井出草平の研究ノート

香川県ゲーム条例と韓国シャットダウン制度

ゲーム規制の代表例であった韓国の韓国シャットダウン制度が廃止となった。

gigazine.net

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の審議の時にも紹介されていた。

コンテンツ文化研究会のウェブページで閲覧が可能である。下記PDFの中に掲載されている。 icc-japan.blogspot.com

第2回検討委員会(2019年10月17日開催) 提出資料 「ネット依存・ゲーム障害の実態と対策」(久里浜医療センター院長 樋口進氏作成)

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今回廃止となった制度がどの程度、参考にされたのかは知りたいところである。

ゲーム時間選択制への移行

GIGAZINEにも書かれてあるが韓国のゲーム規制が全廃されたわけではない。「ゲーム時間選択制」(게임시간 선택제)というものに置き換えていくということのようだ。

rki.kbs.co.kr

韓国語ではこちらが詳しい。(公式情報?) www.mcst.go.kr

ゲームも青少年の重要な文化の一つです。
親とお子さんが一緒に行うゲーム時間選択制で、健全なゲーム利用文化を作って行きましょう。
게임도 청소년의 중요한 문화생활 중의 하나입니다.
부모와 자녀가 함께하는 게임시간선택제가 건전한 게임이용문화를 만들어 갈 것입니다.

印象的な文章が冒頭にある。

KOREA HERALDの記事では利用率の低さが指摘されている。

文化部によると、ゲーム会社7社の40本のゲームに対する選択制の利用率は、1%から28%である。
According to the Culture Ministry, the utilization rate for the choice system for 40 games by seven game companies ranges from 1 percent to 28 percent.

www.koreaherald.com

ゲーム時間選択制はゲームタイトルごとに登録するシステムのようだが、今後は一括して登録できるように改善していくとある。一括登録で保護者の手間を省いて少しでも使ってもらおうということだ。強制力のある制度にするのではなく、保護者が子どものゲーム時間をテクノロジーで管理したい場合、国がシステムを用意したので、使ってください、という位置づけのものである。

国家がゲーム利用の管理を徹底する方向に向かう中国と、保護者が管理をする方向に舵を切った韓国の差が浮き彫りになった2021年8月だったように思う。

1920年代クロスワードパズルが起こしたモラルパニック

Guardianの記事から。モラルパニックの代表例として取り上げられる一例。
近年はSNSスマホ、ゲームが子どもたちの人生を破壊してしまうのではないかと心配してする人たちがいるが、1920年代はクロスワード・パズルだった。
そんな馬鹿なと思う方もいるかもしれれないが、一読していただきたい。当時の人々は本気で心配していたのだ。

www.theguardian.com

ふぬけた状態の労働者、気の抜けた主婦、そして読書離れ。アラン・コナーが1920年代のクロスワード大パニックについて考察する。

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クロスワードというと、郊外に住む人がトワイフォードからの7.22便でタイムズを読み終えたり、大手企業の奥様がコーヒーモーニングを片付けながらテレグラフを読んだりするような、立派なものを連想する人もいる。

しかし、クロスワードが登場した当時はそうではなかった。今でいうならば、一週間分の麻薬メフェドロンと一緒に箱に入った「Benefit Cheat」という新しいビデオゲームを想像してもらい、それを中堅のタブロイド紙がどう書くかを想像してもらえると、当時イギリスでのクロスワードの位置づけがわかるだろう。

英国図書館の新しいオンライン新聞アーカイブでは、1920年ごろクロスワードの回答者たちは低級だと考えられていたことがわかる。

懸念されていたのは、クロスワードが普及するスピードだったようだ。どのくらいの速さかというと 1925年のノッティンガム・イブニング・ポスト紙は、「クロスワードパズル熱は、「プット・アンド・テイク 」の熱狂的流行というよりも、ますます過熱している。」と指摘している。このブームの影響については、アメリカを見てみる必要があるようだ。

新聞はしばらくの間、大西洋を越えてクロスワードがもたらした騒乱の話で読者を脅かしていた。「クロスワードパズル 包囲されたアメリカ」と、1924年のタムワース・ヘラルド紙は騒いでいる。クロスワードは、「数人の独創的な怠け者の娯楽から、国家的な制度へと成長した。社会のあらゆる階層の労働時間に壊滅的な影響を与えているため、脅威である」と説明している。

電車や路面電車、バス、地下鉄、私用オフィスや応接間、工場や家、そして、まだほとんどないことだが、カモフラージュのために賛美歌を持って教会のミサに参列するなど、どこでも、いつでも、恥ずかしげもなく、クロスワードに目を通している人々の姿が見られる。

これらの悪質なパズルは「家族の会話に最後の一撃を与え、家庭を崩壊させることも知られている」とヘラルドは書いている。クロスワードによる家庭崩壊は、夫の矯正を何よりも優先させた。

この1週間ほどの間に2度も、警察の判事が中毒者に1日3個のパズルを与えることを厳しく制限し、代わりに10日間の労働施設への入所を命じたという報道がされた。

1924年のロイター通信には、カナダからのさらなる警告が掲載されている。「クロスワードパズルとラジオが、オタワの公立図書館でここ数ヶ月の間に本の需要が著しく減少した原因であるとされている」が、これはイギリスで起こることに比べれば大したことではない。「1925年の記事では、「ウィンブルドンの図書館では、クロスワードパズルをしている人たちが辞書に与えたダメージがあまりにも大きいので、委員会がすべての辞書をしまい込むことにした」とある*1。ウィレスデンでも同じような悲しい話がある。一方、ダリッチ図書館では、「一人の人間が合理的なクロスワードを解くために新聞を独占しにいために、クロスワードの白い四角を太い鉛筆で黒く塗りつぶす」ということを始めた。紙を粗末にする自己中心的な解答者たち。

一方、書店では小説の売れ行きが落ちていることを嘆き、(クロスワードを解くために)「辞書、用語集、同義語辞典など」が売れるようになった。ノッティンガム・イブニング・ポスト紙はこう続けている。

映画館側も、クロスワードは人々を家に閉じ込めると訴えている。問題に没頭して、グロリア・スワンソンリリアン・ギッシュなどの映画スターのことをすっかり忘れてしまうのだ。

さらに悪いことに ノッティンガムでは、動物園の飼育係が手紙に振り回されている。その理由は、もちろん、クロスワードだ。

クロスワード・パズルを解いてほしい」というリクエストに応えているメスの白鳥を意味する3文字の単語は何ですか?メスのカンガルー、またはTOで終わる6文字の壊れやすい生き物とは?

街の反対側にある劇場では、ステージが空になっていた。

マシソン・ラング氏は、パズルに夢中になっていたため、異端審問のシーンで出番を逃してしまいました。このことは、彼が舞台の仕事に対して非常に几帳面であることから、非常に残念なことだった。 新劇場の「さまよえるユダヤ人」の劇団員は皆、主役と同様にクロスワード・パズルに興味を持っている。

誰がこの騒動に巻き込まれなかったのでしょうか? 食品の関係の人たちには関係なかったのではないか? 残念ながらそうではなかった。

ある女の子が、忙しい八百屋さんに、置いてある小麦粉の銘柄を聞いてみた。 忙しそうな八百屋さんが、売れると思って小麦粉の銘柄を教えてくれたとき、彼女は「何も買うつもりはないわ」と言った。彼女はただ、自分がやっているクロスワードパズルに合う名前があるかもしれないと思っただけだったのだ。 このクロスワード・ブームは病気のようなものだと言われている。学名は"cluemonia"*2かもしれない。

もしあなたが"cluemonia"を滑稽に感じるのであれば、1920年代のカール・ピルキントンのウェスタン・タイムズ紙の「ビレッジ・フィロソフィー」欄を読んでみて欲しい。

今週は、クロスワードパズルと呼ばれるものについて少し話題になった。私はそれが何か正しく理解しているつもりだが、それは時間に余裕のある最も優れた人々のためのものであるように思える...。 私には娘がいるが、彼女は私に何も質問しない。一週間に誰の役にも立たないようなことに夢中になっている。コンテストにも出ているが、まだ一度も勝ったことがないし、これからもそうなるとは思えない。

そして「クロスワード」のこのような側面、つまり競争が、警戒心を高めている。1925年のウェスタン・タイムズ紙の考察記事はこう始まる。

今世紀の最も顕著な特徴の1つは、人口の大部分を誘惑する競争熱である。この問題の根源は「何かを手に入れたい」という人間の本能的な欲求にあると考えられている。したがって、この点で人々の関心を引くために多くの独創的な装置が使用されていることは驚くことではなく、最新の方法はクロスワードパズルとして知られている。

ウェスタン・タイムズ紙は、クロスワードに費やす時間とエネルギーよりも「有益な本を読んだり、知的な会話をしたり」あるいは「仕事をしたり」したほうが有益であると説明している。1930年代までに、パズルに提供される賞品をめぐって法廷で争われるようになり、裁判官はスキルが関係するかどうかを判断することを迫られたり、1935年には弁護士が警察にボウストリートで「ワードは途方もなく簡単であり12歳の子どもでも解けるほど簡単だ」と主張するなどの事件が起こった。クロスワードが賭けと宝くじの法案に違反していることを意味することになり、法律的にも、道徳的にも犯罪になる可能性すら出てきた。

しかし、裁判官は、警察やモラリストを悩ませながらも、クロスワードを支持することになり、クロスワードは違法になることはなかった。

"Eating our own words"(間違ったことを言ったことを認めること。屈辱的表現。)というのはよく知られた言葉である。しかし、"Eating cross-words"というのは新しい趣味であり、しかも楽しいものである。というのもハントリー氏とパーマーズ社が、そのデザインから「クロスワード」と名付けたクリームビスケットを発売したからである。このビスケットの発売と同時にハントリー氏とパーマーズ社はクロスワードコンペティションを開始し、1,000ポンドの賞金を提供した。

もちろん、新聞社もクロスワードを掲載し、新聞売り場での売り上げをパズルに頼っているという側面もあった。

*1:クロスワード・パズルをするために辞書を頻繁にひくため辞書が痛んだためだと思われる

*2:clueとは手がかりのこと。おそらくcluemaniaが正しい。

ラーメン依存症

science.srad.jp

www.news-postseven.com

危険な食べ物や、それに対する依存性の問題は、海外に限った話ではない。日本人になじみ深い食品にも多く存在する。今回、5人の専門家に話を聞いたところ、全員が「危険」と声をそろえた中毒性の高い食べ物が「ラーメン」だ。

それをいうと香川県はうどん依存症だよな。

中国、「ゲームはアヘン」と最大級の表現で批判。更なる締め付け強化へ(GAME Watch)

game.watch.impress.co.jp

今回のTencentが発した自主規制が実行に移されれば、12歳以下の子どもたちは、ゲームが一切プレイできなくなるが、実際に辞めるわけではなく、今回も取り締まり対象となっている成人アカウントの不正利用が増えるだけだろう。

Tencentは顔認証で決済ができる「青蛙」(チンワー)をWechatpayの端末でリリースしており、生半可な技術で突破できるとは思えない。また、今回は国家データベースとも直結しており、不正をしたら当局に即バレるため楽観視しすぎではないかと思う。

オンラインゲームは「精神のアヘン」、中国国営紙が批判 関連株急落(AFP)

www.afpbb.com

中国で3日、オンラインゲームを国営メディアが「精神のアヘン」と批判し、騰訊控股(テンセント、Tencent)などゲーム大手の株価が急落した。これを受けてテンセントは、12歳未満の利用禁止を検討しているという。

デジタルデバイスで視力低下というデマを読売新聞がまき散らす

www.yomiuri.co.jp

東京都文京区の「こひなた眼科」では昨春の一斉休校後、近視の子供が例年より2割増えたという。藤巻拓郎医師(53)は「自宅でのスマホゲームや動画視聴、オンライン学習などが増えたためでは」とみており、「1日2時間を目安に学校で屋外活動を行うことや、端末の利用時間の制限が必要だ」と指摘する。

repolrパッケージで順序ロジスティック回帰での結果をMplusで検算[R][Mplus]

こちらでの計算をMplusで検算する。

ides.hatenablog.com

Mplus用のデータの書き出し

insomnia<-read.csv("insomnia.csv",header=TRUE)
insomnia<-as.data.frame(insomnia)
head(insomnia)

library(MplusAutomation)
variable.names(insomnia) # 変数名を書き出し

prepareMplusData(insomnia, filename="insomnia.dat", overwrite=T)

repolrのコード

library(repolr)
model <- outcome ~ treat + occasion + treat * occasion
fit <- repolr(model, subjects="case", data=insomnia, times=c(1,2),
              categories=4)
summary(fit)

Mplusのコード

TITLE: Your title goes here
DATA: FILE = "insomnia.dat";
VARIABLE: 
  NAMES = case treat occasion outcome count; 
  USEVARIABLES = case treat occasion outcome count Int;
  CATEGORICAL = outcome;
  IDVARIABLE = case;
  MISSING=.;

DEFINE:
  Int = treat * occasion;

ANALYSIS:
  ESTIMATOR = MLR; 
  
MODEL:
   outcome on treat occasion Int
  
plot:
    type = plot3;

もともとの式に積項があるので、DEFINEで定義しておく必要があるDEFINE:Int = treat * occasion;。ここで定義したIntUSEVARIABLESに入れておく必要がある。これは忘れがち。

結果

repolrの結果。

Coefficients: 
                coeff     se.robust  z.robust  p.value 
cuts1|2          -2.2671    0.2091   -10.8422    0.0000
cuts2|3          -0.9515    0.1769    -5.3787    0.0000
cuts3|4           0.3517    0.1751     2.0086    0.0446
treat             0.0336    0.2369     0.1418    0.8872
occasion          1.0381    0.1564     6.6375    0.0000
treat:occasion    0.7077    0.2458     2.8792    0.0040

Mplusの結果。

MODEL RESULTS

                                                    Two-Tailed
                    Estimate       S.E.  Est./S.E.    P-Value

 OUTCOME    ON
    TREAT             -0.034      0.240     -0.140      0.889
    OCCASION          -1.038      0.252     -4.117      0.000
    INT               -0.708      0.333     -2.123      0.034

 Means
    COUNT             12.908      0.291     44.390      0.000

 Thresholds
    OUTCOME$1         -2.267      0.217    -10.449      0.000
    OUTCOME$2         -0.951      0.188     -5.061      0.000
    OUTCOME$3          0.352      0.180      1.953      0.051

 Variances
    COUNT             40.421      1.854     21.804      0.000

解釈

推定値の符号が逆である。ちなみに正解はMplusの方だ。repolrでオプションで変えられないか試してみたが、無理だった。
ロバスト推定をした標準誤差だが、閾値の方は許容範囲としても、変数の方がかなり違う。これはまずいな、という感じだ。
順序ロジッスティック回帰分析をした際には、少なくとも、計算にどのソフトウェア・パッケージを使用したかという記述は必要だし、使ってはいけないパッケージもあるようだ。

サプリメント

Mplusでのbrant検定の結果

BRANT WALD TEST FOR PROPORTIONAL ODDS

                                   Degrees of
                      Chi-Square     Freedom   P-Value

  OUTCOME
    Overall test           7.827         6      0.251
    TREAT                  0.624         2      0.732
    OCCASION               0.155         2      0.926
    INT                    2.346         2      0.309