井出草平の研究ノート

中国人口におけるテレビ・コンピューター・携帯電話の使用と睡眠の質との関連性:地域ベース横断研究

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Xie, Y. J., Cheung, D. S., Loke, A. Y., Nogueira, B. L., Liu, K. M., Leung, A. Y., Tsang, A. S., Leong, C. S., & Molassiotis, A. (2020). Relationships Between the Usage of Televisions, Computers, and Mobile Phones and the Quality of Sleep in a Chinese Population: Community-Based Cross-Sectional Study. Journal of Medical Internet Research, 22(7), e18095. https://doi.org/10.2196/18095

研究デザイン

本研究はマカオ在住の住民 1,500 名(15~90歳)を対象に、2017–2018 年に実施された横断調査である。

  • スクリーン使用時間:テレビ、コンピューター、携帯電話について、1日あたりの使用時間を自己申告で収集。
  • 睡眠の測定ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI, Chinese version)を使用。PSQI > 5 を「睡眠の質が低い」と定義した。

主な結果

  1. 使用状況

    • テレビ視聴:平均 1.75 時間/日
    • コンピューター利用:平均 1.53 時間/日
    • 携帯電話利用:平均 2.85 時間/日 若年層ほどコンピューター・スマートフォン利用が長く、高齢者はテレビ視聴が多い傾向にあった。
  2. 睡眠との関連

    • 総スクリーン時間と睡眠の質の間には 直線的な関連は認められなかった

    • しかし、曲線的(J字型)関連が観察された:

    • 適度な使用(例:TV 1.5~3 時間/日、PC 2~4 時間/日、スマホ 2~4 時間/日)では、睡眠障害との有意な関連はなく、むしろ最も PSQI スコアが低かった。

    • この結果は ゴルディロックス仮説」(過度は有害だが適度は無害、あるいは有益)を支持するものとされた。

考察

  • 適度使用が許容される理由

    • 娯楽やリラクゼーションを通じて気分調整やストレス緩和につながり、結果的に睡眠の質を改善する可能性がある。
    • イギリスの研究でも「中程度のデジタル利用はメンタルウェルビーイングを高める」とされ、本研究の結果と一致する。

限界

  • スクリーン使用の 内容・時間帯(例:夜間使用かどうか)までは調査していない。
  • 自己申告に基づくため、過小・過大報告の可能性がある。
  • ゲーム機やタブレットなど他のデバイスは対象外。

結論

  • マカオ住民において、スクリーン使用時間と睡眠の質の間には 直線的ではなく J字型の関係 があった。
  • 過度のスクリーン使用は睡眠障害リスクを高める が、適度な使用は許容範囲内であった。
  • 本研究は、スクリーンタイムの影響を一律に「悪」とするのではなく、ゴルディロックス的な適度使用の重要性を示した点で意義がある。