ゲーム・食事・セックス・薬物のドーパミンの放出量の比較

以前のエントリの補足エントリ。ドーパミンの放出量を比較した表についての補足。

ides.hatenablog.com

ゲームと覚醒剤は同じだという主張がある。薬の作用は投与量体重やヒト/サル/ラットなどによっても異なり、脳の計測箇所によっても条件が違うため、単純比較というのはあまり勧められるものではない。しかしゲームと覚醒剤が同じという主張はあまりにもひどい話なので、このようなドパミンの放出量にも意味が出てくるだろう。

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Meagan Taylorさん作成のスライドがわかりやすかったので、少し細かく見てみよう。
THE BRAIN MODEL OF ADDICTION - ppt video online download
このスライドの出典はもともと国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse)らしい。NIDAの資料が見つけられなかったので、こちらから引用することにした。

食品とセックス

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楽しいことをするとドパミンは放出されると考えてよい、と以前に書いたが、何もしないときに比べて食べ物を食べると150%程度、セックスをすると200%くらいの放出量になる。

食品

www.ncbi.nlm.nih.gov ラット。側坐核を計測。グラフは側坐核シェル領域。おそらくスライドの文献表記はBassareo and Di Chiara(1999)の間違い。

セックス

www.jneurosci.org

雄ラットの側坐核(NAC)におけるドーパミンを測定。d-アンフェタミン(1.5mg/kg、ip)と生理食塩水を1日おきに合計10回注射し感作ラットにしたうえで、通常のラットと感作ラットを比較。交差感作が起こることを確認。ipは腹腔内投与。

メタンフェタミン・コカイン・ニコチン・エタノール

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メタンフェタミンが1300%、コカインが450%、ニコチンが210%、エタノール(お酒)が190%くらいである。エタノールは1(g/kg ip)の値。

d-メタンフェタミンとd-アンフェタミン

www.ncbi.nlm.nih.gov ラット。側坐核(NAC)、前頭前野(PFC)のドーパミンドーパミン代謝物、グルタミン酸(GLU)の放出を測定。

コカイン・ニコチン・エタノール

www.ncbi.nlm.nih.gov

ラット。側坐核中隔(大脳辺縁部領域)と背側尾状核(皮質下運動野)を測定。

考察

メタンフェタミンなどの中枢神経刺激薬(いわゆる覚醒剤)はドーパミンの放出量が非常に多いが、ゲーム、食事、セックスに関しては、似たり寄ったりの結果である。これらと同じといえば、タインガー・ウッズで有名になったセックス依存の話も出てきそうだが、ウッズの行動がドーパミンによる作用目的だったとは考えづらい。食事への依存というと、摂食障害が浮かぶが行動嗜癖とはかなり症候が異なっており、依存だと考えるのは無理がある。

覚醒剤というとかなりネガティブで、危険性が伴うイメージだが、アンフェタミン(アデロール)、メチルフェニデート(コンサータ)はADHD治療薬として認可され使用されている。用法容量を守っていれば依存になることはなく、安全に使用できる。ADHDの患者に中枢神経刺激薬を投与すると、むしろ健康度はアップする。副作用は不眠、消化器症状などが現れることがあるが、覚醒剤が怖いといった種類の副作用はなく、明らかな長期使用の副作用は見つかっていない。