井出草平の研究ノート

トピラマートと体重減少

トピラマートの副作用に食欲不振があり、その結果、体重減少が生じることは割とよく知られている。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Bray, George A., Priscilla Hollander, Samuel Klein, Robert Kushner, Brian Levy, Martin Fitchet, and Barbara H. Perry. 2003. “A 6-Month Randomized, Placebo-Controlled, Dose-Ranging Trial of Topiramate for Weight Loss in Obesity.” Obesity Research 11 (6): 722–33.

placebo/ 64mg/ 69mg/ 192mg/ 384mg群の体重減少の比較。

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容量依存性は多少みられるが、64mgと69mg、192mgと384mgはだいたい同じ感じにみえる。

機序

トピラマートは、新規の神経治療薬で、特定のてんかん疾患の治療に承認されている。トピラマートは、弱い炭酸脱水酵素阻害剤(carbonic anhydrase inhibitor)であり、炭酸脱水酵素のII型およびIV型に選択性を示す。また、トピラマートは、γ-アミノ酪酸受容体(γ-aminobutyric acid receptor)およびグルタミン酸受容体のα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸/カイネイトサブタイプの受容体(α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid/ kainate subtype of glutamate receptor)における作用を調節する。トピラマートは、電位依存性のNa+チャネルやCa2+チャネルを状態に応じて遮断する。これらのメカニズムが、トピラマートの抗てんかん作用に寄与していると考えられている(18,19)。トピラマートは、モノアミン受容体やペプチド受容体に対する作用は知られていない。γ-アミノ酪酸受容体を調節することで、摂食量を減少させる一つの可能性がある。しかし、トピラマートの体重に対する作用を明確にするためには、まだ説明されていない他のメカニズムの方が重要かもしれない。 肥満のげっ歯類モデルにおいて、トピラマートは体重増加を用量依存的に減少させた(9,10)。摂食量への影響はモデル間で一貫性がなく、エネルギー消費量の変化が体重変化の一要素であることが示唆された。臨床試験でトピラマートを投与されたてんかん患者さんの臨床データベースをレトロスペクティブに分析したところ、トピラマートを投与された患者さんでは、体重が徐々に減少していることが分かった。

結局、どの受容体によって食欲不振が生じるのかのだろうか。

有害事象

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副作用がなかなかやばい。広範囲で傾向性のなさが驚きである。

この研究ではちゃんと触れられていないが、トピラマートによる食欲不振は短期的なものなため、長期的には体重は元に戻ってしまうので、無理して飲んでもね、というところだろうか。