井出草平の研究ノート

2021-01-01から1年間の記事一覧

不登校の不安の種類は状態-特性不安である

Gilles Brandibasによるフランスにおける不登校の研究。 journals.sagepub.com アブストラクト フランスの中等専門学校における不登校は、大きな懸念材料となっており、今回の調査もそのような背景から行われた。しかし、無断欠席truancy に関連する問題では…

Kearneyによるスクール・アブセンティズムに関する先行研究のレビュー

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov こちらは先行研究のレビュー。 青少年の学校欠席と登校拒否行動:現在のレビュー 概要 学校を欠席することは、メンタルヘルスの専門家、医師、教育者にとって深刻な公衆衛生上の問題である。暴力、傷害、薬物使用、精神疾患、経済的…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第30夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版2887ページ、普及版307ページから。 男性らしい食物 たとえば庶民階級において、魚は男性にはふさわしくない食物とされているが、それはただ…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第32夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版297ページ、普及版316ページから。 欲しくても我慢する 通常の機会においては主として女性が自らに制限を課す----二人で一切れしかとらないと…

体力テスト 県内小学生、過去最低点 コロナ、ゲーム時間影響 中学女子は最高の全国14位(四国新聞)

news.line.me 県教委は「新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や、スマートフォンやゲームの長時間利用で日々の運動時間が減ったことが影響したとみられる。子どもの運動意欲を高める取り組みを推進する」 せっかく、条例を作ったのに、あまり効果がで…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第31夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版294ページから。普及版311ページから。 職業にふさわしい風貌 292-293ページの写真から。 ディスタンクシオンには写真が並ぶところがあるが、…

for文[R]

statisticsglobe.com 例1: Rでベクトルをループする この例では、for-loopを使ってベクトル上をループする方法を説明する。 i in 1:10: iの中に1]から10までを代入していく i^2: 計算式 for(i in 1:10) { # for文ヘッド x1 <- i^2 # コードブロック print(x1…

破壊的行動をとる子どもにおけるCBCL Dysregulation Profileの臨床的有用性

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Aitken, Madison, Marco Battaglia, Cecilia Marino, Nivethine Mahendran, and Brendan F. Andrade. 2019. “Clinical Utility of the CBCL Dysregulation Profile in Children with Disruptive Behavior.” Journal of Affective Di…

マルチグーループSEM(多母集団同時分析) 配置不変モデル[Mplus]

マルチグーループSEMをMplusで行う。データはHolzingerSwineford1939を用いる。Mplus用のデータへの変換は下部参照のこと。 今回は配置不変モデルのみ。 Grant-White学校のSEMのダイアグラム。 コード TITLE: Multiple Group SEM using HolzingerSwineford19…

CBCL小児双極性障害プロファイルとADHD、併存症と量的形質遺伝子座分析

www.ncbi.nlm.nih.gov McGough, James J., Sandra K. Loo, James T. McCracken, Jeffrey Dang, Shaunna Clark, Stanley F. Nelson, and Susan L. Smalley. 2008. “CBCL Pediatric Bipolar Disorder Profile and ADHD: Comorbidity and Quantitative Trait Lo…

ウィルコクソンの符号順位検定 Wilcoxon signed-rank test[R]

対応のあるt検定に対応したノンパラメトリック検定。ウィルコクソンの順位和検定Wilcoxon rank-sum testとは異なる。 ja.wikipedia.org ウィルコクソンの符号順位検定 Wilcoxon signed-rank test wilcoxon.test (variable1, variable2, Paired=TRUE) Wilcoxo…

暴力的なゲームは「人間を攻撃的にしない」独研究所 (ナゾロジー)

nazology.net 元論文はこちら。 www.nature.com 2019年の論文なのでこの分野に詳しい人にとっては有名な論文である。 論文の位置づけ この種の論文はわりと書かれており、先行研究としてまとめられているとおりである。 短時間のビデオゲームの結果に焦点を…

「ゲーム障害」を病気として認定したWHO、認定の科学的根拠を答えられず(スラド)

スラドにも取り上げられた模様。 srad.jp

小6娘のグループLINEが無法地帯!親がどこまで関わるべき?【小川大介先生の子育てよろず相談室】(レタスクラブ)

www.lettuceclub.net 世の中の子育てをしている親の心配していることはゲームよりLINEやSNSなのでしょう。 相談者は、対応としては十分できているように思える。 LINEなど視覚化され、親にも子供の世界が把握できるようになったので、コントロールという意味…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第29夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版276ページ、普及版295ページから。 フランスのカフェ 279ページ。 ブルジョワ的あるいはプチブル的カフェやレストランにおいては、各テーブル…

Kearneyによるスクール・アブセンティズムに関する先行研究のレビュー その1

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov こちらは先行研究のレビュー。 青少年の学校欠席と登校拒否行動:現代レビュー 概要 学校を欠席することは、メンタルヘルスの専門家、医師、教育者にとって深刻な公衆衛生上の問題である。暴力、傷害、薬物使用、精神疾患、経済的困…

ICD-11作成の中心メンバーの一人ジェフリー・リード氏、ICD-11にゲーム障害を収録に関して「アジアの国々から大きな圧力を受けている」と証言する

アンドリュー・シュービルスキー氏がゲーム障害にエビデンスが薄弱であるとWHOからメールを受け取った件の続報である。事情を把握されていない方は以下のリンクを参照されたい。 ides.hatenablog.com ジェフリー・リード氏がICD-11にゲーム障害を採用するこ…

アンドリュー・シュビルスキーがWHOにゲーム障害の根拠を問い合わせたところ、根拠を示すことができなかった上に、ゲーム障害の解説ページを削除する事態に陥る

ゲームメディアNMEの記事。 www.nme.com ゲーム障害の導入に慎重な立場のアンドリュー・シュビルスキーが、ゲーム障害がICD-11に採用されたのはなぜか? それほどエビデンスが積み重なっていたわけではないのに、どういう過程で採用されたのか? 自分が知ら…

Kearneyによるスクール・アブセンティズムに関するレビュー その3

前回からの続き ides.hatenablog.com link.springer.com Kearney, Christopher A. 2008. “An Interdisciplinary Model of School Absenteeism in Youth to Inform Professional Practice and Public Policy.” Educational Psychology Review 20 (3): 257–82.…

Kearneyによるスクール・アブセンティズムに関するレビュー その2

前回からの続き ides.hatenablog.com link.springer.com Kearney, Christopher A. 2008. “An Interdisciplinary Model of School Absenteeism in Youth to Inform Professional Practice and Public Policy.” Educational Psychology Review 20 (3): 257–82.…

Kearneyによるスクール・アブセンティズムに関するレビュー その1

link.springer.com Kearney, Christopher A. 2008. “An Interdisciplinary Model of School Absenteeism in Youth to Inform Professional Practice and Public Policy.” Educational Psychology Review 20 (3): 257–82. 概要 青少年のスクール・アブセンテ…

ADHDに中枢神経刺激薬を投薬する前に脳波を測るべき

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Swatzyna, Ronald J., Jay D. Tarnow, Alexandra Roark, and Jacob Mardick. 2017. “The Utility of EEG in Attention Deficit Hyperactivity Disorder: A Replication Study.” Clinical EEG and Neuroscience: Official Journal of…

精神障害における診断の妥当性を確立した論文(Robins & Guze1970)

精神障害における診断の妥当性を確立したと言われる論文である。Guzeはグーズではなくグーザイと読む(https://www.nytimes.com/2000/07/22/us/samuel-guze-76-psychiatrist-who-pushed-link-to-medicine.html)。 en.wikipedia.org en.wikipedia.org Robinsと…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第28夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版268ページ、普及版287ページから。 諸空間の相同性 L’homologie entre les espaces から。 卓越化利益 « des profits de distinction » 卓越…

ゲームをしすぎると自殺につながるのか

2021年1月に話題になっていたらしいのだが、気づかずに流してしまっていた。 togetter.com こと発端は葛飾区が「自殺対策予算」で久里浜医療センターの人を読んで「ゲーム障害」の講演をしていたというものだ。自殺とゲーム障害が関連するなら、その予算の使…

アイザック・マークス「行動嗜癖」(1990)

行動嗜癖について初めて体系的に公に書かれた論文である。 マークスの最初の提案以来、アディクション研究分野では「行動嗜癖behavioral addiction」という言葉が支持された(Billieux et al.2015) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Marks, I. 1990. “Behavioural (no…

ベルト・モリゾと摂食障害

山田五郎さんのYouTubeでマネはぽっちゃり好きで、ベルト・モリゾは痩せているという話があった。その時モリゾの写真が出たのだが、痩せているにも程があるだろうと調べてみると、やはり拒食症だったようだ。 鎖骨が写っているいれば一目瞭然なのだが、腕の…

LEAD基準

LEAD基準/診断について説明する機会が多々あったため、ロバート・スピッツァーが1983年にLEAD基準を提言した論文の該当箇所を翻訳することにした。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Spitzer, R. L. 1983. “Psychiatric Diagnosis: Are Clinicians Still Necessary?”…

間接法による年齢標準化と信頼区間[R]

直接法はこちら。 年齢調整罹患率(age-standardized rates)の求め方の一つ。 ides.hatenablog.com 間接法により得られる値は、正確には年齢調整罹患率ではなく、期待値と観測値の比である。 対象とする地域(例えば市町村)の年齢階級別罹患率が、比較しよ…

ブルデュー『ディスタンクシオン』輪読会第27夜 覚書

ディスタンクシオン <1> -社会的判断力批判 ブルデューライブラリー作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 旧版p.261の8行目から。 ハビトゥスの説明、分類であり分類する動的なもの 経済的・社会的条件(すなわち共時的・通時的にとらえられた資本の量と…