井出草平の研究ノート

鬱姫 なっちゃんの闘鬱記

週刊現代』を読んでいて知った本。



鬱姫 なっちゃんの闘鬱記

鬱姫 なっちゃんの闘鬱記

内容紹介
東大卒後、ニートになる著者の闘ウツ体験をマンガにした一冊。思春期から現在に至るまでの他人には理解されにくい切実な苦しみ、リストカット、 ウツと併発するパニック障害、拒食&過食症を本人執筆(自称マンガオタク)による1ページ読みきりマンガで展開。薬学部ならではの豊富な医学知識で、正しい薬の飲み方、病院の選び方、自立支援医療制度、家族やまわりの対応方法などを分かりやすく
答える。マンガに潜む、鬱姫のリアルな描写と散りばめられた小ネタは必読。


内容(「BOOK」データベースより)
東大卒でうつ病ニート!?「うつ」のことをリアルに描くエッセイ漫画。


著者からのコメント
これは、私が中学・高校時代からずっと患ってきたうつ病についての本です。実家を離れ大学に入り、やっと病院に行きだした、しかし4年生でかなり重度のうつになり、ついに親にカミングアウト。やっとのことで学校を卒業し、薬を飲んで自宅で休養しました。そんなこんなで、うつが治っていくまでのことを、過去を振り返りながら描きました。読みやすい、1Pずつの漫画で、どこからでも読めます。また、うつエッセイに加え、「よい病院への行き方」薬学部卒の知識をいかした「薬はどうやって効くのか」「うつへの対応」「睡眠のとり方」など、情報も漫画で沢山入っています。うつで苦しんでいる方、周りにうつの人がいる方、うつの実態を知らない方でも、是非、読んでみていただけると嬉しいです!!絶対、損はさせません!!


本人はSSRIで改善。トレドミンデプロメールルボックス(本を読むとそういう形で書いてあった)は吐き気がどうもダメだったらしい。
吐き気はセロトニンの中でも、5-HT3だと考えられている(こちらなど参考。文献等ではこちらを参照*1)。拮抗薬としてはナゼア(オンダンセトロン、メマンチン等も)。ただ、保険適応がシスプラチン等の抗ガン剤に対してのみ認められているので処方は難しい。ガスモチン(5-TH4)やナウゼリン(CZT)にもそれなりには効果は得られる可能性はある。機序等は下記参考。

制嘔薬
 延髄の網様体にある嘔吐中枢が刺激されると嘔吐が起こる.一方,第四脳室底部にはchemoreceptor trigger zoneCTZ)が存在し,ジギタリス,アポモルフィンなどの薬物により刺激される.CTZへの刺激が嘔吐中枢に伝えられ,嘔吐が起こる.CTZにはドパミンD2受容体とセロトニン5-HT3受容体が存在し,セロトニンドパミン刺激により嘔吐が誘発される.嘔吐はその発生機序により中枢性嘔吐と反射性嘔吐に分類される.中枢性嘔吐は嘔吐中枢とCTZへの直接刺激により生じ,反射性嘔吐は消化管などの末梢臓器への刺激が求心路を経て反射的に嘔吐中枢に伝えられて起こる.


 末梢性制吐薬
 主として消化刺激などの反射性嘔吐を遮断するもので、胃粘膜局所麻酔薬,副交感神経避遮薬、胃腸機能調整薬が含まれる.麻酔薬は胃粘膜知覚神経を麻痺させ中枢への刺激伝導を遮断し制吐作用を示す(ストロカイン).副交感神経遮断薬トロピン,ブスコパン,コリオパンは消化管の痙攣性疼痛を抑え反射性に有効である.胃腸機能調整薬であるガスモナン(セロトニン5-HT4受容作用薬),セレキノン(オピアト作動薬)ナトン(ドパミン受容体桔抗薬)は慢性胃炎などによる悪心,嘔吐に用いられる

−−水島裕編『今日の治療薬2009』904.http://www.amazon.co.jp/dp/4524253513/


通常はCTZの「ナウゼリン」と5-HT4受容作用薬の「ガスモナン」が副剤として処方されることが多いと思う。たぶん。


追記:
表紙には売りだそうという意図がみえみえだが、中身はまとも。マンガなので読みやすいという利点もある。症状が若年者的なものを多くとり上げているので、若年者でうつ病を抱えた人に対しての推薦書の一つになるかもしれない。期待以上に面白かった。あえて、欠点を書くと、精神療法について書かれていない点だろうか。実際に著者が体験していないこと、薬学部出身であること、実際問題プライマリケアでカウンセリングを多用すると金銭的な負担がものすごく大きいので現実的ではないこと等を考えると、特に記載が無くて別に気にはならない。

*1:吐き気 [5-HT3]、嘔吐 [5-HT3]、下痢 [5-HT4])、 食欲減退[5-HT2]、体重減少[5-HT2]、焦燥感 [5-HT2]、 不安感増大・睡眠困難[5-HT2]、性機能障害[5-HT2]Baghai TC, Volz HP, Möller HJ., Drug treatment of depression in the 2000s: An overview of achievements in the last 10 years and future possibilities. World J Biol Psychiatry. 2006;7(4):198-222.