井出草平の研究ノート

認知機能に関するメタアナリシス。問題のあるインターネット利用には共通する神経生物学的脆弱性が示唆される

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    1. Ioannidis, R. Hook, A. Goudriaan, Simon Vlies, N. Fineberg, J. Grant, S. Chamberlain, 2019, Cognitive deficits in problematic internet use: meta-analysis of 40 studies, The British Journal of Psychiatry. 20. DOI:10.1192/bjp.2019.3

問題のあるインターネット利用における認知機能の障害:40件の研究のメタ分析
背景 インターネットの過度な利用は、世界的な公衆衛生上の問題として認識されるようになってきている。個々の研究では、問題のあるインターネット使用(PIU)における認知障害が報告されているが、様々な方法論上の限界があった。PIUにおける認知機能の障害が確認されれば、この疾患の神経生物学的な妥当性が裏付けられる。目的 症例対照研究から得られたPIUの認知機能に関する厳密なメタアナリシスを行い、研究の質、オンライン行動の主な種類(ゲームなど)、その他のパラメータが調査結果に与える影響を評価する。方法 PIU(広義)患者の認知機能と健常対照者の認知機能を比較した査読付き症例対照研究について、システマティックな文献レビューを行った。調査結果を抽出し、対象となる認知領域について4件以上の論文が存在する場合には、メタアナリシスを実施した。結果 メタアナリシスでは、40件の研究で2922人の参加者が対象となった。対照群と比較して、PIUは抑制性制御の有意な障害と関連していた(Stroop課題 Hedge's g = 0.53 (s.e. = 0.19-0.87), stop-signal課題 g = 0. 42(s.e. = 0.17-0.66)、go/no-go課題g = 0.51(s.e. = 0.26-0.75))、意思決定(g = 0.49(s.e. = 0.28-0.70))、ワーキングメモリー(g = 0.40(s.e. = 0.20-0.82))。また、年齢、性別、報告地域、併存疾患の有無は、観察された認知機能への影響を有意に調整するものではなかった。結論 PIUは、地理的な場所にかかわらず、さまざまな神経心理学的領域の低下と関連しており、その異文化性と生物学的妥当性が裏付けられた。また、これらの知見は、インターネットゲーム障害の神経認知プロファイルとは異なり、ゲームを含むPIU行動に共通する神経生物学的脆弱性を示唆している