井出草平の研究ノート

薬理

抗精神病薬が認知症患者の健康リスクを高めるという研究結果

www.news-medical.net 認知症管理における抗精神病薬の役割 認知症と診断された患者は、機能障害と進行性の認知機能低下を経験する。認知症の一般的な心理的・行動的症状には、不安、抑うつ、無気力、攻撃性、せん妄、いらいら、精神病などがある。 認知症の…

「白い錠剤で意識失い」「撮影直前まで暴行」元人気女優が告白「若い私を待ち受けていた“悪しき芸能界”」

smart-flash.jp 恐ろしかったのは、1990年代前半にVシネマで大人気だった俳優Yさんです。いつも睡眠薬を飲んでいるそうで、ある撮影所でお会いした際『よく眠れてる? 眠れないならおすすめの薬があるよ』と声をかけられました。一度断わったのに、その後、…

デシプラミンによるレム睡眠抑制:α1アドレナリン作動性機序の証拠

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Ross, R. J., Gresch, P. J., Ball, W. A., Sanford, L. D., & Morrison, A. R. (1995). REM sleep inhibition by desipramine: Evidence for an α-1 adrenergic mechanism. Brain Research, 701(1–2), 129–134. https://doi.org/10…

オーヴェリティについてのまとめ

日本語で紹介した記事。 www.harpersbazaar.com 昨年、簡単なエントリをしている。 ides.hatenablog.com オーヴェリティは日本で発売されていないが、デキストロメトルファンはメジコンとして発売されており、ブプロピオンは個人輸入できるため、容量は合わ…

自白剤として描かれるスコポラミン

「ブスコパン」という名前で売られているスコポラミンという薬がある。薬局でも買える薬だ。 www.ssp.co.jp ライフハックとしては、かなり強力な車酔い・船酔いに有効ということだろうか。 トラベルミンでも船酔いを防止できない場合には、スコポラミンを使…

抗精神病薬の一般的な副作用の管理

www.ncbi.nlm.nih.gov 抗精神病薬の利点は、時にその副作用によって覆い隠されることがある。これらの副作用は、比較的軽微な耐性(例:軽い鎮静や口渇)から非常に不快なもの(例:便秘、アカシジア、性機能障害)、痛みを伴うもの(例:急性ジストニア)、…

セックス中にMDMAを使用すると性的興奮は増加せず、感情的な親密さが増加する

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Buffum, J., & Moser, C. (1986). MDMA and Human Sexual Function. Journal of Psychoactive Drugs, 18(4), 355–359. https://doi.org/10.1080/02791072.1986.10472369 多くのMDMA使用者がMDMAによる性的増強について述べているが…

覚醒剤(アンフェタミンと関連化合物)の性機能への影響

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Buffum, J. (1982). Pharmacosexology: The effects of drugs on sexual function a review. Journal of Psychoactive Drugs, 14(1–2), 5–44. https://doi.org/10.1080/02791072.1982.10471907 アンフェタミンと関連化合物 これらは…

FDAがオーヴェリティAuvelity承認

www.harpersbazaar.com アメリカ食品医薬品局(FDA)がうつ病治療に初の即効薬を承認した。 アクサム・セラピューティクス(Axsome Therapeutics)の新薬『オーヴェリティ』(Auvelity)は1週間で効果が現れる。 臨床試験で、うつ病患者に安全で即効性がある…

バクロフェンと強化学習

www.ncbi.nlm.nih.gov Abstract ヒトと同様にげっ歯類においても、効率的な強化学習は腹側被蓋野 ventral tegmental area(腹側被蓋野)ニューロンから放出されるドーパミン(DA)に依存している。マウスの脳切片において、低濃度のGABAB受容体アゴニストは…

アルコール依存症にバクロフェンを投与した飲酒は抑制できたが、ギャンブル障害が増長したケース

www.ncbi.nlm.nih.gov ギャンブル障害の治療を希望した32歳男性のケースを紹介する。彼はアルコール使用障害とギャンブル障害を含む複合的な依存性障害を有していた。バクロフェンの大量投与で治療後、重症のギャンブル障害を発症した。最大用量はアルコール…

バクロフェン

英語版Wikipediaの翻訳。 en.wikipedia.org バクロフェン バクロフェンは、リオレザールなどの商品名で販売されており、脊髄損傷や多発性硬化症などによる筋痙縮の治療に用いられる薬である。 また、しゃっくりや終末期の筋痙攣にも用いられることがある。口…

エバミール・ロラメット(ロルメタゼパム)は依存性が低い

link.springer.com 概要 3-ヒドロキシベンゾ-1,4-ジアゼピン誘導体であるロルメタゼパム Lormetazepam は,最もよく処方されるベンゾジアゼピン系薬物の一つであり,現在では麻酔医向けの静注用製剤として販売されているが,その依存性については相反する発…

トピラマートと体重減少

トピラマートの副作用に食欲不振があり、その結果、体重減少が生じることは割とよく知られている。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Bray, George A., Priscilla Hollander, Samuel Klein, Robert Kushner, Brian Levy, Martin Fitchet, and Barbara H. Perry. 2003…

クイーンズ・ギャンビットとリブリウム

クイーンズ・ギャンビットに登場する薬はベンゾジアゼピンのリブリウム(クロルジアゼポキシド)だそうだ。 www.esquire.com 主人公がベンゾジアゼピン依存症になるというのが何とも今っぽい設定である。アメリカだとザナックス(日本での商品名は商品名はソラ…

ベンゾジアゼピンと認知症リスク

ケース メタアナリシス。対象となった研究は2002年[27]から2013年[16]の間に発表されたものである。最大追跡期間は8年 [15, 27] から25年 [12] であった。対象となった研究のサンプル数は1063件[13]から25,140件[14]で、合計45,391人であった。認知症症例数…

高齢者の不眠症と薬物マネージメント

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov ベルソムラ(スボレキサント) スボレキサントは、睡眠導入には有効ではないが、睡眠維持を改善することができる。 スボルレキサント30mgは、睡眠維持効果と持続的な改善効果が認められましたが、FDAの推奨用量よりも高く、現在は販売…

FDA ベンゾジアゼピンの安全な使用

2020/10/01に更新されたFDAのベンゾジアゼピンの警告文。 「ベンゾジアゼピン系薬剤クラスの安全な使用を改善するためにFDAが箱入り警告の更新を要求--乱用、中毒、その他の重大なリスクの可能性を含む」 www.fda.gov FDAが発表する安全性の懸念とは? 乱用…

高齢者におけるデエビゴvs.マイスリー

治験第3相の論文 jamanetwork.com 55歳以上(中央値は63歳、55~88歳)で不眠症障害を有する参加者1006 名を対象とした無作為化二重盲検臨床試験。プラセボ、マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩徐放製剤 6.25mg)、デエビゴ(レンボレキサント5mg/10mg)を1ヵ月間、…

ブプロピオン(カプラン精神科薬物療法のポケットハンドブック)

Kaplan & Sadock's Pocket Handbook of Psychiatric Drug Treatment (English Edition)作者:Sadock, Benjamin,Sadock, Virginia A.,Sussman, Norman発売日: 2017/12/20メディア: Kindle版 第7版からブプロピオンについての気になったところだけメモ。ブプロ…

構造方程式モデリングによる構成概念の因果関係[R]

今回扱うのは構造方程式によって作成した概念の因果を検証するモデルである。 データ lavaanに同梱されているPoliticalDemocracyを使用する。詳細はこちらのエントリ。 y1 1960年の報道の自由に関する専門家の評価 y2 1960年の政治的反対運動の自由 y3 1960…

ゲーム・食事・セックス・薬物のドーパミンの放出量の比較

以前のエントリの補足エントリ。ドーパミンの放出量を比較した表についての補足。 ides.hatenablog.com ゲームと覚醒剤は同じだという主張がある。薬の作用は投与量体重やヒト/サル/ラットなどによっても異なり、脳の計測箇所によっても条件が違うため、単純…

神経伝達に対する薬物の影響

アメリカ連邦政府機関である国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse)の資料の翻訳。 Impacts of Drugs on Neurotransmission https://www.drugabuse.gov/longdesc/impacts-drugs-neurotransmission 神経伝達物質 中枢神経系の分布 影響を受け…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)と性機能障害

トリンテリックス(ボルチオキセチン)について一つ気づいていなかったことがある。下記の記事を読んで気付いた。 www.mdmag.com 性機能障害が他の抗うつ薬に比べて低いという補足記述が2018年10月22日にFDAに受理されたという記事である。 研究 元になった研…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)のレビュー

トリンテリックスが11月27日発売ということなので、トリンテリックスのレビュー論文を簡単に紹介しておこう。適応の大うつ病性障害以外に全般性不安症にも使用されている。 トリンテリックスのレビューはなぜかたくさんあって、適切なものを選ぶのが難しい。…

トリンテリックス(ボルチオキセチン)と高齢者のうつ病

11月に新しい抗うつ薬トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)が投入されるようだ。効果はSSRI+リフレックス的な効果で、忍容性が高い(継続率70%)ということのようだ(トリンテリックス | kyupinの日記 気が向けば更新)。 新規の抗うつ薬が登場しても…

抗コリン作用への対処法

イントロダクション 抗コリン作用は抗うつ薬の副作用として生じる。抗コリン作用によって強い副作用が出るため、服薬を続けることができないことがあり、うつ病の治療において大きな問題となっている。 短期間であれば耐えられる程度の副作用だったとしても…

エフェドリン

風邪をひいた。 薬はなるべく飲みたくないけども、鼻だけは何とかしたいので、塩酸プソイドエフェドリンを服用。この薬は塩酸フェニルプロパノールアミンの代薬として使われているものだが、摂食障害にも関係する薬剤でもあり、ちょうど良い機会なので少しだ…