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文学者のシェルバン
日本語訳
このことは十八世紀の二人の人物、文学者のシェルバンと、もう一人、社会的な人物である新入兵について考えをめぐらせば、その一端が窺い知れよう。
これは誤訳である。
原文
On la devine au XVIIIe siècle, avec deux personnages, l’un littéraire, Chérubin, l’autre social, le conscrit.
望ましい訳
18世紀に、その萌芽が見られる。文学的な人物であるシェルバンと、社会的な立場の人物である徴集兵という二人の人物をめぐる詩をたどれば、その一端が窺い知れるだろう。
シェルバンは文学者ではなく文学などに登場する人物である。
1. シェリュバン (Chérubin) について
シェリュバンは、ボーマルシェの戯曲『フィガロの結婚』やモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』に登場するキャラクター。彼は、恋愛に憧れ、あちこちに気を引かれる若者として描かれ、無邪気さと情熱が特徴である。 シェリュバンは「文学的な人物」として、恋愛や若者の象徴として18世紀の文化的文脈で重要な存在。
2. 徴集兵 (le conscrit) について
「conscrit」は、徴兵制度によって兵士として召集された若者を指す。18世紀のフランスでは、革命後の国民軍の徴兵が本格化し、「徴集兵」は社会的な現象として文学や芸術に頻繁に登場した。徴集兵に関連する詩や文学作品は、若者の葛藤や社会的な立場の象徴として描かれることが多く、戦争や別れ、社会的義務に焦点を当てた作品が見られる。
3. 詩
具体的な「詩」として著名なのは、19世紀のヴィクトル・ユーゴーが『光と影』(Les Rayons et les Ombres) などの詩集で描いた「徴集兵」のモチーフである。また、フランスの民謡『Le conscrit de 1810』など、徴集兵に関する詩や歌が伝承されている。
ラルース chérubin
https://www.larousse.fr/dictionnaires/francais/ch%C3%A9rubin/15162
男性名詞
(ヘブライ語 kerubim, kerub の複数形)。
1. キリスト教の伝統で天使のカテゴリに与えられた名前。 (ケルビムは一般的に、翼のある頭部に縮小された、肉体を持たない天使として表現されてきた)。
2. 親しみやすい。 かわいくてさわやかな子。
シェルバンの後継者
日本語訳
シェルバンは後継者を持つことはないだろう。それとは反対に、少年たちのもとで青春期たることを表現するのは男性的な力となるであろうし、十八世紀には少年たることは新入兵として形象化されるのである。
間違いではないがあまり良い訳とはいえない。
原文
Chérubin n’aura pas de successeurs. C’est au contraire la force virile qui, chez les garçons, exprimera l’adolescence, et l’adolescent est préfiguré au XVIIIe siècle par le conscrit. Lisons le texte de cette affiche de recrutement qui date de la fin du XVIIIe siècle.
望ましい訳
シェルバンには後継者が現れることはなかった。むしろ、少年たちにおいて青春期を表すのは男性的な力となったのである。そして、18世紀において、青年は徴集兵という形で予兆されていた。
Rotrou
あまり知らなかったが割と有名な人らしい
garçon ギャルソン
ギャルソンというと松本幸四郎(白鷗)のイメージを持ってしまっているが、ボーイさんに近い意味だそうだ。
garçon
https://www.larousse.fr/dictionnaires/francais/gar%C3%A7on/36087
- 男の子供 : 女の子と男の子は同じ学校に行く。
- 両親との関係で考える男性の子ども ;息子 : 男の子が1人、女の子が2人いる。
- 家族。 若い男性、成人男性 : どちらかというと可愛い。
- 歳。 管理部門、貿易部門、または誰かのために働く部下の従業員 : 肉屋の少年。
- カフェやレストランでウェイターを指す形容詞:ボーイ(Boy) !
- 船室やラウンジなどの整備を担当する船員。
テクノロジーによる若さの維持
やや唐突な感じで出てきた。翻訳には問題はない。
原文
L’idée technologique de conservation se substitue à l’idée à la fois biologique et morale de vieillesse.
日本語訳
若さの維持というテクノロジー的な観念が、生物学的であるとともに精神的でもあった老年期の観念に置き換えられているのである。
老年期の捉え方に変化がみられるという指摘。
第一部第一章で議論されてきた子供や青年の呼び方の一覧
原文 | 時期 | 解説 |
---|---|---|
Enfance (アンファンス) | 幼年期、子ども時代 | 中世の疑似科学的な「人生の年齢」の概念における最初の段階。Isidoreやコンスタンティヌスによると、歯が生え始め、言葉をうまく話せない時期(7歳まで)を指します。「enfant」は元々「話せない人」という意味合いを含んでいました。 |
Pueritia (プエリシア) | 少年期 | 「人生の年齢」の第二段階。Isidoreによると、「目の瞳のように」成長する時期(14歳まで)。ラテン語の学術用語であり、日常語としてはフランス語に直接対応する言葉がありません。 |
Adolescence (アドレセンス) | 青年期、思春期 | 「人生の年齢」の第三段階。コンスタンティヌスによると21歳まで、Isidoreによると28歳まで。この年齢は生殖能力を持つようになる時期とされ、「成長」と「力強さ」を得る期間とされていました。ただし、テキスト内では18歳までを指す場合もあるなど、定義に幅があります。現代フランス語の「adolescence」とは意味合いが異なります。 |
Jeunesse (ジュネス) | 若年期、青年期 | 「人生の年齢」の中間段階。Isidoreによると45歳まで、または50歳まで。最も力が強く、他人を助けることができる年齢とされました。現代フランス語の「jeunesse」に近いですが、より広い年齢層を指していました。 |
Senecté (セネクテ) | 壮年期、熟年期 | 「人生の年齢」において「jeunesse」と「vieillesse」の中間。Isidoreは「態度や振る舞いが重くなる」時期と表現しました。現代フランス語の「sénilité」(老衰)とは異なり、まだ老年期ではないものの、若さを過ぎた段階を指します。 |
Vieillesse (ヴィエイエス) | 老年期 | |
Senies (セニエス) | 老齢の極み | 「vieillesse」の最後の部分。フランス語には対応する単語がなく、「vieillesse」と同じく老年期とされます。咳や痰が多くなり、最終的には灰や塵に戻るという、人間の終末期を表します。 |
Enfant (アンファン) | 子ども、幼児、少年 | 中世フランス語において非常に広い意味を持つ言葉。 putto(プットー)から思春期の少年、時には「悪い少年」までを指しました。身分の低い少年や従属的な立場の人々を指す言葉としても使われました。年齢による区別よりも、依存的な状態を表す言葉でした。 |
Valet, Valeton (ヴァレ、ヴァレトン) | 若者、少年、使用人 | 中世フランス語で「enfant」と類義語として使われた言葉。身分の低い少年や若い男性、使用人などを指し、依存的な立場を表す言葉でした。「valeton」は現代フランス語の「beau gars」(ハンサムな若者)に近い意味合いも持ちますが、子どもにも使われました。 |
Garçon (ギャルソン) | 少年、男の子、青年 | 中世フランス語で「enfant」と類義語として使われた言葉。現代フランス語の「garçon」(男の子、少年)に近い意味合いですが、より広い年齢層を指し、若い男性も含むことがありました。 |
Fils, Beau-fils (フィス、ボーフィス) | 息子、義理の息子、若者 | 中世フランス語で「enfant」と類義語として使われた言葉。親子関係だけでなく、若い男性や少年一般を指す場合もありました。依存的な立場を表す言葉としても機能しました。 |
Gars (ギャ) | 若者、男 | 古フランス語から現代口語フランス語に直接受け継がれた言葉で、「enfant」の古い意味合いを部分的に残しています。現代でも若者や男性を指す言葉として使われますが、よりくだけた、親しみを込めたニュアンスがあります。 |
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