精神医学

アルコール依存症におけるリーダーマンの単一分布理論 その3

Skogによるリーダーマン(S. Ledermann)の単一分布理論に関しての評論。後半1/3の抄訳。 journals.sagepub.com その1はこちら。 ides.hatenablog.com その2はこちら。 ides.hatenablog.com Ledermannの経験的 Ledermannは彼の単一分布理論とともに経験的なデ…

ブプロピオン(カプラン精神科薬物療法のポケットハンドブック)

Kaplan & Sadock's Pocket Handbook of Psychiatric Drug Treatment (English Edition)作者:Sadock, Benjamin,Sadock, Virginia A.,Sussman, Norman発売日: 2017/12/20メディア: Kindle版 第7版からブプロピオンについての気になったところだけメモ。ブプロ…

アルコール依存症におけるリーダーマンの単一分布理論 その2

Skogによるリーダーマン(S. Ledermann)の単一分布理論に関しての評論。真ん中の1/3の抄訳。今回はLedermannの基本的な仮説の背景。 journals.sagepub.com その1はこちら。 ides.hatenablog.com Ledermannの仮説とその背景 Ledermannは分布問題の分析の序章…

アルコール依存症におけるリーダーマンの単一分布理論 その1

Skogによるリーダーマン(S. Ledermann)の単一分布理論に関しての評論。最初の1/3の抄訳。今回はLedermannの基本的な仮説の説明。 journals.sagepub.com Ledermannの著作は下記のものである。 Ledermann, S. (1946) La mortalite des adultes en France. Popu…

行動嗜癖は精神障害であるべきか否か

さまざまなものが行動の依存症である行動嗜癖ではないかという声が上がっている。依存症とは違い嗜癖(addiction)とは行動のコントロールが取れないことが中核定義にあるため、合理的ではなかったり、個人の意思を超えて発生するものは、すべて嗜癖と定義する…

病気・疾病・疾患の翻訳の検討

精神医学分野における病気・疾病・疾患の翻訳についてまとめてみた。 ここでいうICD-10とはFカテゴリのことではなく『ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン』のことで英語のタイトルはThe ICD-10 classification of mental and behaviour…

病気・疾病・やまい・やまいけ・わずらい・いたつき・疾患・Pathos

病気関連の日本語を整理してみた。 病気 『日本国語大辞典』から。 (1)生体が正常と異なった形態または機能を示す状態。 *古事談〔1212~15頃〕五・関寺霊牛事「而件牛両三日有病気」 *保元物語〔1220頃か〕中・左府御最後事「左府御病気のよし…

ゲームをすると脳細胞が死滅・萎縮すると主張する人たちが引用する論文には何が書いてあるのか

鈴木裕美(香川大学医学部助教) 鈴木裕美さんは「過剰なドーパミン放出が報酬系を壊し、神経を死滅させる」と述べている。 観音寺市議会の合田隆胤議員のページ(参照)で紹介。 一応、注釈を入れておくと、報酬系が壊れる?のはダウンレギュレーション仮説であ…

抗うつ薬の登場がもたらした歓喜の場面

読んでいた本に出てきた写真。 結核薬として開発されたイプロニアジドが抗うつ効果を持っていた。1952年に「ライフ」誌に載ったフォトエッセイの写真だそうだ。 イプロニアジドの臨床試験をするまでは、回復の見込みのない結核と見限られ、死への途上にあっ…

「ゲームと覚醒剤は同じ」と主張する精神科医の岡田尊司の誤りを正す

香川県のネット・ゲーム規制条例を強く推し進める大山一郎香川県議が「ゲームと覚醒剤は同じ」という趣旨の発言を行っていることを以前にエントリした。今回はその元ネタである。 インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで (文春新書)作者:岡田 尊…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)と性機能障害

トリンテリックス(ボルチオキセチン)について一つ気づいていなかったことがある。下記の記事を読んで気付いた。 www.mdmag.com 性機能障害が他の抗うつ薬に比べて低いという補足記述が2018年10月22日にFDAに受理されたという記事である。 研究 元になった研…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)のレビュー

トリンテリックスが11月27日発売ということなので、トリンテリックスのレビュー論文を簡単に紹介しておこう。適応の大うつ病性障害以外に全般性不安症にも使用されている。 トリンテリックスのレビューはなぜかたくさんあって、適切なものを選ぶのが難しい。…

オープンダイアローグによる介入によりひきこもりが著効した例

オープンダイアローグがひらく精神医療作者: 斎藤環出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2019/07/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 以下は斎藤環さんが実際に介入した事例である。 最初の事例はひきこもりの男性だった。家族内暴力を振るい、家…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)と高齢者のうつ病

11月に新しい抗うつ薬トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)が投入されるようだ。効果はSSRI+リフレックス的な効果で、忍容性が高い(継続率70%)ということのようだ(トリンテリックス | kyupinの日記 気が向けば更新)。 新規の抗うつ薬が登場しても…

2値と連続変数の関連を示す指標

ROC曲線下の面積の続きである。 医学分野では連続変数とカテゴリカル変数の関連を表現する指標としてROC曲線下の面積が利用される理由はよく知らないのだが、他にも使える指標があるのではないかと思い、候補を並べてみた。 勉強をしているとROC曲線下の面積…

心理療法の介入研究の問題点と展望

オープンダイアローグのエビデンス オープンダイアローグはエビデンスが弱いと言われる。 また、オープンダイアローグはエビデンスを作るのに向いていないとも言われる。 では、介入の科学的エビデンスを作るにはどのようにすればよいか? ということを考え…

献本御礼:セイックラ、アーンキル 『開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる』

開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる作者: ヤーコ・セイックラ,トム・アーンキル,斎藤環出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2019/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 監訳者の斎藤環さんにいただきました。350ページを超える本なの…

単純型統合失調症のまとめと8050問題

単純型について過去にエントリを入れたが、その中で書き残している項目をまとめてこのエントリに入れておきたい。 疫学 単純型統合失調症に該当する症候を持つ者の疫学調査が存在するようだ。アイルランドの一地方で実施されたもので、DSM-IIIから基準Aを除…

統合失調症(単純型)の典型例

www.seiwa-pb.co.jp 仙波純一,神山園子,2012,「統合失調症(単純型)の典型例」『精神科治療学』27(7): 897-901. 「統合失調症(単純型)の典型例」という論文があるため、少し長くなるが症例込みで見ていきたい。 単純型とは下記のように定義されている。 …

抗コリン作用への対処法

イントロダクション 抗コリン作用は抗うつ薬の副作用として生じる。抗コリン作用によって強い副作用が出るため、服薬を続けることができないことがあり、うつ病の治療において大きな問題となっている。 短期間であれば耐えられる程度の副作用だったとしても…

単純型・寡症状性統合失調症

単純型よりもさらにマニアックな類型になるが寡症状性統合失調症にもついて見ていきたい。 ci.nii.ac.jp 田中伸一郎,2012,「継往開来 操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ 単純型・寡症状性統合失調症」『精神医学』54(7…

ICDとDSMにおける単純型統合失調症の扱い

ICDとDSMにおける単純型統合失調症の扱いについてメモをしておこう。 ICDでの扱い 1977年のICD-9の段階でも「可能であれば控えめに行うべき」と書かれている。1970年代の段階で国際的にこの診断基準は推奨されていなかったことがわかる。 1990年のICD-10での…

Blankenburgの『自明性の喪失』-単純型統合失調症かアスペルガー症候群か

和田信,2016,「『自明性の喪失』にみるBlankenburg, W.の姿勢 : 単純型統合失調症か,それともアスペルガー症候群か」『精神科治療学』 31(6): 755-761. ci.nii.ac.jp 「単純型統合失調症か,それともアスペルガー症候群か」という副題にあるようにBlankenb…

単純型統合失調症か自閉スペクトラム症か

yomidr.yomiuri.co.jp yomidr.yomiuri.co.jp このコラムの筆者はある女性患者を当初「統合失調症(鑑別不能型あるいは単純型)あるいは統合失調型障害」と診断した。 その後、児童青年精神医学に詳しい医師から「自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)」と指摘…

素行障害の特定用語

素行障害とはConduct Disorderのことであり、以前は行為障害と翻訳されていた。翻訳が変化しただけで、同じものを指している。素行障害特定用語が4つあるのでDSM-5から引用しておこう。 サイコパスは様々な意味を含むが、その中核症状は、DSM-5では素行障害…

精神科の選び方3 ベンゾジアゼピン

以前のエントリの続きである。 精神科の選び方1 ガイドライン 精神科の選び方2 血液検査 今回はベンゾジアゼピン系の薬剤についてである。 最近はベンゾジアゼピンの処方がやり玉にあがることが多い。ベンゾジアゼピンとされる薬剤は主に下記の薬剤である…

精神科の選び方2 血液検査

イントロダクション 前回に引き続き精神科の選び方について。 前回はガイドラインと自分の受けている治療を比較するということだったが、今回は血液検査についてである。 前回は精神疾患以外のほとんどの疾患に応用できる方法だったが、今回はうつ病に限定し…

精神科の選び方1 ガイドライン

イントロダクション 精神科の選び方について相談をされることが度々あるので、まとめてみたい。 精神科選びというのはかなり難しい。治療方法が複雑なので説明が尽くせないということもあるが、一般的に悪手とされているものでも、会心の一手であることも稀…

CP換算計算シート

抗精神病薬のクロルプロマジン換算のシートを作る機会があったので、以下にリンクを貼っておく。エクセル形式(.xlsx)で、凡例として架空のサンプルデータが10ほど入力してある。 http://www.idesohei.net/files/CPEquivalents.xlsx

アルコール使用障害と併存症

アルコール使用障害(AUD)と併存症についてまとめてみた。 アルコール使用障害の概観 アルコール使用障害(AUD)は、医療費の4%を占める慢性疾患および再発性疾患である(Margolese et al., 2004 ; Rehm et al., 2009)。 12ヶ月と生涯AUD(DSM-5)の有病率…