B Kadesjo, C Gillberg, B Hagberg,1999, Brief Report: Autism and Asperger Syndrome in Seven-Year-Old Children: A Total Population Study Journal of Autism and Developmental Disorders 29:44, 327-331 http://www.springerlink.com/content/q7842p370v730g2j/
スウェーデンのカルルスターに住む1985年生まれ(7歳)、826人(男438人・女388人)が対象の調査。この調査は高率で自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群*1の有病率が出ているが、サンプル数が少なく誤差が非常に大きいという弱点を持っている調査である。論文は1999年のものだが、調査は1992の秋に行われている。今から15ほど前の調査である。最近発表されたBaird他の調査は自閉症スペクトラムの有病率を116.1としていたので、この値より高い値を示している調査である。
文中からデータを補足して、表1を訳出したものが以下。
自閉症スペクトラムの有病率 | |||||
---|---|---|---|---|---|
診断名 | 人口比 | 人数 | 95%信頼区間(1万人あたり) | 男:女比 | 男:女(人口比) |
自閉性障害 | |||||
カナータイプ | 0.24 | 2 | 19-141 | 2:0 | 0.47:0 |
他のタイプ | 0.36 | 3 | 3:0 | 0.71:0 | |
アスペルガー症候群 | 0.48 | 4 | 13-124 | 4:0 | 0.94:0 |
他の自閉症に類似した状態 | 0.12 | 1 | 0:1 | 0:0.25 | |
自閉症スペクトラム全体 | 1.21 | 10 | 58-255 | 9:1 | 2.11:0.25 |
自閉症スペクトラムの有病率が1万人あたり121人。95%信頼区間をみると、58人〜255人(1万人あたり)と一桁の誤差を持っていることがわかる。理由は、サンプルが少なく、実際に診断が下りているのは2人3人だからである。1人診断が増えると、1万人あたり10人の有病率の変化がある。
この調査で使用されている自閉症スペクトラムは(1)自閉性障害(2)アスペルガー(3)他の自閉症に類似した状態*2の3つから成っている。
診断基準は、自閉性障害についてはDSM-III、アスペルガー症候群についてはギルバーグの診断基準を使用している。ギルバーグの診断基準についてはこちらを参照。ギルバーグの診断基準では91人がアスペルガー症候群と診断がつくが、国際基準のICD-10では3人のみがアスペルガー症候群という診断が下りるということであった。
参考として、サットマリ(Szatmari)の診断基準も登場するが、ギルバーグよりもサットマリの診断基準の方が広いという記述がある。ギルバーグ、サットマリの診断基準については下記の論文。
- C GILLBERG, 1991, Clinical and neurobiological aspects of Asperger syndrome in six family studies Autism and Asperger Syndrome.(pp122-146)
- P SZATMARI, R BREMNER, J NAGY, 1989, Asperger's syndrome: a review of clinical features, Canadian journal of psychiatry, vol. 34, no6, pp. 554-560.
また、調査対象は、8人は養護学級、818人は通常学級の子どもである。サンプルの約半数である409人に筆頭著者 (First author)であるBjorn Kadesjoが個別に面接、また親と先生に面接を直接して評価・診断をしている。