ゲームメディアNMEの記事。
ゲーム障害の導入に慎重な立場のアンドリュー・シュビルスキーが、ゲーム障害がICD-11に採用されたのはなぜか? それほどエビデンスが積み重なっていたわけではないのに、どういう過程で採用されたのか? 自分が知らないだけで実はエビデンスがあるのか? とTwitter上で、先月くらいに、情報提供を呼びかけていたことから始まる。
シュビルスキーはTwitter上で満足な情報が集まらなかったこともあり、WHOに直接問い合わせることにした。
WHOに返事は「根拠を示すことができない」というものだった。
その上、そのやり取りの後、WHOはWHOのウェブサイト上にあったゲーム障害の解説ページを削除した。
ページは現在も削除されているが、アーカイブ・サービスで、以前掲載されていたものを確認できる。
ゲーム障害の解説ページをWHOが削除した理由はわからないが、根拠を示せなかったためではないかと推測されている。
シュビルスキーはゲーム障害の根拠が示せないならば、ICD-11での採用を延期した方がいいのではないか、と述べている。
WHO、ゲーム障害の記録は「不可能ではないが困難」と発表
世界保健機関(WHO)は、ゲーム障害についての情報源について質問されると答えられず、ゲーム障害に関するFAQページを削除した。
世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害」を嗜癖的行動addictive behaviourとする決定を下した背景にある研究内容を説明する気がないか、できないようだ。
これは、オックスフォード大学でビデオゲームを中心に社会科学を研究しているアンドリュー・シュビルスキーAndrew Przybylski教授が、WHOがゲーム障害を分類するに至った経緯と、WHOが行った具体的な研究内容を理解するために、WHOに問い合わせたことによるものである。
シュビルスキー氏は、WHOからの回答メールをNMEと共有したが、そこには次のように書かれていた。「ゲーム障害とした根拠や正当性を文書化して伝えることは、不可能ではないが、困難なことだ。」
シュビルスキー氏は、ゲーム障害を嗜癖的行動とする決定を正当化するには、公開されているデータだけでは十分ではないと懸念している。
2018年にシュビルスキー氏が発表した共著論文では、「(研究の)構成要素から正式な障害に移行するには、現在よりもはるかに強力なエビデンスが必要だ」と述べられていた。また、この論文は、依存症としてのゲーム障害に関する研究が不足しているという情報に基づいた理解から、「WHOは今のところ慎重に判断し、正式な用語の制定を延期する」よう促している。
Thinking a bit about #gamingdisorder and #internetgamingdisorder research lately and came back across this excellent editorial by @CJFerguson1111 & @patmarkey. I really wish that @WHO were receptive to the arguments here.
— Andrew Przybylski (@ShuhBillSkee) 2021年11月10日
Science should lead policy. https://t.co/KJMDK5UJ0j pic.twitter.com/6aGbRQKn0b
「重要な判断をしたのだから、根拠となった論文のリストがあると思います」とシュビルスキー氏は付け加えた。「あるいは、書籍やデータセットのリストもね」。シュビルスキー氏は、WHOがビデオゲームをどのように定義しているか、すら、わからないと言う。「ゲームが精神的な健康に与える影響を研究したり、理解したり、主張したりしたいのであれば、誰かがゲームをどう考えているのか、あるいはそうではないのかは、実に重要な問題です」。
また、シュビルスキー氏は、「ゲームはすべて一様に何らかの嗜癖性があるという考え方」を批判し、「地球の3分の1の人々が常に行っている活動」をWHOがどのように定義しているのか、また、ゲームをプレイすることが安全でないと、どのように判断しているのかを知る方法がないと述べている。
ゲーム障害は、2018年にICD-11に依存性行動を追加したWHOによって「臨床的に認識可能で臨床的に重要な症候群」とみなされている。それは、さらに「ゲーム行動のパターンが、個人的、家族的、社会的、教育的または職業的機能において著しい苦痛または著しい障害をもたらすような性質と強度を有する場合」とされている。
ICD-11(International Classification of Diseases 11th Revision)は、世界中の医療従事者が症状を診断するために使用しており、そこに障害を含めることで、各国が障害に対処するための公衆衛生戦略を策定することを目的としている。
シュビルスキー氏は、ゲームへの依存が一部の人々にとって現実的な問題であることを理解し、WHOに賛同している一方で、「ゲーム障害」という言葉が含まれ、定義されていることに批判的である。また、WHOがICD-11への導入をサポートするために引用した幅広い研究結果についても説明している。
Okay, in a strange twist the @WHO recently removed the Gaming Disorder Q&As I linked in question to @DrTedros last month.
— Andrew Przybylski (@ShuhBillSkee) 2021年11月12日
As far as I know, the widely quoted passage, the inspiration for my unanswered questions, no longer appears on their website. https://t.co/QYpzzdCXx8 pic.twitter.com/yYOIowyze4
WHOは同じメールでシュビルスキー氏に対して「この分野でWHOの活動に携わっている専門家には、査読付きの文献で発表することを奨励している」とし「あなたがこの問題に関する数多くの論文に知識があると私たちは確信している(注:WHOに聞かなくてもシュビルスキー氏は論文を読んでいるので分かっているはずだという意味)」と書かれていた。
それに対してシュビルスキー氏は「私は、何百もの論文を読んできました」と語った。「しかし、どれが説得力のある論文なのかわかりませんし、新しい精神障害を作り出すに値するものは何なのでしょうか?」
Okay, in a strange twist the @WHO recently removed the Gaming Disorder Q&As I linked in question to @DrTedros last month.
— Andrew Przybylski (@ShuhBillSkee) 2021年11月12日
As far as I know, the widely quoted passage, the inspiration for my unanswered questions, no longer appears on their website. https://t.co/QYpzzdCXx8 pic.twitter.com/yYOIowyze4
嗜癖的行動としてのゲーム障害に関する質問と回答のウェブページはWHOのウェブサイトから削除さた。その理由は不明である。ゲーム障害を嗜癖的行動に含めることについての他のデータや情報はWHOから手に入れることはできるが、そのオリジナル・リンクは削除されたままである。しかし、この削除されたページは、アーカイブ・サービスによってアーカイブされており、今年(2021年)の11月6日の時点ではまだオンラインであったことが確認できている。
NMEは、この記事を掲載する前にWHOに連絡を取り、ゲーム障害を決定した研究や調査について質問している。また、シュビルスキー氏がWHOにゲーム障害の正当性について尋ねた際に、適切な回答ができなかったかについても、質問している。回答が得られた場合は、記事を更新する予定だ。