことを示している。むしろ、今回の結果は、遊びは人々の精神的な健康にプラスに作用する活動であり、ゲームを規制することでプレイヤーがその恩恵を受けられなくなる可能性があることを示唆している。

研究データ

GitHubにプロジェクトのローデータ、アンケート用紙、データ処理と分析のためのソースコードが公開されているようだ。
https://digital-wellbeing.github.io/gametime/index.html
https://osf.io/cjd6z/

続きを読む

ネット依存「背景に孤独感」 北九州市大で講演会 福岡(朝日新聞)

digital.asahi.com

記事本文は穏当だが、写真に写るスライドが過激。

ゲームについて
ゲームは人生に不要で無用。
「減」ゲームは、本人が努力しても不安定。
特定のゲームは、「断」ゲーム(アカウント削除)を提案。

子どもがゲーム障害にならないように親がモニタリングする場合には父子関係が良好であることが重要

www.ncbi.nlm.nih.gov

思春期のインターネットゲーム障害の予防には親が重要な役割を果たすことが指摘されている。この研究は、3時点(3波)の調査を行い、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の間の相互関連性を調べている。

  1. 第1波と第2波では、親のモニタリングによってインターネットゲーム障害が低下するが、第1波と第2波、第1波と第3波では関連がみられなかった。
  2. 父母との関連を検討すると、父子の関係が良い場合には、親のモニタリングがインターネットゲーム障害の予防に有効だが、母子関係は関係がなかった。

思春期のインターネットゲーム障害の予防には、親の効果、親のモニタリング度が高いことと、父子関係が良好であることが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。

父親と子どものコミュニケーションがよくなかったり、父親が子育てに参加せずコミュニケーションがないような家庭では、子どものゲームのモニタリングは有効性が減じるのだから、おそらく家庭のあり方がそもそも問われているように解釈できる。

論文から示唆されるのは、親が子どもの教育に適切に関与できている場合にはゲーム障害は生じにくいということであろうか。親子関係が断絶していたり、父親が子育てに参加していなかったりすると、子どもが「最近、ゲームをやり過ぎているので、何かしよう」と思っても、コミュニケーションがもともと断絶しているため、有効な手立てが打てないのだ。

要するに子どもの行動を監視して、注意すれば解決するという表層的な話ではなくて、もう少し深い話で、子育ての姿勢であったり、父親の子育てへの参加であったり家庭のあり方の話である。

この論文はしっかりと読むと味がある論文で、非常に面白い。 なお、この論文でのゲーム障害の計測はインターネット依存症尺度が使われており、厳密にいうとネット依存の研究だが、ネット依存はほぼインターネット・ゲーム依存であるとのことから、インターネット依存症尺度が使われている。統計技法は最新のテクニックが使われているが、データ(尺度)が惜しいところである。


親のモニタリング

親のモニタリングは、子どもの活動、居場所、仲間に関する親の実践と知識と定義される。(Stattin and Kerr, 2000; Borawski et al., 2003; Bleakley et al., 2016).

  • Stattin H., Kerr M. (2000). Parental monitoring: a reinterpretation. Child Dev. 71 1072–1085. 10.1111/1467-8624.00210
  • Borawski E. A., Ievers-Landis C. E., Lovegreen L. D., Trapl E. S. (2003). Parental monitoring negotiated unsupervised time and parental trust: the role of perceived parenting practices in adolescent health risk behaviors. J. Adolesc. Health 33 60–70. 10.1016/S1054-139X(03)00100-9
  • Bleakley A., Ellithorpe M., Romer D. (2016). The role of parents in problematic Internet use among US adolescent. Media Commun. 4 24–34. 10.17645/mac.v4i3.523

参加者

中国国内の3つの小学校と2つの中学校から参加者を募り,半年ごとに3つの異なる時点で収集。ベースライン評価(T1;2012年10月)では、合計1830名の青年が集められました。2回目の評価(T2、2013年4月)では、T1で募集した青少年のうち1680人(当初のサンプルの91.80%)が参加し、3回目の評価(T3、2013年10月)では1490人(当初のサンプルの81.42%)が参加した。

参加者の減少は、主に以下の理由によるものだった。a)評価日に生徒が学校を欠席した、(b)生徒が別の学校に転校した、(c)一部の生徒がほとんどの項目に答えられなかった、(d)生徒が研究への参加を継続することを拒否した。3つの評価をすべて完了した参加者と、データが欠落した参加者の間には、いずれの変数の間にも有意な差はなかった。

最終的に得られた1490名の青少年は、54.6%が男性で、T1時点の平均年齢は12.03歳(SD=1.59、範囲:9~15歳)、692名が小学校(5年生)出身、798名が中学校(7年生443名、8年生355名)出身でした。約41.3%が一人っ子で、92.5%が母子家庭、7.5%が片親家庭であった。また、参加者の出身地は、農村が22.3%、県庁所在地が27.4%、小都市が41.9%、大都市が8.3%でした。さらに、参加者の母親の73.4%、父親の70.4%の教育レベルが高校以下で、一人当たりの平均月収が3000円以上の家庭が52.2%と、2015年の中国の平均よりも高かった。

親のモニタリングの尺度

10項目からなるParental monitoring of Internet use questionnaire(Su et al.2015)を用いて評価しました。思春期の子どもたちに、過去6カ月間のインターネット利用時の居場所や頻度、期間、同伴者、利用内容を親が把握しているかどうかを尋ねた。

親は私がどこでインターネットをしているか知っている」、「親は私が家でしかインターネットをしないように制限している」などの項目がある。すべての項目は、3点満点(1=まったくない、3=よくある)で評価しました。10項目の平均値を算出したところ、スコアが高いほど親のモニタリングが強い。

インターネットゲーム障害の尺度

青年のインターネットゲーム障害の測定には、8項目からなるインターネット依存症尺度(IAS;Young, 1998)を用いた。「インターネットゲームのプレイ時間を減らそうとすると、動揺や不安を感じるか?」「オンラインゲームにもっともっと時間を費やさなければならないと感じるか?」など、インターネットゲームへの参加度合いについて質問しました。すべての項目は、3点満点(1=全くない、から、3=よくある)で評価した。

IAS(The eight-item Internet Addiction Scale)は日本ではYDQやDQと呼ばれることが多い尺度である。 https://www.ask.or.jp/article/353

YDQは1/0で採るのが一般的だが、IASは4件法でとっている。スコアリングの方法が違う。

親の監視とインターネットゲーム障害の間の相互効果

親のモニタリングとインターネットゲーム障害の間の相互効果を調べるために、3つの並列自己回帰モデル(parallel autoregressive models)を実施し、比較した。モデル1は、自己回帰パスと同時相関を含み、χ2(6)=2.872、CFI=0.996、RMSEA=0.035と、データによく適合していた。次に、モデル2では、T1での親の監視からT2でのインターネットゲーム障害、T2での親の監視からT3でのインターネットゲーム障害へのラグドパスと、T1でのインターネットゲーム障害からT2での親の監視、T2でのインターネットゲーム障害からT3での親の監視へのパスを追加しました。モデル2は、ベースラインモデル(モデル1)よりも適合性が高く、χ2(2)=0.255、CFI=0.997、RMSEA=0.000、Δχ2(4)=2.617、p>0.05だった。次に、T1での親の監視からT3でのインターネットゲーム障害へのパスと、T1でのインターネットゲーム障害からT3での親のモニタリングへのパスを追加し、モデル3を作成したが、モデル3は飽和モデルであり、追加したパスは有意ではなかつた。そのため、モデル2が最終モデルとして特定された。

f:id:iDES:20210312173403p:plain 図1

モデル2の分析では、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の間に相互関係があることが示され、T1での親のモニタリングが大きいと、T2でのインターネットゲーム障害が少ないことが有意に予測された。さらに、T2でのインターネットゲーム障害は、T3での親のモニタリングを負に予測し、B = -0.073, β = -0.048, p < 0.01, 95%CI [-0.137, -0.019]となった。しかし、T2での親のモニタリングからT3でのインターネットゲーム障害へのパス、およびT1でのインターネットゲーム障害からT2での親のモニタリングへのパスは有意ではなかった。

親のモニタリングとインターネットゲーム障害との関連性に対する親子関係の逆間接効果

予測変数と従属変数の間に有意な関係があることは、媒介効果を検討するための必要条件ではないという提案(Hayes, 2009)に基づき、Cole and Maxwell (2003)が推奨するステップワイズ法を用いてクロスラグモデルを検証し、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の相互関連に対する親子関係の媒介効果を検討した。まず、父と子の関係の媒介効果を検討する。

ステップ1では、親のモニタリング、父と子の関係、インターネットゲーム障害の間の自己回帰パス、および同時共分散を含むモデル4-1を実行した。モデル4-1は、χ2(18)=4.994、CFI=0.981、RMSEA=0.051と、データによく適合していた。ステップ2では、モデル5-1に、親の監視とインターネットゲーム障害の間の時間的なラグドパスを追加したところ、χ2(14) = 5.135, CFI = 0.984, RMSEA = 0.053, Δχ2(4) = 0.141, p > 0.05という良好なデータ適合性を示した。

ステップ3では、モデル6-1に、親のモニタリングと父子関係のラグドパス、および父子関係とインターネットゲーム障害のラグドパスを追加したところ、χ2(6)=0.944、CFI=1.000、RMSEA=0.000、Δχ2(8)=4.194、p>0.05と、データによく適合した。ステップ4では、T1での親の監視からT3でのインターネットゲーム障害へのパスと、T1でのインターネットゲーム障害からT3での親の監視へのパスをモデル7-1に追加した。

しかし、モデル7-1は飽和したモデルであり、追加されたパスは有意ではなかつた。したがって、モデル6-1が最終モデルとして特定された(図2参照)。同様の手順で、母子関係の媒介作用を調べたところ、最終モデル(モデル6-2、図3参照)は、χ2(6)=1.198、CFI=1.000、RMSEA=0.012、Δχ2(8)=7.922、p>0.05と、データによく適合した。

f:id:iDES:20210312173413p:plain 図2

f:id:iDES:20210312173422p:plain 図3

図2に示すように、T1での親の監視からT2での父子関係へのパスは、B = -0.031, β = 0.211, p < 0.01, 95% CI [0.024, 0.038]と有意であった。また、T2時点の父親と子どもの関係は、T3時点のインターネットゲーム障害を負に予測し、B = -0.008, β = -0.119, p < 0.01, 95%CI [-0.012, -0.005]となった(図2の中央の下降パスを参照)。ブートストラップ解析の結果、親子関係を介したインターネットゲーム障害に対する親のモニタリングの間接効果は、B = -0.002, SE = 0.002, β = -0.003, p < 0.05, 95% CI [-0.005, -0.001]と、有意かつ正の値を示しました。一方、T1におけるインターネットゲーム障害は、T2における父親と子どもの関係の悪化を有意に予測し、B = -0.101, β = -0.102, p < 0.01, 95% CI [-0.149, -0.061]となった。さらに、T2での親子関係の悪化は、T3での親のモニタリングを低下させる可能性があり、B = -0.067, β = -0.05, p < 0.05, 95% CI [-0.114, -0.022]となりました(図2の中央の上向きパスを参照)。ブートストラップ分析の結果、インターネットゲーム障害が父子関係を介した親のモニタリングに及ぼす間接効果は、B = -0.008, SE = 0.003, β = -0.005, p < 0.05, 95% CI [-0.017, -0.002]と、有意かつ正の値を示した。

図3に示すように、T1での親のモニタリングは、T2での母子関係の低下を予測し、B = 0.082, β = 0.140, p < 0.01, 95% CI [0.058, 0.106]となった。しかし、T2における母子関係は、T3におけるインターネットゲーム障害を予測せず、B = 0.058, β = 0.036, p > 0.05, 95% CI [-0.005, 0.121]となった。一方、T1でのインターネットゲーム障害は、T2での母子関係の悪化を有意に予測し、B = -0.097, β = -0.096, p < 0.01, 95% CI [-0.142, -0.058]となった。T2での母子関係はT3での親のモニタリングを予測せず、B = -0.042, β = -0.037, p < 0.05, 95% CI [-0.085, 0.001]であった(図3の中央の上向きのパスを参照)。親のモニタリングが母子関係を介してインターネットゲーム障害に及ぼす有意な間接効果は認められなかった。

考察

本研究では、親のモニタリング、インターネットゲーム障害、親子関係の関連性に関する理解を深めるために、いくつかの重要な知見が得られました。まず、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の間には、相互関係があることがわかった。また、父子関係は、親のモニタリングとインターネットゲーム障害との間のパスの両方向に対して媒介効果を有していたが、母子関係を介した親のモニタリングのインターネットゲーム障害への有意な間接効果(およびその逆)は見られず、親のモニタリングとインターネットゲーム障害との間の相互関係に対する父子関係と母子関係の影響が異なっていることが示された。以上の結果から、思春期早期におけるインターネットゲーム障害のリスクを低減するには、親の要因(インターネット利用に対する親の監視が強いことや、父子関係が良好であることなど)が寄与している可能性が高いことが示唆された。

本研究の結果は、親の監視が青年のインターネットゲーム障害を負に予測することを示した。しかし、本研究では、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の関係は、時間的に安定していない。実際、T1での親のモニタリングは、T2でのインターネットゲーム障害の低さを予測したが、T2での親のモニタリングは、T3でのインターネットゲーム障害を有意に予測していなかった。この結果は、インターネットゲーム障害に対する親の監視の効果に矛盾があることを示唆している。今回の知見と一致するように、いくつかの先行研究では、親のモニタリングのレベルが高いほど、問題のあるインターネット使用やその他の行動上の問題を減らすのに有効であることが示されている(例えば、Bleakley et al., 2016; Collier et al., 2016; Jang and Ryu, 2016)。しかし、ビデオゲームの制限などの親のモニタリングは、インターネットゲーム障害を軽減する有効な方法ではないかもしれないと指摘する実証研究もある (Livingstone and Helsper, 2008; Van den Eijnden et al., 2010; Shin and Huh, 2011; Choo et al., 2015)。 考えられる説明の1つは、中国文化と西洋文化の間の親のスタイルの違いかもしれない。欧米の親は子どもの個人的な選択や自尊心をより尊重するのに対し、中国の親は親の権威を重視し、子どもの行動をより容易に監督する傾向がある(Chao and Tseng, 2002)。そのため、中国の親は、思春期の子どもがインターネットの過剰利用などの問題行動を示したときに、子どもの行動をより多くモニタリング・制限するのに対し、欧米の親は、親子のコミュニケーションを増やし、思春期の子どもがルールを決められるように、より多くのアドバイスやサポートを行う傾向がある (Su et al., 2015; You et al., 2017). さらに、このような伝統的な文化の中で育った中国の青年は、欧米の青年に比べて、親のモニタリングを受け入れる傾向が強いと言われている。

  • Livingstone S., Haddon L., Görzig A., Ólafsson K. (2011). Risks and Safety on the Internet: the Perspective of European Children Vol. 51 London: EU Kids Online; 581–604.
  • Van den Eijnden R. J., Spijkerman R., Vermulst A. A., van Rooij T. J., Engels R. C. (2010). Compulsive Internet use among adolescent: bidirectional parent-child relationships. J. Abnorm. Child Psychol. 38 77–89. 10.1007/s10802-009-9347-8
  • Shin W., Huh J. (2011). Parental mediation of teenagers’ video game playing: antecedents and consequences. New Media Soc. 13 945–962. 10.1177/1461444810388025
  • Choo H., Sim T., Liau A. K., Gentile D., Khoo A. (2015). Parental influences on pathological symptoms of video-gaming among children and adolescent: a prospective study. J. Child Fam. Stud. 24 1429–1441. 10.1007/s10826-014-9949-9

インターネットゲーム障害から親のモニタリングへのパスの結果、T2でのインターネットゲーム障害はT3での親のモニタリングと有意に関連することが示された。今回の研究では、思春期の子どもがインターネットゲーム障害のリスクを抱えていることを親が認識している場合、半年後の子どもの行動に対する親のモニタリングは少なくなるようだ。一方、先行研究では、親のモニタリングは、青年の自己調整能力の認識と関連していることが明らかになっている (Padilla-Walker and Coyne, 2011)。この矛盾を説明する1つの可能性として、親はインターネットゲーム障害に対して、すぐに厳しいモニタリングを増やす傾向があるが、半年後に、そのような厳しいモニタリングでは青年のオンラインゲーム活動をうまくコントロールできないと感じると、モニタリングを緩和するかもしれない (Su et al., 2015). 思春期の外向性問題に関する研究でも、親によるコントロールの試みを認識した際の失敗が、その後の親によるコントロールの試みの減少につながる可能性があることがわかっている(Pinquart, 2017)。もう1つの可能な説明は、インターネットゲーム障害のレベルが高い青年が、親のモニタリングに適応する方法を学ぶかもしれないということである。ゲームのモチベーションが高い問題のあるゲーマーは、興味のある活動に従事するための創造的な方法を考案するかもしれない。つまり、最初は親の監視を気にしてプレイ時間を減らし、親の目に触れないように活動する方法を模索するかもしれない(例:友人の家でプレイする、お金を貯めて自分のデバイスを買って隠す、授業や他の活動をサボってゲームセンターに行くなど)。さらに、思春期の子どもたちが家の外で過ごす時間が増えるため、年齢が上がるにつれて親が子どもたちをモニタリングすることが難しくなる。さらに、ある調査によると、9〜16歳の青少年の約49%が寝室でインターネットを利用し、青少年が自宅でインターネットを利用しているにもかかわらず、親がモニタリングすることが難しくなっている (Livingstone et al., 2011)。本研究における親の監視とインターネットゲーム障害との間の直接効果は、時間の経過とともに安定していないことを考慮すると、より詳細な研究と十分な証拠が得られるまでは、慎重に解釈すべきであると考えられる。

縦断的間接効果

本研究で最も重要な知見は、親のモニタリングと青年のインターネットゲーム障害の相互関係に、父子関係と母子関係が異なる影響を与えていることであると考えられる。具体的には、父子関係のみが、親のモニタリングとインターネットゲーム障害との関係に相互的な間接効果を持ち、母子関係には関連が見られなかった。母子関係の重要性については多くの研究で報告されているが、本研究では、父親の方が青年のインターネットゲーム障害の予防に重要である可能性が明らかになった。これらの結果は、親のモニタリングと父子のつながりが、小学6年生から8年生のサンプルにおける問題行動の減少と関連するという別の縦断的研究の結果と一致している(Fosco et al., 2012)。さらに、Liu et al. (2013) は、父親と子どもの関係がインターネットゲーム障害を予測し、母親と子どもの関係は予測しないことを明らかにした。1つの可能な説明は、父親と母親はほとんどの家庭で異なる役割を果たしており、そのため思春期の子供に影響を与える方法も異なるということである。先行研究では、母親は表現的役割(育児、コミュニケーション、感情的ケアなど)に特化しているのに対し、父親は道具的役割(経済的支援、遊び、助言や指導など)を担っていることが示されている。したがって、母親は思春期の感情に大きな影響を与えるのに対し、父親は主に思春期の行動に影響を与える可能性がある(Fosco et al., 2012; Liu et al., 2013; Feld, 2015; Pinquart, 2017)。この場合、父親は、青年が社会的スキルを身につけ始め、困難な状況に対処するための指針を求めるときに、重要な役割を果たすかもしれない。思春期の子どもたちは、父親の不在によって、関与や十分なサポートが得られないために被害を受けることが知られており、その結果、オンライン活動を求める可能性が高くなる(Videon, 2005; Su et al., 2015)。もう一つの説明は、子育てや親子関係の文化的な違いかもしれないん。中国の文化では、父親は家族の中心にいる無関心な支配者とみなされており、青年の行動を支配しようとして、青年をより多く叱り、批判する傾向がある(You et al., 2017)。父親から疎外されていると感じている青年は、拒絶されていると感じやすく、ビデオゲームとのつながりを求めやすいかもしれない(Liu et al., 2013)。

また、クロスラグドモデルでの逆方向の分析では、インターネットゲーム障害の高さは、最初は父子関係や母子関係の悪化につながるかもしれないが、その後、父子関係の悪化のみが親のモニタリングの高さにつながることが示唆された。ビデオゲームに依存している青年は、学業や行動上の問題など、インターネットゲーム障害の結果に関連して、親に不安を抱かせる可能性がある(Young and de Abreu, 2011; Griffiths et al., 2015)。その結果、親は彼らに対して批判的になる傾向があり、それが親子間の対立を悪化させ、その後の親子関係を悪化させる可能性がある。上述したように、父親は子どもの問題行動を正すことに、母親は心のケアに、より深く関わる傾向がある。したがって、インターネットゲーム障害が強く、父子関係が悪化している青年は、インターネット利用を監視する傾向が強いと考えられる。

本研究では、親子関係に焦点を当てたが、インターネットゲーム障害が、親のモニタリングと親子関係の関係を媒介する可能性があることがわかった。具体的には、クロスラグモデルにより、インターネット利用に対する親のモニタリングが高いと、インターネットゲーム障害が減少し、その結果、より質の高い親子関係が形成される可能性が示された。

意義

本研究は、親のモニタリング、親子関係、インターネットゲーム障害の間の相互関係を検証した初めての研究であると考えられる。本研究で得られた知見は、ターゲットを絞った介入に影響を与える可能性がある。特に、本研究では、親のモニタリングがインターネットゲーム障害の直接的な予測因子であることが明らかになった。そのため、青年のインターネットゲーム障害を管理する親の行動が重要であると考えられる。本研究では、思春期の日常活動に関する知識を深め、インターネット利用の時間、場所、内容に関するルールを設定するなど、一般的な親のモニタリングが、思春期のインターネットゲーム障害を減少させる可能性があることを示唆する証拠が得られた。思春期のインターネット利用に対する効果的な親のモニタリングのためには、思春期の子どもとのオープンなコミュニケーションを追求するとともに、親と思春期の子どものインターネット利用を考慮しながら、親同士のつながりを構築することが最善の戦略であるかもしれない(Symons et al.2017)。次に、本研究では、親のモニタリングとインターネットゲーム障害との双方向の関連性に対する父子関係と母子関係の影響の違いの可能性を検討しました。本研究の結果によると、家族ベースのアプローチに関する過去の報告 (Lochman and Van den Steenhoven, 2006; Liu et al., 2012)。この結果は、父親が思春期の子どもの行動に気を配り、子どものインターネット利用に関するルールや監督を行うことで、母親は感情的な温かさやコミュニケーションで貢献していることを示している。

先行研究

最近の研究では、親のモニタリングの低さや親子関係の悪さが、青年期のインターネットゲーム障害の高さを予測することが強調されている(Liu et al., 2012; Koo and Kwon, 2014; Li et al., 2014; Bleakley et al., 2016; Jang and Ryu, 2016)。しかし、大半の研究は、思春期のインターネットゲーム障害に対するこれら2つの変数の一方向性効果に焦点を当てており、我々の知る限り、思春期における親のモニタリング、親子関係、インターネットゲーム障害の相互関係を検討した研究はまだ存在しない。

  • Liu Q. X., Fang X. Y., Deng L. Y., Zhang J. T. (2012). Parent–adolescent communication, parental Internet use and Internet-specific norms and pathological Internet use among Chinese adolescent. Comput. Hum. Behav. 28 1269–1275. 10.1016/j.chb.2012.02.010
  • Koo H. J., Kwon J. H. (2014). Risk and protective factors of Internet addiction: a meta-analysis of empirical studies in Korea. Yonsei Med. J. 55 1691–1711. 10.3349/ymj.2014.55.6.1691
  • Li W., Garland E. L., Howard M. O. (2014). Family factors in Internet addiction among Chinese youth: a review of English- and Chinese-language studies. Comput. Hum. Behav. 31 393–411. 10.1016/j.chb.2013.11.004
  • Bleakley A., Ellithorpe M., Romer D. (2016). The role of parents in problematic Internet use among US adolescent. Media Commun. 4 24–34. 10.17645/mac.v4i3.523
  • Jang Y. B., Ryu S. H. (2016). The role of parenting behavior in adolescents’ problematic mobile game use. Soc. Behav. Pers. 44 269–282. 10.2224/sbp.2016.44.2.269

いくつかの実証研究では、親のモニタリングによって、問題のあるインターネット使用、物質使用、危険な性行動、非行などの問題行動のリスクを低減できることが示唆されている (Liau et al., 2008; Xu et al., 2012; Bleakley et al., 2016)。

  • Liau A. K., Khoo A., Ang P. H. (2008). Parental awareness and monitoring of adolescent Internet use. Curr. Psychol. 27 217–233. 10.1007/s12144-008-9038-6
  • Xu Z., Turel O., Yuan Y. (2012). Online game addiction among adolescent: motivation and prevention factors. Eur. J. Inf. Syst. 21 321–340. 10.1057/ejis.2011.56

親は、青年がインターネットゲーム障害を発症するリスクを減らすために、青年のインターネット利用を監視し、助言する上で重要な影響力を持っている(Lee and Chae, 2007; Bleakley et al., 2016)。 Collier et al. (2016) が行った57件の研究のメタ分析では、親のモニタリングが、青年のゲーム時間や性行動の減少と関連することがわかった。さらに、韓国の1800人の青年を対象とした調査では、親のモニタリングが問題のあるモバイルゲームの使用を減らすのに有効である可能性が明らかになった(Jang and Ryu, 2016)。しかし、親のモニタリングが青年期のインターネットゲーム障害にどのように寄与するかについての縦断的データは不十分だ。

  • Lee S. J., Chae Y. G. (2007). Children’s Internet use in a family context: influence on family relationships and parental mediation. Cyber Psychol. Behav. 10 640–644. 10.1089/cpb.2007.9975
  • Collier K. M., Coyne C. M., Rasmussen E. E., Hawkins A. J., Padilla-Walker L. M. (2016). Does parental mediation of media influence child outcomes? A meta-analysis on media time, aggression, substance use, and sexual behavior. Dev. Psychol. 52 798–812. 10.1037/dev0000108
  • Jang Y. B., Ryu S. H. (2016). The role of parenting behavior in adolescents’ problematic mobile game use. Soc. Behav. Pers. 44 269–282. 10.2224/sbp.2016.44.2.269

思春期の子どもが自分のオンライン活動をコントロールできると感じている場合、親はモニタリングをあまり行わない可能性があり(Padilla-Walker and Coyne, 2011)、親のモニタリングとインターネットゲーム障害の間の因果関係は双方向であることが示唆されている。

  • Padilla-Walker L. M., Coyne S. M. (2011). “Turn that thing off!” parent and adolescent predictors of proactive media monitoring. J. Adolesc. 34 705–715. 10.1016/j.adolescence.2010.09.002

親子関係の悪化は、思春期の子どもたちが心理的欲求を満たすことにも不満を抱かせ、親に不快感を覚えたり誤解されたりすると、心理的欲求を満たすためにインターネットゲームをするようになるかもしれない (Joussemet et al., 2008; Xu et al., 2012)。インターネットゲームの魅力は、個人の基本的な心理的欲求の充足に基づいていることを記録した研究もあり(Przybylski et al., 2010)、思春期の子どもたちは、インターネットゲームが基本的な心理的欲求を充足するため、その結果ではなく、インターネットゲームの楽しさや興味によって、より内発的に動機づけられる可能性がある(Ryan and Deci, 2000)。3年間の縦断研究では、高い親子関係がインターネットゲーム障害のリスクの低下につながる可能性があることが明らかになった(Van den Eijnden et al.、2010)。同様に、ヨーロッパとアジアの青少年のサンプルから得られた知見では、高い親子関係が、親のモニタリングの成功とインターネットゲーム障害の予防に極めて重要であることが指摘されている (Kwon et al., 2011; Liu et al., 2013; Zhu et al., 2015; Bleakley et al., 2016; Wartberg et al., 2017。親子関係が親の監視とインターネットゲーム障害の両方に関連していることを考えると、この2つの変数の関連性に媒介効果があるのかもしれない。

  • Joussemet M., Landry R., Koestner R. (2008). A self-determination theory perspective on parenting. Can. Psychol. 49 194–200. 10.1037/a0012754
  • Przybylski A. K., Rigby C. S., Ryan R. M. (2010). A motivational model of video game engagement. Rev. Gen. Psychol. 14 154–166. 10.1037/a0019440
  • Ryan R. M., Deci E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. Am. Psychol. 55 68–78. 10.1037/0003-066X.55.1.68
  • Van den Eijnden R. J., Spijkerman R., Vermulst A. A., van Rooij T. J., Engels R. C. (2010). Compulsive Internet use among adolescent: bidirectional parent-child relationships. J. Abnorm. Child Psychol. 38 77–89. 10.1007/s10802-009-9347-8
  • Kwon J. H., Chung C. S., Lee J. (2011). The effects of escape from self and interpersonal relationship on the pathological use of Internet games. Community Ment. Health J. 47 113–121. 10.1007/s10597-009-9236-1
  • Liu Q. X., Fang X. Y., Zhou Z. K., Zhang J. T., Deng L. Y. (2013). Perceived parent–adolescent relationship, perceived parental online behaviors and pathological Internet use among adolescent: gender-specific differences. PLOS ONE 8:e75642. 10.1371/journal.pone.0075642
  • Zhu J., Zhang W., Yu C., Bao Z. (2015). Early adolescent Internet game addiction in context: how parents, school, and peers impact youth. Comput. Hum. Behav. 50 159–168. 10.1016/j.chb.2015.03.079
  • Wartberg L., Kriston L., Bröning S., Kegel K. (2017). Adolescent problematic Internet use: is a parental rating suitable to estimate prevalence and identify familial correlates? Comput. Hum. Behav. 67 233–239. 10.1016/j.chb.2016.10.029

Fornell & Larcker基準とHTMT基準の使い分け

iopscience.iop.org

  • M R Ab Hamid, W Sami and M H Mohmad Sidek, 2017, Discriminant Validity Assessment: Use of Fornell & Larcker criterion versus HTMT Criterion, Journal of Physics: Conference Series, Volume 890, 1st International Conference on Applied & Industrial Mathematics and Statistics 2017 (ICoAIMS 2017) 8–10 August 2017, Kuantan, Pahang, Malaysia.

概要

潜在変数を扱う研究では,多重共線性の問題を防ぐために,弁別的妥当性(discriminant validity)の評価が必須である。Fornell and Larcker基準は、この目的のために最も広く使用されている方法である。しかし heterotrait-monotrait (HTMT)の相関比法による弁別的妥当性評価を確立するための新しい方法が登場した。
FornellとLarckerの基準を用いて認めることができた。しかし、HTMT基準を採用した場合、弁別的妥当性が問題となった。これは、調査対象の潜在変数が多重共線性の問題に直面していることを示しており、さらに詳細を検討する必要がある。HTMT基準は潜在変数間の無差別性の可能性を検出できる厳格な尺度であることを示唆している。

弁別的妥当性の意義

研究者は事前に弁別的妥当性を確立する必要がある。これは、研究対象の因果関係を測定するために使用される潜在的な構成概念が、互いに真に異なるものであることを確認するためである。言い換えれば、それらは異なるものであり、多重共線性の問題を引き起こすような同じものを測定していないということである。この問題を解決せずに仮説モデルの検証を進めてしまうと、モデル全体の解釈が誤解を招いたり、役に立たなかったりする可能性がある。そのため、まず、差別的妥当性の評価を確立する必要がある。

以前、研究者は弁別的妥当性の評価に1981年に提案されたFornell and Larcker基準[2]を使用していた。しかし、最近では2015年にHenseler[1]がFornell and Larcker基準を否定しました。彼らは、従来の基準では、構成概念間の識別性を確立するにはまだ不十分であることを発見し、研究対象の構成概念間の識別性を捉えることができる、より強固なアプローチを提案した。

  • 1.Henseler J, Ringle CM, Sarstedt M 2015 J. Acad. Market. Sci.43 115-35
  • 2.Fornell C, Larcker DF 1981 J. Mark. Res.1 39-50

SmartPLS sofware version 2.0.M3を使用。PLS-SEMでは、reflective outer model の評価では、個々の項目の信頼性(指標の信頼性)、各潜在変数の信頼性、internal consistency 内的整合性(クロンバック・アルファCronbach alpha および複合信頼性composite reliability)、構成概念妥当性construct validity(loading and cross-loading)、収束的妥当性 convergent validity(抽出された平均分散(AVE))および弁別的妥当性(Fornell-Larcker基準、cross loading、HTMT基準)が検討される。

内的整合性

複合信頼性/クロンバック・アルファの値は、0.60から0.70の間で許容されるが、より高度な段階では、値は0.70より高くなければならない[7]。しかし,0.90以上は望ましくなく、0.95以上は確実に望ましくない[8]。

  • 7.Hair J, Hult GTM, Ringle C, Sarstedt M 2014 A Primer on Partial Least Squares Structural Equation Modeling (PLS-SEM) (Los Angeles: SAGE Publications, Incorporated)
  • 8.Nunnally JC, Bernstein IH 1994 Psychological theory (New York, NY: MacGraw-Hill)

指標の信頼性

指標の信頼性は、潜在変数によって説明される指標の分散の割合である。値の範囲は0から1である。outer loadingの値は0.70より高いことが望ましく,outer loadingが0.40から0.70である指標を削除することが,複合信頼性と抽出された平均分散(AVE)の増加に寄与する場合には,削除を考慮すべきである [7]。一方、outer loadingが0.40未満の指標は常に削除されるべきである[5],[9]。

  • Hulland J 1999 Strategic Management Journal 20 195–204.

収束的妥当性

収束的妥当性とは,同じ構成概念の複数の指標が一致している場合に,その相関性のレベルを測定するための評価である。収束的妥当性を確立するためには、指標の因子負荷、複合信頼性(CR)、平均抽出分散 average variance extracted(AVE)を考慮する必要がある[7]。この値は0から1の範囲である。AVEの値が0.50を超えれば、収束的妥当性が十分にあると言える[10],[11],[7],[2].

  • 10.Bagozzi R P, Yi Y 1988 J. Acad. Market. Sci. 16 74–94
  • 11.Henseler J, Ringle, Sinkovics RR 2009 J. Acad. Market. Sci. 20 227–319

弁別的妥当性

弁別的妥当性とは、経験的に構成が実際にどの程度異なっているかを指す。また、重複する構成間の差異の程度を測定する[7]。弁別的妥当性は、指標のcross-loading、Fornell & Larcker基準、Heterotrait-monotrait (HTMT) の相関比を用いて評価することができる。交差負荷 cross-loadingでは、因子負荷のカットオフ値が0.70以上であることを条件に、割り当てられた構成の因子負荷指標が他の構成のすべての負荷よりも高くなければならない[[5],[7]]。

第2の基準は,Fornell-Lacker基準を用いて弁別的妥当性を評価することである[12]. この方法は,抽出された平均分散 (AVE) の平方根潜在的な構成概念の相関を比較するものである [7].潜在的な構成概念は,他の潜在的な構成概念の分散ではなく,それ自身の指標の分散をよりよく説明する.したがって、各コンストラクトのAVEの平方根は、他の潜在的コンストラクトとの相関よりも大きな値を持つべきである[7]

  • 12.Fornell C, Cha J 1994 Advan. Meths. Market. Res. 407 52–78

弁別的妥当性を示すもう一つの指標は,Heterotrait-monotrait (HTMT) の相関比である。Henselerら[1]は,この方法の優れた性能をモンテカルロシミュレーション研究によって提案し,HTMTが交差荷重基準(0.00%)やFornell-Lacker(20.82%)と比較して,高い特異性と感度率(97%~99%)を達成できることを明らかにした。また、HTMTの値が1に近い場合は、弁別性が不足していると考えられる。HTMTを基準として使用するには、あらかじめ定義された閾値と比較する必要がある。HTMTの値がこのしきい値よりも高ければ、弁別的妥当性がないと結論づけることができる。いくつかの著者は、0.85の閾値を提案している[13]。また、Goldら[14]はこれに反論し、0.90の値を提案しています。

  • 13.Kline RB 2011 Principles and Practice of Structural Equation Modeling Third Edition (New York: The Guilford Press)
  • 14.Gold AH, Arvind Malhotra AH 2001 J. Manage. Inform. Syst. 18 185-214.

outer modelの評価

各項目の信頼性の評価は、交差負荷を確認することによって行われ、各項目の因子負荷の値は、それぞれの構成要素に対して高いことがわかった(各因子負荷はカットオフ値の0.70よりも大きい)。このことは,各項目の信頼性が高いことを示しており,各項目が指定された潜在的な構成概念に割り当てられていることを補強している。間接的には、収束的妥当性が支持されました。つまり、構成概念と項目の間に共有された分散があるということである [[16],[17]. 各因子の負荷は,有意水準5%で有意であった。

  • 16.Barclay D, Higgins C, Thompson R 1995 Technology Studies. 2 285-309
  • 17.Sang S L, Lee JD, Lee J 2010 E-government adoption in Cambodia: A partial least squares approach Transforming government: People, Process and Policy. 4 138-57

f:id:iDES:20210311013653p:plain

表1を参照すると、すべての構成要素のCRは0.70以上で、AVEの値は0.729から0.839の範囲内にある。弁別的妥当性は,Fornel and Larcker (1971) を用いて,対角線上の各AVEの平方根と,関連する行と列の各構成要素の相関係数(非対角線上)を比較することで評価する。「Productivity-Employee」構成と「Productivity-Stakeholder」構成については、ほとんど異論はない。しかし、その差はそれぞれ0.009、0.007とあまりにも小さく、無視することができる[18]。総合的に見て、この測定モデルには弁別的妥当性が認められ、構成間の弁別的妥当性を支持する。

  • 18.Rahim MA, Magner NR 1995 J. Appl. Psychol. 80 122-32

弁別的妥当性:Heterotrait-monotrait(HTMT)基準

以下の表2は、HTMT分析の出力を示したもの。

f:id:iDES:20210311013704p:plain

HTMTの結果から、表2の太字の値は、HTMT0.85の基準に照らして、弁別的妥当性に問題があることを示しています。これは、HTMT基準が潜在的な構成要素間の共線性の問題(多重共線性)を検出していることを意味している。culture-productivity, culture-employee, culture-stakeholder, productivity-employee, productivity-stakeholder, productivity-university performance (UP), employee-stakeholder and stakeholder-university performanceに問題があることがわかった。 おそらく、構成のほとんどの項目が同じことを測定しているのではなかと思われる。言い換えれば、影響を受ける構成における回答者の認識から、重複する項目が含まれているということである。

中国テンセントが、ゲームの「顔認証システム」を導入開始。認証しない場合、12歳以下と識別されゲームが「1日1時間」しか遊べなくなる(AUTOMATON)

automaton-media.com

「テンセント健康システム」は、未成年の健康を守るという、社会的な義務を果たすために、テンセントが独自に開発したシステムである。このシステムが実装されたゲームにおいては、すべてのユーザーが身分証明書(一般的には中国の国民カード)を提出することを要求される。提出された個人情報は、自動的に公安のデータシステム(公安权威数据平台)と照合し、ユーザーの年齢が認定される。12歳以下の未成年ユーザーは、上記のように1日1時間しか遊べなくなり、12歳以上18歳以下の未成年は1日2時間しか遊べなくなるという。両方とも21時から翌日8時までの時間帯は遊べない。

テンセントはこの技術をゲームだけで使うわけではないようだ。

www.showcase-gig.com

xtrend.nikkei.com

テンセントはゲーム会社はメッセンジャーアプリやQRコード決済をしている会社であり、短期的にゲームの売り上げが多少落ちても問題はない。また、顔認証がスタンダードになれば、自社開発のできない他のゲームメーカーはテンセントの技術を有料で利用する他なくなる。ビジネスとしては賢い。