ゲーム依存は心理的な満足/フラストレーションによって起こる

篠原菊紀さんが紹介していた論文(参照)。

Andrew K. Przybylski, Netta Weinstein, 2019, Investigating the Motivational and Psychosocial Dynamics of Dysregulated Gaming: Evidence From a Preregistered Cohort Study Clinical Psychological Science 7(6). https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2167702619859341

ゲーム依存の研究で有名なPrzybylskiとWeinsteinの論文。内容の解釈は篠原菊紀さんが紹介している通りなので、下記では研究の抜粋を書こうと思う。

結果の概要

ゲーム依存は日常生活における満足/フラストレーションによって説明でき、逆の因果は認められなかった。また、日常生活における満足/フラストレーションは親が報告した当人の心理的問題も説明でき、こちらも逆の因果は認められなかった。

日常生活における心理的な満足/フラストレーションがゲーム依存の原因の一つである可能性が示された。

対象者

調査対象者はイングランドスコットランドウェールズに住む1,004人の青年と同数の保護者。イギリスを代表する標本。1004人の内訳は、14歳の青年(n = 497)と15歳の青年(n= 507)。男性が540人、女性461人、その他が3人。少なくとも1つのインターネットベースのゲームを利用していたのが525人。プレイ時間は平均は3時間11分。

ゲームの調節不全、満足/フラストレーションの計測

ゲーム依存の確定作業はできないため計測されていのは、ゲームの調節不全である。アメリカ精神医学会による診断基準DSM-5のインターネットゲーム障害を参考にこの論文オリジナルの尺度が作成されている(後述)。

日常生活における心理的な満足/フラストレーションはChen et al.(2015)の質問が使用とされている。

link.springer.com

24項目、自律(Autonomy)、関係性(Relatedness)、 能力(Competence)の3因子。質問文は「私は自分が取り込むことに選択と自由の感覚を感じている」(I feel a sense of choice and freedom in the things I undertake)などの項目である。これらは下記「基本的な心理的ニーズ理論」の3要素に対応している。

結果

5つ仮説が立てられているが、ここでは最後の仮説を紹介する。以下の3つの変数の関連が調べられている。

  • 心理的満足/フラストレーション(X)
  • ゲームの調節不全(Z)
  • 心理的問題(親報告)(Y)

f:id:iDES:20200303171028p:plain

結果は以下のようになった。

  1. 心理的満足/フラストレーションは調節不全のゲーミング(パスa)と心理的機能の問題(パスc)の両方の予測因子。
  2. 間接効果(パスa×b)は統計学的に有意。
  3. 逆の因果関係は支持されない。

ゲーム時間とゲームの調節不全

f:id:iDES:20200303171040p:plain

ゲーム時間は7のGaming timeであり、ゲームの調節不全は9のDysregulated gamingである。相関係数は0.16であり、1%水準で有意である。ただ相関係数はそれほど高くない。
相関係数の検定はあまりあてにはしてはいけないので、平均値で多少の関連があるという程度である。元データがないので推測まじりになるが、調節不全ではないグループでも、ゲーム時間が多い人もいるのだろう。
また、心理的フラストレーションとの相関係数は0.39あり、ゲームの調整不全は0.16であるため、ゲーム時間によってゲームの調節不全が説明が説明できる可能性は低いだろう。こちらも元データからモデルを作成して確認しなければ確定的なことはいえないことではあるが。

ゲーム利用と心理的要因の研究の流れ

2つの理論的枠組みが使われているとのこと(Deci & Ryan, 2000)。
1つ目は自己決定理論(self-determination theory)とよばれ、依存への没頭への動機づけに焦点をあてるもので、プレイヤーがゲームに対する不健全な情熱をどのように増加させていくかというもの(Lafrenière, Vallerand, Donahue, & Lavigne, 2009; Przybylski, Weinstein, Ryan, & Rigby, 2009)。
2つ目は基本的な心理的ニーズ理論(basic psychological-needs theory)であり、ゲームプレイを抑制する3つの要素から内。自律(Autonomy), 選択の感覚と精神的自由を経験すること(experiencing a sense of choice and psychological freedom)、親近感や他者とのつながりを感じること(feeling close and connected to others)。基本的な心理的ニーズに関する満足度とフラストレーションを調査することが重要だと考えられている(Vansteenkiste & Ryan, 2013)。

ゲームの調節不全の尺度

  • Spent too much time thinking about games.
  • Felt moody or anxious when unable to play.
  • Increased playtime to keep excitement high.
  • Felt that I should play less but couldn't.
  • Kept playing even though it caused problems.
  • Kept others from knowing how much I play.
  • Played to escape uncomfortable feelings.
  • Reduced or lost interest in other activities.
  • Risked friends or opportunities due to games.

日々の生活における心理的満足/フラストレーション

  1. I feel a sense of choice and freedom in the things I undertake
  2. I feel that my decisions reflect what I really want
  3. I feel my choices express who I really am
  4. I feel I have been doing what really interests me
  5. Most of the things I do feel like ‘‘I have to’’
  6. I feel forced to do many things I wouldn’t choose to do
  7. I feel pressured to do too many things
  8. My daily activities feel like a chain of obligations
  9. I feel that the people I care about also care about me
  10. I feel connected with people who care for me, and for whom I care
  11. I feel close and connected with other people who are important to me
  12. I experience a warm feeling with the people I spend time with
  13. I feel excluded from the group I want to belong to
  14. I feel that people who are important to me are cold and distant towards me
  15. I have the impression that people I spend time with dislike me
  16. I feel the relationships I have are just superficial
  17. I feel confident that I can do things well
  18. I feel capable at what I do
  19. I feel competent to achieve my goals
  20. I feel I can successfully complete difficult tasks
  21. I have serious doubts about whether I can do things well
  22. I feel disappointed with many of my performance
  23. I feel insecure about my abilities
  24. I feel like a failure because of the mistakes I make

追記(2020/04/29)

wired.jp

WIREDにこの論文の日本語解説が掲載されていたようだ。