井出草平の研究ノート

JFNラジオ『OH! HAPPY MORNING』出演 「香川県のゲーム規制条例可決。問題点と影響は?」

2回目の出演をさせていただきました。
前回放送は下記。

ides.hatenablog.com

カンペを書いていたので、カンペを公開します。
実際の放送ではこの通り話したわけではありません。

1. 前回、先生が予想されたように、条例は可決成立しました。改めて伺いますが、この条例の一番問題点はどういうところでしょうか?

罰則はないとはいえ、本来家庭で決めるべきスマホやゲームの使い方や使用時間について行政が介入を示したところだと思います。基準という言葉から目安という言葉に変わったようですが、時間制限が含まれていることが問題です。
香川県の条例は時間規制をすれば依存症が減るという前提に立っていますが、それは誤りです。
ゲームやネット依存に関しての研究は長年研究が蓄積されてきた分野ではありませんが、不十分ながらも研究はあります。その中で、わかっていることもあって、少なくとも利用時間と依存は関係がないということは明らかです。

2. 他の自治体でこれに続きそうな動きは出ていますか?

秋田県大館市でも香川と同様の条例が検討されています。どのような条例が検討されているかは明確にはわかっていませんが、香川とおなじくスマホの利用時間、ゲームの利用時間を制限する内容であることはわかっています。
また、香川の条例でスマホやゲームに焦点が当たったことによって、全国の地方議会でスマホやゲームに関する質問がされています。香川県の条例に批判的なもの、議会で各自治体の現状を確認ものもありますが、特にゲームに関する害を主張する質問も複数出てきています。

3. この条例には事業者への協力や配慮を求める項目もありますが、ゲーム業界からの対応はどうでしょうか?

ゲーム業界からは反応はあまり大きなものはありません。表立っては反対しないという立場のようですが、子どもたちに適切にゲームを使ってもおうという動きにもなっていないのが気になります。
保護者が子供のゲームやスマホの管理をするための、ペアレントコントロールという機能がゲーム機やスマホにはついています。保護者と子どもが話し合って使い方を決めていくことが重要ですが、機器によるサポートも使いどころも多くあります。 そういった管理方法が必ずともすべての保護者に伝わっているわけではありません。スマホやゲームに疎い方であれば、何のことかわからないといったこともあります。そういった機能があることや、機器の設定の相談窓口について宣伝をしていくことは重要ではないかと思います。
例えば、任天堂は以前からペアレントコントロールについてテレビCMを流していますが、他のゲーム機発売メーカーやスマホのメーカーもそういった試みをしてもいいのではないかと思います。

4. 条例に問題があるとはいえ、若者のゲーム依存症が減ることはいいことに違いないと思います。どういう風にすれば、本来の趣旨に沿う効果があげられると思われますか?

ゲーム依存やネット依存というような状態になっている場合、いじめや成績不振といった学校での問題、うつ病ADHD(注意欠如多動性症)といった精神障害がある場合など、他の問題を抱えていることが多いです。
ゲーム依存の子どもは、ゲームばかりしているのでゲームが問題だと見えてしまいがちですが、もともと何かの問題があってゲームをしているという視点が大事だと思います。
学校での問題が解決すれば学校に戻る子は多いですし、精神障害の治療がうまくいけばゲーム時間は自然に減っていきます。
伝統的といってはなんですが、私たちがよく知っている、子ども時代の問題に対処していくことが、ゲームやスマホ依存の子どもたちを減らしていくことにつながると思います。
条例制定というのはハデなやり方ですが、実際に有効なのは、1つ1つのケースに応じて、問題を解決していくという地味なやり方です。まどろっこしい方法に思われるかもしれませんが、地味な方法が一番効果があるものです。