井出草平の研究ノート

摂食障害と苦痛緩和


以前に入れたプロアナのエントリにのブックマークよりid:hotsumaさんのコメント。

hotsuma ED 米国のANはパワーがある。最後はホスピスかもしれないけど。
http://d.hatena.ne.jp/hotsuma/20060425


やはりこの辺りがプロアナの論点になる。プロアナ批判は拒食症の末の死について宣伝をするが、プロアナに、もし価値があるとしたら、このデメリットを越える効用があった場合なのだろう。


ということで、直接にはプロアナとは関係ないが、hotsumaさんがリンクを張ってるものをこちらでも紹介。内容は苦痛緩和ケアと摂食障害について。

Higginson IJ, Addington-Hall JM (1999)
Palliative care needs to be provided on basis of need rather than diagnosis. 
British Medical Journal 318:123.
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/318/7176/123 

The example of anorexia nervosa in their debate is a rare example of a potential role for palliative care.


拒食症には苦痛緩和ケアについて議論する必要があるようだ。文中には「苦痛緩和ケアは多くの状況を受け入れるという患者や家族や彼らの問題全体をマネジメントする有効なアプローチである」という文章があるが、この辺りが関わってくるのだろうか。

Christopher J Williams, senior lecturer, a Lorenzo Pieri, consultant, b Andrew Sims, 
Controversies in management:
Does palliative care have a role in treatment of anorexia nervosa?
British Medical Journal 1998:317:195-197.
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/317/7152/195


記事にはホスピスの医療のようなものを拒食症に認めても良いのかは疑問の余地があるところと書かれている。まずは、治る可能性があることが上げられている。

Treatment with opiates can be effective in reducing pain and distress in physical illness, but this is not a recognised treatment of anorexia nervosa.


鎮静剤による治療は苦痛のコントロールと精神的苦痛に対して効果があるが、これが拒食症にも当てはまるわけではない。


イギリスのホスピスで苦痛緩和医療を受けて死んだ女性(24歳)について掲載されている論文があるようだ。EBSCOにはなく図書館にあり。またコピーか。これ↓

O'Neill J, Crowther T, Sampson G.
Anorexia nervosa: palliative care of terminal psychiatric disease.
Am J Hospice Palliative Care 1994;Nov/Dec:36-8. 


その下の記事。

Lynne Russon,  Dawn Alison,
Palliative care does not mean giving up
Does Palliative Care Have a Role in Treatment of Anorexia Nervosa?
British Medical Journal,  July 18, 1998.
http://www.findarticles.com/p/articles/mi_m0999/is_n7052_v317/ai_20994943
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/317/7152/195


苦痛緩和ケアは最終的な手段ではないとの主張。苦痛を取り除くことによって、セラピーなどの他の治療法も受けやすくなる。また、ターミナル・ケア(末期医療)は苦痛緩和医療の一部(にすぎない)という記述もある。

Involvement of specialist palliative care services for patients with anorexia nervosa would not necessarily involve admission to a hospice.


拒食症患者に対して苦痛緩和医療の専門家が介入するということは、ホスピスへの入院をさせるということとは限らない。病院の入院でも対応できないことはない。ただ、末期的な拒食症患者にはホスピスがベストとのこと。

Rosalind Ramsay, Janet Treasure,
Letters: Treating anorexia nervosa
British Medical Journal 1996;312:182 (20 January) 
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/312/7024/182  


英国精神医師会の摂食障害研究グループの創立メンバー58人(回収率74%)にアンケート調査したところによると、全員がホスピス医療に賛成している。また、4分の3が呼吸障害・心臓疾患・リウマチの最終ステージにホスピスを使うことに賛成しているが、拒食症のターミナルケアに関しては支持が下回る。この結果についてはさきほどのオニールらの論文に詳細が載っている。